第三話 第二の人生
謎の魔法陣に飛ばされた先は、真っ白で何もない空間だった。
目の前には、いかにも「ザ・女神」といった神聖な衣を纏った美女が立っている。……と、思ったら。
「ごめんなさい! あなたのこと転移させるつもりはなかったんですー!」
姿とは裏腹に、驚くほど間抜けな声が聞こえてきた。
(……見た目だけはいいのに、中身はかなりの間抜けだな)
「間抜けはひどいですー!」
な……この女神、思考盗聴ができるらしい。声を出していない、というか出せないのにバッチリ伝わっていた。
「私はアトゥムっていう、天才でめっちゃかわいい女神ですからね!」
そうですか。で、その天才女神様がミスったってことですよね?
「そのことについては本当にごめんなさい〜。私ってば、まだ二万年目の新人なんですよー」
二万年って、ババ……危ない、思考盗聴されてるんだった。
「あ! 今ババアって言おうとしましたね! もう!」
(言ってないし! ギリギリ踏みとどまったし! っていうか、どういうことなんだよ!?)
「んーえっと、話すと長くなるんだけどね。簡単に言うよ? お友達の健斗君と美沙ちゃんを呼び出した異世界の人たちが、タイミング悪くあなたも巻き込んじゃったんだよね。二人用の召喚魔法だったから、三人目のあなたは世界と世界の狭間で消滅しちゃったの」
てへっ、とあざとく首を傾げる女神。
……本気で一発ぶん殴りたい。
「やめてやめて、暴力だけはー!……だーかーらー、特別に異世界へ『転生』させてあげる! 拍手〜パチパチパチ!」
マジか! よっしゃー!!
まさかラノベみたいに本当に異世界に行けるなんて! 一気にテンションが上がってきたぞ。
「でしょでしょ? 異世界に行くとなれば、やっぱりチート能力が欲しいでしょー?」
(そりゃもちろん!)
「何がほしー?」
悩む。ここで選択をミスったら後々絶対に後悔する。
長時間悩んだ末、やっぱり異世界といえば魔法だ! ということで、魔力量を底上げし、魔法を簡単に扱える適性をねだった。
「あと、言葉が通じないと困るよねー? 言語の自動翻訳スキルもつけとくね。ほんのお詫び! ごめんねー!」
おぉ! 最初は最悪な女神かと思ったけれど、意外と気が利くじゃないか。
「じゃあ異世界に送るねー! ばいばーい!」
よし、俺の最高の異世界ライフの始まりだー!
⭐︎
「ふぎゃー!」
俺はこの世界に生まれ変わった。
「ロイちゃ〜ん、可愛いでちゅね〜」
聞いての通り、俺の新しい名前はロイと言うらしい。
両親はどちらも二十五歳前後。貴族のような豪華な生活ではなく、ごく普通の平民の暮らしだ。使用人もいなければ部屋も質素で、服も木綿の素朴なもの。けれど二人とも、嫉妬するくらい仲が良い。俺の目の前でもお構いなしにイチャイチャしている。
母の名前はレナ。レナはたまに生活魔法を使う。火を起こしたり水を発生させたり、規模は小さいけれど、前世の俺からすればワクワクするような光景だ。
父の名前はタルク。村の狩人らしく、二、三日家を空けたかと思えば、大きな獲物の肉を抱えて帰ってくる。生まれたばかりの俺にはまだ食べられないけれど……。
二人は本当に温かい家族だ。平民だからって悪いことばかりじゃないな、なんて思いながら、俺は心地よい眠りに落ちていった。
あっという間に時間が過ぎ、俺は三歳になった。
三歳にもなれば、できることが一気に増える。一番の収穫は……そう、魔法だ!
母さんが使っている詠唱を真似して、こっそり庭で試してみたら——本当に出た。どうやら魔法陣は、詠唱した後に自動的に出てくるようだった。
初めて小さな火種を生み出せたときは嬉しすぎて、母さんにバレそうになるほどはしゃいでしまった。
二歳の頃からコソコソ練習していた甲斐あって、今では母さんと同じくらいの威力の魔法が撃てるようになっている。我ながら天才かもしれない。
ちなみに、俺にはこの世界でも幼馴染ができた。どうやら俺は幼馴染運に恵まれているらしい。
その幼馴染は、幼いながらに整った顔立ちをしていて、仕草がいちいち可愛らしい。……誤解しないでほしいが、別に俺は年下趣味はない。純粋に将来有望な美少女だな、と感心しているだけだ。
名前はリロ。よく一緒に遊ぶのだが、俺と同年齢の赤ちゃんにしてはかなり喋れる方だと思う。
幼馴染といえば前世の美沙を思い出すが、あのポンコツ女神によれば、美沙も健斗もこの世界の勇者として召喚されているらしい。
いずれ成長したら挨拶くらいは行かないとな。健斗とも再会して、男同士でこの異世界について語り合いたいものだ。
お読み頂きありがとうございます。アドバイスや感想等ありましたら、ぜひ書いていただけると喜びます。
今回は、理玖目線でついに異世界ストーリーが始まりましたね。女神と名乗るアトゥム様は、意外とお茶目な人でしたね。そんな理玖の第二の人生ははここから始まります!




