第二十二話 競技大会①
模擬戦が終わった後、俺とクリスはジャミと合流して食堂で一緒にご飯を食べていた。
「貴方本当に強くなったわね」
「クリスのおかげでね」
「そう言ってくれると嬉しいわ」
疲労が残る身体に、食堂の熱いスープが染み渡る。
「ジャミもすごく強くなったわよね」
「え……いやいやいや、そんなに強くないよ……」
「選抜模擬試験を勝ち抜いたのにそんなこというなよ」
「そうよ、私も詳しくは知らないけど毎日努力しているのでしょう?」
「見ていれば分かるわ」
突然褒められたジャミは、みるみるうちに頬を赤らめた。
ご飯を食べ終えた俺たちは、クリスと別れて自室へと戻った。
ここ五ヶ月で、クリスとジャミはすっかり仲良くなってきた。まぁ、ジャミがクリスという存在にようやく慣れてきたというだけだが……
何はともあれ、良好な関係を築いているのは事実だ。休日にクリスがジャミへ剣の指導をつける姿も珍しくない。
意外と二人の相性は良かったらしい。
そして残念ながら、アルドリヒとはまだ何の交流もない。クリスはもちろんのこと、同じ部屋の俺とジャミも彼と口を利くことはない。競技大会に選抜されたがそれでも話すことは少ない。
⭐︎
——大会一日前
俺は配られた大会のルールの書面を見返していた。
そう、あの項目について……
「よし、どこにも禁止事項としては書いてないな」
(まぁ、余程のことがない限り使う必要はないけどね)
——大会当日
俺たちは朝早くから目を覚まし、食堂へと向かった。大会のような一大行事がある日は、特別に朝食が配給される。
腹ごしらえを済ませた俺たちは、会場となる大競技場へと集結していた。この場所に来るのは今までに一度もなかった。
中は圧倒的に広く、一学年の生徒だけではその半分も埋まらないほどのスケールを誇っている。
「「これより、一学年対抗競技大会を執り行う!」」
学院長の厳かな宣言により、大会の幕が盛大に開かれた。
今大会のルールは至ってシンプルだ。
一対一の対戦形式によるトーナメント方式。勝利数の多いチームが勝者となる。
もちろん武器は木刀であり、危険と判断された場合は審判が即座に介入して勝敗を決する。
その他にも細かい制限はあるが、普通に戦っていればまず引っかからないようなものばかりだ。
そして第一回戦、まずは俺たち四組と、隣り合う五組との対抗戦が始まった。
やるからには全力で勝ちにいく。そうしなければ、故郷で待つ母さんたちに顔向けができないからな。
サリム先生に案内された俺たちは競技場の控え室で、静かに次の指示を待っていた。
「うぅー……なんか緊張してきたよ……」
ジャミの表情はこわばり、肩に余計な力が入っている。
「大丈夫だ、ジャミなら絶対に勝てる」
「そうよ、何も心配することはないわ。貴方はもう十分強いもの」
「……ありがと」
俺たちの言葉に深くうなずき、ジャミは大きく息を吐いて気持ちを切り替えた。
「「各チームの第一試合出場者、前へ!」」
「それじゃあ、行くわよ」
「あぁ」「うん!」
俺たちは控え室から舞台へと歩き出した。
⭐︎
「「第一回戦、四組対五組の第一試合を開始します!」」
「「解説は私、ウスターと——アルマハド学院長でお送りします!」」
「「生徒諸君、日頃の成果を発揮し、悔いのないように戦いなさい!」」
学院長の低く響く声が、競技場全体に轟いた。
「じゃあ、行ってくるね」
「気負わずいけよ」
「うん!」
最初の先鋒はジャミだ。固い足取りでステージへと上がっていく。
対するジャミの相手は、身長百六十センチほどの男子生徒だ。小柄なジャミから見れば、ひと回り以上大きく見える。
たしか名前はカルフだったか。
「「それでは、これより第一試合を開始する!」」
「「よーい……始め!」」
ウスター先生の大きな掛け声とともに、ジャミは走り出した。
「ふぁーーっ!」
気合の入った声を上げ、ジャミが素早く距離を詰める。
「とりゃ!」
踏み込みながら放った一撃は、カルフに簡単に受け止められてしまった。
「はっ、この程度か! ならば今度は俺からいくぞ!」
カルフは押し返すと、距離をとったジャミめがけて突進してきた。
ジャミは一歩も引かず、その場で低く重心を取り、両手でしっかりと木刀を構え直す。
「おりゃああっ!」
カルフは大きく振りかぶり、頭上から豪快に木刀を振り下ろした。
バシッ!
「なっ……!?」
受け流された衝撃で、カルフの体勢がわずかに崩れる。
「ふりゃっ!」
片手用の木刀をあえて両手で支え、ジャミは懐へ潜り込んでカルフの脇腹へ鋭く叩き込んだ。
ドシッという重い打撃音と共に、カルフはたまらずその場に崩れ落ちる。
「「カルフの戦闘不能を確認! 勝者、ジャミ!」」




