第十九話 テスト
「これより、授業を始める! 石板を忘れた者は次回から忘れずに持ってきなさい!」
サリム先生の厳格な声と共に、騎士学院での最初の授業が始まった。
……ちなみに俺も、ジャミに「ロイ、石板持った?」と言われるまで完全に忘れていた。ジャミ、本当にありがとう。
「今日から一ヶ月ほどかけて、文字の読み書きをしっかり覚えてもらう。期間終了後にはテストも行うので、全員真面目に取り組むように」
確かに、このクラスにいる生徒の多くは文字の読み書きができない者も多いはずだ。どんな剣術や戦略を学ぶにしても、基本的な文字が読めなければ話にならない。
幸い、俺は転生時のアトゥム様のチートのおかげで、この世界の文字も最初からスラスラと読める。
(ふむ……ということは、ここから一ヶ月の座学は俺にとって退屈な時間になりそうだな……)
「では、今日は——」
サリム先生が教壇の大きな黒板に文字を書き始め、怒涛のスパルタ授業が幕を開けた。
⭐︎
「ふぅぁぁ……疲れたぁ……」
お昼休みになり、ジャミが魂が抜けたような顔で机に突っ伏した。
午前中の授業は、やはり俺の知っている知識ばかりだった。
(それにしても……この学院、朝食がなくて昼と夜しか食堂が利用できないのが地味に辛いな。悲しい……)
愚痴を言ってもお腹は膨らまないので、俺とジャミは食堂へと向かった。
今日の昼食のおすすめメニューは、『カシ定食』だ。
(ん? カシ定食……? なんだか元の世界の『カツ定食』に響きが似ているような……。昨日のカリーの件といい、もしかして昔この世界に来た地球人の転移者が他にもいたのかな……?)
「ぐぅーー」
どうやら俺のお腹は変な考察よりもご飯を欲しているようだな。
「じゃあ、食べよっか!」
「うん!」
運ばれてきたカシ定食を一口かじる。前世のサクサクとした衣のカツほどではないが、噛むたびに肉の旨味がじゅわっと口いっぱいに広がり、申し分のない満足感だった。
(うーん、やっぱりこのカシを食べると、猛烈に『白米』が食べたくなるな……!)
俺はこの世界に来てから一度も米を食べたことがない。あのカリーの隣にも、米ではなくパンが添えられていた。それもそのはず、この世界の主食はパンなのだ。
カシ定食やカリーの文化を伝えた人がいるなら、どうにかして米の栽培も成功させていてほしかった……
(まあ、米がなくても美味しいご飯が食べられるだけありがたいか!)
そんなことを考えながら、俺たちは美味しく定食を完食した。
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昼食を終えた俺たちは、ゆっくりと教室へ戻った。サリム先生によると、午後も引き続き文字の勉強が続くらしい。
「ロイは全然疲れてなさそうだね。平気なの?」
早めに教室に戻り、席に座って二人で会話を交わす。
「あぁ、小さい頃から本を読むのが好きだったからさ。文字はだいたい覚えてるんだ」
「すごいなぁ……! 僕、村にいた頃は本なんて読んだことなかったから、さっぱり分からなくてさ」
「あはは……」
(「実は異世界チートで最初から読めます」なんて、口が裂けても言えないな……)
「そういえば、ロイって兄弟はいるの?」
「ううん、一人っ子だよ。ジャミは?」
「うん! 僕には弟と妹がいるんだ」
そんな他愛のない雑談を交わしながら、午後の授業が始まるのを待った。
⭐︎
「ロイ、ここってこの書き方で合ってる……?」
「うん、バッチリ合ってるよ! じゃあ次はこちらの問題をやってみようか」
あれから数日が経ち、ついに初めての休日がやってきた。
学院の授業は週七日間のうち五日間行われる。ジャミはとにかく勉強熱心で、「ロイ、勉強を教えてほしい!」と頼まれたのだ。今日も朝から寮の部屋で復習に励んでいる。
「そろそろお昼だし、そこが終わったら一旦休憩にしようか」
「うん!」
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「今日はここまで! 各自しっかり復習し、明日のテストに備えるように!」
授業が始まってから、早くもおよそ一ヶ月が経過した。
サリム先生の授業は容赦のないスパルタで、俺を含む一部の生徒以外は、毎日生気を吸い取られたようにぐったりしていた。
先生の話によると、今から半年後に『クラス対抗の競技大会』が開催されるらしい。明日の筆記テストが終わった後は、本格的な実技・剣術の指導へと移行するようだ。
ジャミも努力の甲斐あってすらすら文字が読めるようになり、テストに出る範囲をほぼ完璧に網羅していた。
俺が教えることも少なくなり、最近は各自で自習することが増えている。
俺はその空いた時間を使って、心置きなく『魔法の研究』を進めていた。
学院の図書室には、なんと一冊だけ魔法に関する古書が蔵書されていたのだ。掲載されている内容はごく僅かだったが、それでも俺の知らない興味深い魔法陣や理論がいくつか載っていた。
ジャミとの勉強時間以外は、石板やノートを使ってその魔法陣の解析と改変に没頭していた。
(魔法学院に行けなかったとはいえ、将来冒険者になった時、魔法の知識は絶対に無駄にはならないからな……!)
⭐︎
「——それでは、テスト開始!」
ついに筆記テストの当日がやってきた。
昨日の夜遅くまでジャミと一緒に最終確認をしていたので、準備は万全だ。
配られたテスト用紙を開くと、内容はごく基本的なものばかりで、俺はあっという間に解き終えてしまった。
「テスト終了! 直ちにやめなさい!」
サリム先生の大きな号令でテストは終了した。
「はぁー……疲れたー」
簡単な問題ばかりだったとはいえ、テスト特有の空気感というものはやっぱり疲れるものだ。テストが終わった午後は授業がなく、自由時間となる。
「あら、貴方ならこの程度のテスト、簡単だったでしょう?」
隣の席から呆れたような声が聞こえた。見ると、クリスがこちらを見ている。
「簡単でも疲れるもんは疲れるんだよ」
「そうかしら? 私はすっきりしたわ」
「へいへい。クリスはタフで羨ましいよ」
「ふふ。それじゃあ、私は部屋に戻るわね。また明日」
「あぁ、お疲れさま」
クリスは颯爽と鞄を手に取り、教室を後にしていった。
「さて……俺も部屋に戻るか」
「ロイ〜〜! 僕、いっぱい解けたよ!!」
後ろからジャミが嬉しそうにはしゃぎながら駆け寄ってきた。
「よかった! 毎日頑張ってたしな」
「うん! ロイが教えてくれたおかげだよ!」
満面の笑みを浮かべるジャミと肩を並べながら、俺たちは晴れやかな気持ちで男子寮への道を歩いていくのだった。
お読み頂きありがとうございました!
ついに活動一ヶ月、まだまだ上手く書けないところが多いですがここまで見てくださりありがもうございました。
まだまだ続きますので、これからもよろしくお願いします!




