発見文書 No.070
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発見文書 No.070
種別:MDレコーダー書き起こし(ラベルなし・32本目)
日付:不明
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【段ボール箱から発見されたMD・32本目。ラベルに何も記載がない。 ケースの表面に細かな傷がある。 「チリン」という文字のように見えなくもないが、確認者によって見え方が異なる】
MD書き起こし ラベルなし・32本目【北村ひろみの声(推定)で始まる】
K: 7月21日、山田翔太くんが裏山で赤い風鈴を見つけた日です。 翔太くんはとても驚いた顔をしていた。ピーマンが嫌いで、冒険が好きで、いつも一番に手を挙げる子でした。
K: あの子もいました。白い水着の子。いつも、最初の日にいる。最初の8月13日から、ずっとあの子はいる。みんなを助けようとしている。先生を助けたのも、あの子です。でも自分は帰れない。一番最初に、帰れなくなった子だから。
K: 7月25日、伊藤さやかちゃんのテレビが砂嵐になった日です。 さやかちゃんはテレビから離れなかった。弟がうるさいと文句を言う子でした。分数の割り算がわからなかった。先生が2学期に教えるつもりだったのに。
K: 8月7日、山崎千夏くんが井戸の赤い水を見た日です。 千夏ちゃんは靴を脱いで水の中に入ろうとした。先生が「だめよ」と言って止めた。千夏ちゃんは不思議そうな顔で「なんで先生も来てるの」と言った。
【ここで声が変わる。 北村の声から阿部の声に切り替わる。 どこで変わったか特定が難しい】
阿部(Kの台詞を読んでいる): 8月12日、近藤あやちゃんが 「明日、何かが起きる気がします」と書いた日です。 あやちゃんの声がふるえていた。泣いていた。 「来ないでください」と書いてくれた。 それでも来てしまった。
阿部(Kの台詞を読んでいる): 8月13日。 来てしまいました。 子供たちがいるから。
【声がまた変わる。今度は北村の声と阿部の声が交互になる。 どちらが喋っているか判断できなくなっていく】
声: 記録者は記録の中に入ってしまうものなのです。
声: どちら側にいますか。
声: どちら側にも、いられます。
声: どちら側にも、いられません。
声: 次の人が来るまで、ここで待っています。
【録音終了。最後の七秒間、風鈴の音が一度だけ】
【2025年再生時の不具合記録(浅川静)】
三回目の再生終了後、机の上のコップの水面に細かな波紋が生じていた。エアコンは止まっていた。窓は閉まっていた。
私はその後、このMDを再生していない。




