発見文書 No.068
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発見文書 No.068
種別:カセットテープNo.5 断片(2025年復元)
日付:昭和62年8月26日以降(推定)
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【本テープについて(浅川静・注記): カセットテープNo.5は、発見時にテープが内側から食い破られており、 再生不能とされていた。 2025年、専門業者に依頼して部分復元を試みた。 復元できたのはテープ全体の約3割。 ( )は聞き取り不能箇所】
【音声断片A】
「——教室に——います——いつ——( )——覚えていない——」
「——ノートが——( )——翔太くんの——」
【音声断片B】
「——黒板に——( )——私の——字で——」
「——名札が——二つ——( )——」
【音声断片C】
「——太陽が——( )つ——同時に——( )——」
「——時計が——全部——3時33分——( )——」
「——チリン——チリン——( )——」
【音声断片D】
「——ひろみちゃん——( )——私と——同じ——顔——」
「——先生——それとも——( )——どっちでも——」
「——だって——同じ——( )——」
【音声断片E ※最も鮮明に復元された部分】
「——紙を——渡された——」
「——助けて——ここから——出して——」
「——もう——( )年目の——8月です——」
「——筆跡は——私の——( )——」
「——いつ書いたのか——覚えていない——」
「——もしかしたら——これから——書くのかも——( )——」
【音声断片F ※テープの最末尾付近】
「——赤ペンを——手に取った——」
「——でも——何を——( )——わからなく——」
「——昭和62年の夏休みは——まだ——終わって——( )——」
「——これからも——終わらない——」
「——永遠に——」
【テープ終端。以後、食い破られており復元不能】
【業者からの報告(抜粋): 音声断片Eの「( )年目の8月」について。 数字の部分を複数回解析した結果、 「92」「93」「94」の三つの読み方が等確率で存在し、確定できなかった。
また、断片D「ひろみちゃん——私と——同じ——顔」の発話者について。 声紋分析を試みたところ、北村ひろみ(担任)の声と、 北村ひろみ(児童)の声の中間的な特徴を示した。 どちらの声かを確定する技術的手段はないが、 「どちらでもある」可能性が否定できないと業者は報告している】
【浅川静・注記】
「もう( )年目の8月です」。
何年目なのかを確定できないまま、掲載する。
ただ、この言葉を聞いたとき——テキストを読んだとき——胸のあたりに何かが触れた気がした。
業者から返ってきた音声ファイルを、夜中に一人で聴いた。ノイズの中で「終わらない」という言葉だけがはっきり聞こえた。
私の名前を呼ぶ声が聞こえた気がしたが、それはなかったと思う。なかったと思いたい。
2025年6月5日(木)
「もう( )年目の8月です」の数字について、計算を試みた。
業者の解析では「92」「93」「94」の三つの読みが等確率で存在するという。仮に92とする。
1987年から92年後は2079年。未来。テープは1987年に録音されている。未来の年数を過去のテープで語ることはできない。
昭和20年(1945年)から92年後は2037年。これも未来。
では起点が違うのか。92年前から数えて1987年に至るなら、起点は1895年。明治28年。祢古小学校がまだ存在しない時代。
ループの回数だとすれば。8月が92回繰り返されたなら、1回目の8月はいつだったのか。1987年が92回目なら、1回目は1896年。やはり明治。
どの計算も成立しない。成立しないのに「92」という数字は確かにそこにある。
——計算をやめた。数字に意味を探してもしかたない、と北村先生もテープの中で言っていた。「34.2度。何の数字だろう。何かの——いや。数字に意味をさがしてもしかたない」。
先生と同じことを思っている。




