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発見文書 No.067-d

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発見文書 No.067-d

種別:出版社公式注記

日付:2025年(作成者不明)


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本書は2025年3月、埼玉県奥武蔵市の旧養護施設「ひだまりの家」解体工事中に発見された三種の記録文書を原形のまま収録したものです。


編集担当 浅川静は2025年8月31日以降、連絡が取れていません。


引き継ぎ担当 鏑木も2025年10月末より、連絡が取れていません。


本書中、赤字で印刷されている箇所については、入稿データに最初から含まれており、誰が入力したか確認できていません。削除を試みましたが復元されるため、そのまま掲載しています。


本書に関するお問い合わせ先:


電話:04X-XXX-XXXX


※上記番号は1987年当時の市外局番の形式です。現在の奥武蔵市の市外局番は042です。なぜこの番号が登録されているのか確認できていません。おかけになっても繋がらない可能性があります。


なお、2025年11月に上記番号に発信テストを行った担当者の報告によれば、「3コール目で繋がった。蝉の声が聞こえた。その後、女性の声で『おかけになった番号は現在使われておりません』と聞こえた。通常の自動音声とは異なり、肉声だった。声が若かった」とのこと。


2回目の発信テストでは「繋がらなかった」。


3回目の発信テストを行った担当者は、翌日から「教室の夢を見る」と報告した。


以降、発信テストは行っていない。


なお、編集担当・浅川静の経歴については社内記録との照合が取れていない部分がある。教員免許を保有していたという記録が、現時点で確認できていない。


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【本テープについて(浅川静・注記): カセットテープNo.5は、発見時にテープが内側から食い破られており、 再生不能とされていた。 2025年、専門業者に依頼して部分復元を試みた。 復元できたのはテープ全体の約3割。 ( )は聞き取り不能箇所】


【音声断片A】


「——教室に——います——いつ——(   )——覚えていない——」


「——ノートが——(      )——翔太くんの——」


【音声断片B】


「——黒板に——(  )——私の——字で——」


「——名札が——二つ——(     )——」


【音声断片C】


「——太陽が——( )つ——同時に——(   )——」


「——時計が——全部——3時33分——(    )——」


「——チリン——チリン——(           )——」


【音声断片D】


「——ひろみちゃん——(    )——私と——同じ——顔——」


「——先生——それとも——(  )——どっちでも——」


「——だって——同じ——(          )——」


【音声断片E ※最も鮮明に復元された部分】


「——紙を——渡された——」


「——助けて——ここから——出して——」


「——もう——(  )年目の——8月です——」


「——筆跡は——私の——(             )——」


「——いつ書いたのか——覚えていない——」


「——もしかしたら——これから——書くのかも——(       )——」


【音声断片F ※テープの最末尾付近】


「——赤ペンを——手に取った——」


「——でも——何を——(            )——わからなく——」


「——昭和62年の夏休みは——まだ——終わって——(      )——」


「——これからも——終わらない——」


「——永遠に——」


【テープ終端。以後、食い破られており復元不能】


【業者からの報告(抜粋): 音声断片Eの「(  )年目の8月」について。 数字の部分を複数回解析した結果、 「92」「93」「94」の三つの読み方が等確率で存在し、確定できなかった。


 また、断片D「ひろみちゃん——私と——同じ——顔」の発話者について。 声紋分析を試みたところ、北村ひろみ(担任)の声と、 北村ひろみ(児童)の声の中間的な特徴を示した。 どちらの声かを確定する技術的手段はないが、 「どちらでもある」可能性が否定できないと業者は報告している】


【浅川静・注記】


「もう(  )年目の8月です」。


何年目なのかを確定できないまま、掲載する。


ただ、この言葉を聞いたとき——テキストを読んだとき——胸のあたりに何かが触れた気がした。


業者から返ってきた音声ファイルを、夜中に一人で聴いた。ノイズの中で「終わらない」という言葉だけがはっきり聞こえた。


私の名前を呼ぶ声が聞こえた気がしたが、それはなかったと思う。なかったと思いたい。


2025年6月5日(木)


「もう(  )年目の8月です」の数字について、計算を試みた。


業者の解析では「92」「93」「94」の三つの読みが等確率で存在するという。仮に92とする。


1987年から92年後は2079年。未来。テープは1987年に録音されている。未来の年数を過去のテープで語ることはできない。


昭和20年(1945年)から92年後は2037年。これも未来。


では起点が違うのか。92年前から数えて1987年に至るなら、起点は1895年。明治28年。祢古小学校がまだ存在しない時代。


ループの回数だとすれば。8月が92回繰り返されたなら、1回目の8月はいつだったのか。1987年が92回目なら、1回目は1896年。やはり明治。


どの計算も成立しない。成立しないのに「92」という数字は確かにそこにある。


——計算をやめた。数字に意味を探してもしかたない、と北村先生もテープの中で言っていた。「34.2度。何の数字だろう。何かの——いや。数字に意味をさがしてもしかたない」。


先生と同じことを思っている。

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