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発見文書 No.048

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発見文書 No.048

種別:フィールドノート・MD書き起こし

記録者:阿部(記者)

日付:2000年8月13日 午前


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【阿部記者フィールドノート 第三冊より】


2000年8月13日 午前


施設に向かう前に確認した。


街の時計はすべて正確に動いていた。バスの時刻表。コンビニの電光掲示板。奥武蔵駅の時計。すべて正常。


朝、鏡で顔を見た。髭を剃った。目の下に隈がある。昨夜あまり眠れなかった。缶ビールを開けなかったせいかもしれない。酒を飲まない夜は眠りが浅い。


コンビニでおにぎりを二つ買った。昆布と鮭。食べながらバスに乗った。鮭の方がうまかった。


施設に入った瞬間、廊下の時計が止まっていた。


3時33分。


電池切れかと思い職員に伝えると「さっきまで動いていました」と言った。時計を外して電池を確認すると、電池は新しかった。


職員が壁掛け時計を持ったまま首を傾けていた。「これ、合っていますか」


職員の腕時計を確認すると、9時47分だった。


廊下の全時計を確認した。四つすべてが3時33分で止まっていた。


歩数を——数えた。Kの部屋のドアまで。


三十歩。


昨日は三十一歩だった。


ドアが開いていた。


昨日まで閉まっていた。いつも閉まっていて、ノックして「どうぞ」と声がしてから入った。今日は開いていた。


部屋に入った。


Kは窓際の椅子に座っていた。いつもと同じ場所。いつもと同じ姿勢。


ただ、今日は目を閉じていた。


声をかけようとしたとき、Kが先に言った。


「今日は特別な日ですね」


目は閉じたままだった。


「はい」と答えた。


Kが目を開けた。


——その瞬間に感じたことを、正確に記録しておく。Kの目が若かった。体は老女のままだった。手も、肩も、白髪も。だが目だけが、二十代の目だった。


気のせいかもしれない。窓からの光の加減かもしれない。


記録しておく。


MD書き起こし 2000.08.13(前半)

【録音開始時刻:推定10時頃。音声ノイズが断続的に入る】


阿部: 1987年の8月13日のことを——


K: 座ってください。


阿部: (椅子を引く音)


K: 今日は近藤あやちゃんの日記の日です。でも先に聞いてください。今日の空の色を。


阿部: (間) ……窓を見ます。(椅子が動く音)


K: どんな色ですか。


阿部: ……青い空です。雲がいくつか。ふつうの——


K: ほんとうに?


阿部: (五秒の間) ……少し。


K: 少し?


阿部: 少しだけ、赤い——ように見えなくもない。光の加減で。


K: (静かに) そうでしょう。


【間。約十秒。阿部の呼吸が速い】


阿部: Kさん。1987年の8月13日に何があったか、話してもらえますか。


K: 今日が、その日ですよ。


阿部: 今日は2000年の8月13日です。


K: そうですね。2000年の。1999年の。1998年の。1987年の。全部、今日です。


阿部: どういう意味ですか。


K: 時間は川のように流れているように見えますが、実際には重なっているんです。特別な日は何度も重なる。今日のような日は。


阿部: 特別な日というのは——


K: 3時33分に、時計塔に雷が落ちる日です。


阿部: それは1987年の話ですよね。


K: (間) 今日も聞こえますよ。午後になったら。


阿部: ……。


K: 信じなくていいですよ。ただ、聞こえたら——認めてください。


【MDに「ドーン」という低い音が録音されている。 この音の原因は不明。 この日、奥武蔵市周辺での雷の記録はない】


《聞こえましたね》


【録音:MDが約十二分間のエラーループ開始】

【「モウスグ……モウスグ……モウ■グ……03:33……モウ……■ウスグ……モウスグ……」 という音声が繰り返される。 声の主は阿部でもKでもない。 子供の声に聞こえる。複数の声が重なっている。 ループの長さは再生のたびに変わる】


【浅川静・編集注】エラーループについて。同一のMDを複数回再生したが、ループは毎回発生する。最短で九分十七秒、最長で十四分四十一秒。「モウスグ」の声は、第一部の日記に出てくるセミの声、雨の声、プールの声と同じカタカナ表記で書き起こしたが、実際に聞くと、それらよりもはるかに近い。耳のそばで囁かれているように聞こえる。

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