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発見文書 No.018

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発見文書 No.018

種別:夏休み日記

担当:森田剛

日付:昭和62年8月6日


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【発見された「祢古小学校 夏休み日記」原本より】


 ぼくはそうじがすきです。べつにきれいずきってわけじゃなくて、学校のそうじ当番が好きなんです。廊下をぞうきんがけするときのきゅっきゅって音がすき。そうじが終わると気持ちいい。


 なつ休みだから学校のそうじはないけど、家のそうじを手つだってます。お母さんに頼まれたわけじゃなくて、じぶんで。へやをそうじして、ろうかをふいて、げんかんをはいて。


 今日も朝からそうじをして、そのあと学校のそばを通りました。カブトムシを探しに裏山に行くためです。学校の横の道をとおるのがいちばん近い。


 校舎の前をとおったとき、ふと窓を見ました。


 2階の教室の窓に、人がいました。


 なつ休み中です。だれもいないはずです。


 目をこらしたけど、ガラスが光を反射してて、はっきり見えませんでした。人のかたちをした影みたいなもの。動いてるのか止まってるのかもわからない。


 ——先生かな、と思いました。なつ休み中も先生は学校に来ることがあるって、お母さんが言ってたから。でも今日は夏休みの16日目で、先生は来てないと思う。


 もう一回見たら、影は消えてました。ガラスに映った雲か木の影かもしれない。


 カブトムシを探しに裏山に行きました。クヌギの木のしるに来るやつをさがしたけど、今日は見つかりませんでした。クワガタのメスを1匹だけ見つけた。メスはつまんない。


 昼ごはんは焼きうどん。お母さんの焼きうどんはソースが少なくて味がうすい。言うとおこるから言わない。


 午後、もう一回学校のそばを通った。こんどは別の用事(友だちの石田くんちに漫画を返しにいく)で。


 また2階の教室を見た。


 ——今度はもっとはっきり見えました。人がいる。窓のそばに立ってる。


 大人の女の人みたいでした。背が高くて、かみが肩くらいの長さ。


 北村先生に似てた。


 似てた、と書いたのは、はっきり見えなかったからです。ガラスごしだし、距離もあるし。でもシルエットが先生に似てました。


 3分くらい見てたら、その人がこっちを向いた気がしました。手を振った——ように見えました。「おいで」って言ってるみたいに。


 でも、なつ休み中の学校に入ったらだめです。門もしまってるし。


 石田くんちに漫画を返して(「ドラゴンボール」の13巻。フリーザ編。すげえおもしろかった)、帰りにまた学校の前を通った。3回目。


 今度は人影はありませんでした。


 でも、教室の窓がすこしだけ開いてました。朝は閉まってたはずなのに。


 風でしまったのかな。いや、風で開くことはあっても閉まることは——いや開くこともないか。鍵がかかってるはずだし。


 帰り道、自分の影を見ました。小林くんの日記に影がへんだって書いてあったから。ぼくの影はふつうでした。ふつうに動いてて、ふつうの方向にのびてて。


 でも一回だけ、影が止まった気がしました。ぼくは歩いてるのに影が止まって、それから追いついた。0.5秒くらい。小林くんが言ってたのと同じ。


 気のせいかもしれない。


 夜ごはんはコロッケ。お母さんのコロッケはころもがサクサクしてておいしい。3つ食べた。


 お風呂に入って、歯をみがいて、ねようとしたら窓の外で音がした。


 チリン。


 目をつぶってた。あけなかった。



担任教師の赤ペンコメント:

剛くん、おそうじえらいね。先生も教室のそうじ、好きですよ。カブトムシは残念でしたね。クワガタのメスもよく見るとかわいいわよ。……学校の窓の話。先生もね、夏休み中に学校に行くことがあるの。宿題の添削をしたり、教室のかぜ通しをしたり。でも今日は行っていないの。行っていないのに、剛くんが見た人は先生に似ていた。それが、少し。


【カセットテープNo.3 8月6日】


「剛くんの日記を録音した。声がぼそぼそしてる。マイクに近づいて、って何回か言った。(間)学校にいた人影の話。先生に似ていた。——わたしは今日、学校に行っていない。行っていないのに、そこにいた。いたと、剛くんが見た。見間違いかもしれない。ガラスの反射かもしれない。でも——。コロッケの話で声が明るくなった。食べものの話のときだけ、みんな声が変わる。子どもは正直だ。お茶。今日はほうじ茶にした。いつもは麦茶だけど、なんとなく」

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