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能ある夫は爪を隠す  作者: 神月いろは


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50.ゴモラ

公安は早く帰って欲しいようだが、永人の事もあるし…

あまりにも早い対応に逃げ腰になると、夫が少し考えてから


「早く帰って欲しいのは分かりますが、私達もここで世話になった方々に挨拶する時間をいただきたい。それに永人の学校があります。せめて今の学年末までは学校に通わせてあげたい」


そう言い父親の顔をした。そうだ永人の対応もしっかり加味しないと。夫の言う通り学期末の方がお別れもしやすいだろう。今までも引越しのタイミングは3月にして来た。夫は常に永人が不安にならない様に考えて来たのだ。私も賛同すると井鷺氏も大川氏に3月迄待って欲しいと大川氏にお願いする。

私が井鷺氏の心遣いにじーんとしていると、夫が井鷺氏に冷たい視線を送りつつ私の腰を引き寄せた。

相変らず井鷺氏には厳しい夫である。

大川氏は少し考えて上に掛け合うと言ってくれる。こうして10年にも及ぶ黒川家の監視が来年3月で終了し、異界人である夫と家族が3月末にクラストカに帰る事が決まった。

その後は仕事の話は抜きに思い出話に花が咲く。特に大川氏は息子さんが夫と歳が近い事もあり、息子の様に思っていてくれていた様で、故郷に帰っても妻子を大切にするように言い父親の顔をした。

和気藹々と話をしている間にも、井鷺氏のスマホにはひっきりなしにメールの着信音が鳴っている。井鷺氏は確認すると直ぐ返事を打ちまた雑談に加わる。そのメールの多さにどんどん井鷺氏の表情が厳しくなるので


「今公安はゴモラの襲来みたいに、てんやわんやなんですね」


そう言い場を和ませるつもりでそう言うと井鷺氏は真顔で


「否。それ以上でゴモラ対応の方が容易だ」


そう言いまた届いたメールに目を通す。完全に外した私が苦笑いしていると夫がゴモラを知らないと言う。すると大川氏がスマホでゴモラ検索し夫に見せた。ゴモラとは特撮映画の最強の敵キャラでゴリラと鷲のハイブリット。口から光線を出し街を襲う最悪の生物なのだ。昔の映画でゴモラは着ぐるみで人が入っているので実は動きは可愛い。古い映画だが特撮ファンに愛されているキャラなのである。

夫はゴモラを見て故郷に似た魔獣がいると言い、駆除するのに苦労すると語り皆を驚かせた。特に私はこんな生き物がクラストカにいると思うとぞっとする。すると夫は大きさは2m程で光線は出さないから大丈夫だと言うが、人外的能力の夫の大丈夫は信用できない。


話は尽きないがお2人は忙しい様で、2時過ぎには帰って行った。夫もクラストカに報告があるようでまた書斎に籠る。私は茶器を片付けいただいた紙袋から箱を出し開封すると、1ホール数万円の幻のチーズケーキが入っていた。凄く有名なチーズケーキ専門店で毎日10個限定な上、最高級品を使って作られ手が出ない代物だ。思わず叫びそうになるが手で口を押さえ、心なしか輝きを放つチーズケーキを眺めていた。


「ママ。何してるの?」

「あっお帰り」


気が付くと3時になり永人が帰って来ていた。慌ててチーズケーキを冷蔵庫に入れ、おやつの準備をするが、あのチーズケーキは今日は出さない。永人に見つからない様に別のおやつを用意し、いつア(・)レ(・)を食べるか考えながら永人の学校の様子を聞きいつも通り過ごした。

お読みいただき、ありがとうございます。

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