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能ある夫は爪を隠す  作者: 神月いろは


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49.撤回します!

実家から帰り通常運行…いや《あそこ》へ報告しないと…


休み明け疲れ知らずの永人はいつもの時間に登校し、夫は珍しく疲れた様でまだ寝ている。

私は洗濯待ちの間に井鷺氏にメールすべくノートPCを立ち上げ、画面とかれこれ30分程睨めっこしている。


『どうぜ内容が内容だけに、絶対折り返しの電話があるはずだから、要点だけでいいよね』


そう思い


【井鷺様

 いつもお世話になっております。ご報告があり連絡いたしました。色々あり条件は満たされておりませんが、条件を撤回する事にいたしました。つきましてはお手隙の時に連絡お願いいたします】


「送信っと」


連絡を終え気が抜けた私は、ご褒美に朝から高級アイスを食べる事にし、冷凍庫から取り出したら…


“♫♩〜”


着信が有りスマホを見ると井鷺氏からだった。慌ててアイスを冷凍庫を戻し電話に出る。


『おはようございます。井鷺です。今よろしいでしょうか?』

「はい。大丈夫です」


何を言われるのか分からず緊張が走る。すると井鷺氏は今日訪問していいか聞いてきた。今日は夫も私も予定はない。でも永人が3時に帰ってくるから、昼一に来てもらう事にした。電話を切り直ぐか寝室に行き夫を起こすと、ベッドに引きずり込まれる。そして服を脱がされそうになり抵抗しながら、井鷺氏が昼から来る事を伝える。すると飛び起きた夫はシャワーを浴びに浴室に走って行った。

暫くして浴室から出てきた夫は何とも言えない顔をしながら


「香里さん…これ現実だよね?クラトスカに帰るのは夢じゃないよね」

「うん。井鷺氏にメールしたから、《あそこ》は今頃上や下への大騒ぎだろうね」


そう言い笑うと夫は強く抱きしめ、小さい声で『嬉しい』と呟き沢山の口付けを落とした。私は長い間待たせた事を謝ると、愛を沢山囁いてくれ幸せを感じていた。


こうして興奮する夫を宥めて、遅めの朝ごはんにする。そして夫はさっそく帰る為に準備を始め、井鷺氏が来るまで書斎に籠った。

昼食も食べず作業する夫をそっとし、私はゆっくり一人でランチ。こっそり買ってあった有名店の冷凍パスタを温めて少しリッチな気分を味わう。


“ピンポーン”


モニターを見ると井鷺氏と…


「大川氏⁉︎」


レアキャラに驚いていると夫が2階から凄い勢いで降りて来て玄関に走り二人を迎えた。苦笑いしながら私はお茶の準備をする。


「いらっしゃい」

「まずはこちらを…」


リビングに入ってきた大川氏は大きな花束を渡し満面の笑みを浮かべ…いや涙目で焦る。花束を受け取ると井鷺氏が大きな紙袋を夫に渡した。

お二人を夫に任せ私は先ずはお茶を入れ、いただいた花を花瓶に飾りソファーに着くと、お二人は立ち上がり私に深々と頭を下げてお礼を述べた。お礼を言われると思っていなかったので恐縮していると大川氏が


「香里さんの決断に感謝と敬意を。母上の事情等は井鷺から報告を受けております」


そう言い母の再婚を祝いの言葉をかけてくれる。そして大川氏は夫に握手を求め、普段反抗的な態度を取っていた夫は素直に大川氏と井鷺氏と握手をした。私は夫の隣で穏やかに微笑む夫を見ながら、これからしなければならない事を思い溜息を吐いてしまう。すると夫が慌てて私に詰め寄る。


「クラストスカに行く事を渋っているんじゃないの。ただ…ほら…色々やらなきゃいけない事があるでしょ…」


そう言い口籠ると大川氏が座りなおし


「今、香里さんに調整に必要な設備の手配に入り、早ければ2週間後から対応できます。諸手続きも含め早ければ年明け直ぐにでも転移は可能です」

「えっ!そんなに早く⁈」


覚悟はしていたが公安の対応の速さに怯んでしまった。決心したけど大丈夫?私…

お読みいただき、ありがとうございます。

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