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能ある夫は爪を隠す  作者: 神月いろは


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47.終の住処

母が世話になる予定の真理子の介護施設へ見学に向かう。

直樹さんが運転する大型ワゴンに乗り込み、真理子さんが経営する介護施設へ向かう。一番後ろの列に座る永人の横に蓮くんが座り相手をしてくれている。

楽しそうな永人に安心すると、夫は腰に腕を回しくっつく。夫の体温に力が抜けてくると施設に着いた。真理子さんの案内で施設を見て回る。新しくは無いが掃除が行きとどき清潔で、スタッフと利用者の明るい表情なのが印象的だった。


「真理子ちゃんも居てくれるし、ここを終の住処に決めたの」


母はそう言い真理子さんに微笑みを向ける。すると先生がやきもち焼いた様で母と手を繋ぐ。そんな先生を見て男性もいくつになってもヤキモチを妬くのだと知る。

そして館内を見て周り1階のロビーに来ると、永人と蓮くんがおばあちゃんに囲まれてアイドルになっていた。おばあちゃん達に可愛がってもらっている永人を見ていい経験になったと思っていたら、夫も温かい視線を永人に向ける。


こうして施設見学を終え先生の自宅へ戻ると、直樹さんの奥さんの玖美さんが昼食を用意してくれていた。お留守番の直樹さんの娘の美優ちゃんとも挨拶をし、温かい家庭料理を皆んなでいただき楽しい食事会となった。そして食後のコーヒーを飲みながら歓談していて…


「笹川家の皆さん。ご承知だと思うのですが、私は近いうちに夫の故郷へ引越します。恐らく日本には帰ってこれません。ですので皆さん母をよろしくお願いいたします」


そう言い立ち上がり頭を下げた。すると先生が立ち上がり歩み寄りハグをして


「香里さんはもう私の娘だよ。お母さんの事は父さんに任せて、貴女は貴女の家族を大切にしなさい」

「はい。ありがとうございます」


再度座ると皆んな涙目になっていた。素敵な出会いに感謝しつつ、短い時間ではあるが皆さんと交流を深める。

実は私の知らない間に再婚話は進んでいて、先生の立派なご自宅は直樹さん一家が住み、先生は私の実家で新婚生活を始めるそうだ。そして私の許可を得た2人は照れながら入籍日は11月22日(いい夫婦)すると言い、年末に家族だけで簡単な披露宴をすると発表した。そんな新婚の2人は(仕事を)引退し余生を楽しむ。

話を聞きながら幸せそうな母を見て喜び半分、寂しさ半分で複雑な気持ちになる。すると夫が指を絡めて頬に口付けた。


『もう母の心配はしなくていい。私は夫と永人の為に…』

「ねーね!おじいちゃんとおばあちゃんが結婚したら、蓮くんは(従兄弟の)お兄ちゃんになるの」

「そうだよ。永人よろしくな」


蓮くんがそう言うと永人は両手を上げて喜んだ。そして人見知りしない永人は美優ちゃんとも秒で仲良くなり、弾けてしまいそうな笑顔を浮かべた。


親戚が増え嬉しそうな永人を見ながら、近いうちにまた別れが待っている事に心が痛む。でも今の私はやっとクラトスカに移転する事に前向きになれた。

私の表情から察した夫が涙目で抱き付きキスしそうな勢いだ。キス魔の夫に慣れている永人は気にしていないが、思春期の蓮くんと美優ちゃんは真っ赤な顔をして顔を背ける。

慌てて夫を引き離し、遅れてきて真理子さんのご家族にご挨拶をし夕方まで先生のお宅で過ごした。


「永人君。また遊びにおいで」

「うん!おじさんお邪魔しました」


こうしてタクシーで実家に戻り、興奮して疲れた永人を寝かしつけ、母と夫と今後の事を話す事にした。


お読みいただき、ありがとうございます。

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