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能ある夫は爪を隠す  作者: 神月いろは


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46.息子の想い

笹川先生の息子さんと話す事になり…

目の前に座る笹川先生の息子さんは直樹さんと言い私の10歳年上。眼鏡をかけ細身も相まって神経質に見える。名刺をいただきテーブルに置くと


「今から話す事は2人には内密にお願いします」

「あっはい」


そう前置きをして直樹さんは亡くなられたお母様(笹川先生の前妻)の事を話し始めた。


「笹川家は四代続く医師家系で、昔からこの地域の市民の健康管理を担ってきました」


その為笹川先生の母はプライドが高く、医院を守る為に同じく医師家系の娘さんとの縁談を強制した。

笹川先生は心に決めた人がいたが、医院のためそして親戚一同からの圧に抗えず、亡き奥様との縁組を受け入れたそうだ。


「父は恋心を封印し母と結婚し家庭を持ちました。母は厳格な親に育てられ、自分の意思を持たず典型な貞淑な妻でした。そして父も…」


先生は妻や子供を愛し良き父親だったと直樹さんは話した。しかし奥様は先生の心に女性がいる事をしており、自分が病に罹り長くないと知ったときに、直樹さんにある事をお願いしたそうだ。


「母は自分も父も親の望みのまま生きてきた。自分が亡くなった後は父の思いのままにしてあげで欲しいと言い残しました。そしてもう一つ先祖が守って来た病院は受け継ぎ守って欲しいと願いました」


直樹さんはそう言いなんとも言えない顔をした。そして直樹さんは母の遺品から母の日記を見つけ、ウチの母の存在を知る。


「正直父が雅子さんと真剣に付き合い出したと聞いた時は、母の遺言を一つ果たせたと安心しましたよ。しかしもう一つの遺言を果たすには、私が悪役になる必要があり、貴女や雅子さんに嫌な思いをさせてしまい、申し訳ありませんでした」


そう言い直樹さんは立ち上がり深々と頭を下げた。

直樹さんはウチの母と仲を喜んだが、母の人柄が分からず病院にどう関わってくるのか読めず、あの条件を出したそうだ。

そして母が直樹さんの条件を全て受け入れ、それどころか何も望んでいない事を知り、後日に謝罪したそうだ。そして今回会う事になり初めに謝罪してくれた。


「私が亡き母を想うように、娘の香里さんも母親があの様な扱いをされれば腹が立つでしょう。だから初めに謝罪しないと今後の話が出来ないと思ったのです」

「ありがとうございます。うちの母の事も思ってくださって…」


そう言い感謝する。すると穏やかな顔をした直樹さんは、頭を掻きながら妹さん(真理子)の方が人を見る目があると言い、先生と直樹さんの間に入ってくれた妹さんに感謝していた。

私は直樹さんの話を聞きながら、こんなにも家族を思いやれる人達なら、私が夫の故郷に転移しても母は大丈夫だと思えた。

少し涙ぐむと直樹さんは焦り出した。誤解を招いたと思い今思っている事を言葉にする。すると直樹さんは


「貴女の事情は詳しくはありませんが聞いています。まだまだ不安でしょうが、雅子さんは家族です。何があっても我々が守り寄り添います」

「ありがとうございます。よろしくお願いします」


そう言い今度は私が立ち上がり深々と頭を下げた。すると直樹さんは慌てて私の手を取り


「やめて下さいよ。貴女は私の妹なんですから。兄に甘えて下さい」

「一人っ子だったので、兄妹って不思議な感じです」


そう言うと直樹さんに第一印象と違い砕けた感じで【お兄ちゃん】呼びを求め詰め寄った。照れ臭くて汗が溢れてくると


“こんこん”


扉をノックされ永人と高校生?くらいの男の子が入って来た。どうやら男の子は直樹さんの息子さんで、大人が話をしてる間に永人の遊び相手をしてくれていたようだ。一人っ子の永人はお兄ちゃんに懐き仲良くなっている。


「ママ話が長いって父さんが心配してるよ。それでおばあちゃんが見て来てって」

「今終わったよ。お兄ちゃんは…えっとお名前聞いていい?」

「蓮です」


そう言い挨拶してくれ、礼儀正しくご両親が大切に育てられたのが窺える。直樹さんは少し屈み永人に視線を合わせて挨拶してくれ、別室で待っている皆んなの元へ移動する。

この後真理子さんと少し話し、近くにある真理子さんが経営する介護施設へ移動した。

お読みいただき、ありがとうございます。

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