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能ある夫は爪を隠す  作者: 神月いろは


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44.穏やかな日常

情調不安定のまま日常が戻ってきて…

母が帰り日常が戻ってきた。あの日から夫は通常運行であえてあ(・)の(・)話(・)題(・)を出さない。永人も母が帰って数日寂しそうだったが、直ぐに新学期の準備を始め日常に戻った。

そして9月になり新学期始まった。夫はいつもより仕事の依頼が多く、ここ数日は食事以外は書斎に籠っている事が多い。

1人の時間が増え考える時間が増えた私は、未だ気持ちが揺らいだままで落ち着かない。でも早かれ遅かれクラトスカに行く事は決まっているので、またクラトスカ語のテキストを開き自主学習する。


「ただいま!」

「お帰り」


永人が学校から帰り家の中が一気に活気に満ちる。そしておやつをテーブルに用意し、食べながら学校の様子を聞いていると、永人が


「副担任の先生が代わったよ」

「えっ?そうなの」


今の小学校は担任の他に副担任がいて授業のサポートをする。確か前の先生は若い女性の先生だった。何故代わった永人に聞くと、学校からの手紙(プリント)を取り出し渡す。その手紙には前任の副担任の体調不良により求職し、2学期から副担任が代わるお知らせだった。


「副担の先生はどんな感じ?」

「背が高くてカッコいい先生で外人さんみたいなんだ。それで女子がキャーキャー言うから煩かったよ」

「へーイケメンなんだ」


勝手なイメージだが学校先生=イケメンってイメージが無くどんな人なのか少し興味が湧く。そんな私を見ていた永人が、夫の方がカッコいいと言い


「父さんが聞いたらやきもち焼くからその話したら駄目だよ」


ウチの息子ちゃんは父親をよく分かっている7歳児である。こうしておやつ食べ終えた永人は自室に戻り宿題を始めた。私は少し早いが夕食の準備を始めると家の電話が鳴った。電話に出ると母からだ。

話しは次の3連休の件で、笹川先生の息子さんと会う日を伝えた。2人の仲を反対していた息子さんに会うと思うと緊張する。そんな私の声で緊張しているのを感じた母が


「今から緊張してどうするの。香里が思っている様な事は無いから気軽に帰っておいで」

「あ…分かちゃった」


そう言うと笑う母の笑い声が明るくてすこし癒された。そして母は夕飯の時間だといい早々に電話を切った。そして私も急いで夕食を作り食事にする。夫も仕事を片付け一家団欒し、先ほど話していた副担任の話になった。永人は私に目配せし夫にはイケメン先生だとは言わなかった。どうやらウチの息子は7歳にして気配りも出来る子に育った様だ。


こうして新学期も始まり日々平穏に過ごしやっと連休が来た。数日前から私と永人はそわそわしていて、反対に夫は冷静でいる事に違和感を感じつつ出発日を迎えた。

前日に荷物の準備も終わり朝早くタクシーで空港に向かう。チャックインを済ませベンチで待っている夫と永人の元へ向かっていると、前から歩いて来た背の高い男性とぶつかりバランスを崩す。すると男性が支えてくれ転倒を免れた。お礼を言う為に男性を見上げると


『あれ?夫に似ている?』


その男性は(夫には負けるが)美形で人工物の様な顔立ちをしている。じっと見ていたら睨まれ慌てて謝罪とお礼を言うと大きな溜息を吐かれた。心の中でぶつかったのはお互いに非があるのに、感じが悪い対応に気分が悪くなる。


「よ(・)く(・)考(・)え(・)見(・)て(・)ください」

「はぁ?」


男性はそう言い足早に去っていった。気分(テンション)が一気に下がりその場から動くことが出来なかった。すると戻りが遅い私を永人と夫が迎えに来たが、夫が暴走してしまわない様に先程の事は言わなかった。


こうして出鼻をくじかれ一抹の不安を抱えつつ実家へと向かった。

お読みいただき、ありがとうございます。

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