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第三話 セラの能力とフィルの能力

 「セラ!!!」


 セラに戦闘狼(ウォーウルフ)が向かった光景を見たフィルは叫ぶ。


 「きゃぁ!!」


 戦闘狼(ウォーウルフ)に気付いたセラは悲鳴を上げる。

 少女に魔物が襲いかかるという普通なら絶望的な光景。

 しかし、次の瞬間にはその常識を打ち破る光景が広がる。


 「び、びっくりしたぁ〜」


 少女の口から出たのは断末魔の叫びでもなければ血を吐いた訳でもなかった。

 ただ『びっくりした』という言葉であった。

 

 「ったく、セラのそれ(・・)は卑怯と言うか反則だな」


 フィルは戦闘狼(ウォーウルフ)を倒しながらセラに声をかける。

 フィルがそれ(・・)と呼ぶものはセラの周りにあった。

 セラを守るようにセラを覆い輝く光の膜。

 それはフィルがかつてセラと出会った時に発動していたと思われる能力だった。

 光の膜はあの時と同じように何も寄せ付けず迫り来る戦闘狼(ウォーウルフ)を弾き返していた。

 フィルがこの一年で分かったのはセラのこの能力は命の危機をセラが感じた時に発動するという事だ。

 一種の防衛反応だろう。

 しかし、能力者が使う能力は自分で意識しないと発動しない。

 でも、セラの場合は意識しているというより反射的に発動している。

 この点が普通の能力者とは違う点である。

 フィルもこの点に疑問は感じていたが、考えても答えは出ないという事もあり、セラが自分の身は自分で守れるとプラスに考えて割り切ってしまって考えるのを放棄している。


 「卑怯って何よ! フィルなんて火出せるじゃない! 火出せるなんていつでもお肉焼けるし羨ましい! ぷぅ〜」


 セラは卑怯という言葉に対して頬を膨らませて反論する。

 セラ自身、好きで無意識に能力を発動させている訳ではないので卑怯と呼ばれたくなかったようだ。

 それにセラはフィルの能力の方がお肉を焼ける……つまりバーベキューするのに都合が良いと羨ましがっている。

 フィルはフィルで『永遠の炎(エターナル・フレイム)』と呼ばれ、恐れられていた能力が肉を焼く為に羨ましいと言われて呆れていた。

 セラは記憶を失っていると言っても見た目は同じ歳くらい。

 頭では理解していてもその姿を目にして聞くと納得できないものがあるフィルだった。


 「……なんだよそれ。ったく。そろそろ行くか」


 セラとのやりとりの間にセラの光の膜に弾かれた戦闘狼(ウォーウルフ)を含め一通り討伐したフィルが呟く。

 逃げ延びた戦闘狼(ウォーウルフ)もいたが、危険を感じ遠くへ逃げて行き近くには残っていなかった。

 魔物も本能で危険を感じるのである。


 「っと、その前に討伐部位を取らないとな」


 戦闘狼(ウォーウルフ)の討伐は他の牙に比べて一際大きな牙二本。

 一体に対して二本ある牙であり、二本で一体の討伐証明となる。

 フィルは近場の戦闘狼(ウォーウルフ)から順に討伐部位である牙を折っていく。

 サイレントフォースに所属していたフィルは能力だけでなく身体能力も鍛えられている。

 牙を折るくらい造作もなかった。


 「はぁ〜能力が火だから毛皮は無理か」


 魔物は討伐部位以外も素材として取り扱うがフィルの場合は能力が火である為、毛皮類は燃えてしまい売り物にならなかった。


 「いいじゃないですかぁ! それよりお肉食べましょう、お肉!」


 いつの間にかセラはフィルの隣に来ており、せっせと木の枝を集めている。

 そして、数少ない荷物袋の中から短剣を出してフィルの横に置いた。


 「隊長! お願いします!」


 セラは額に右手を当て敬礼のポーズをしながらそう言って枝を集めに戻った。

 討伐した魔物を解体するのはフィルの仕事である。


 (はぁ〜、何やってんだろ俺)


 フィルは時々何をしているのか分からなくなる事があった。

 かつてはサイレントフォースに所属し『永遠の炎(エターナル・フレイム)』と呼ばれていた自分が今や肉を捌き、能力で火をつけ肉を焼く。

 そして、少女と共に逃避行。

 昔との自分との違いに現実か夢か、何をしているのか分からなくなる時があるフィルだったが、その度に自問自答して生活の為と納得するのだった。


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