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裸足の登山

誰が言い出したかは分からない。駅から普段降りる方向から逆の方向をずっと進んだ先にある小さな山を裸足で登り切ると願いが叶うらしい。試験前の1月、願掛けもとい気分転換に、マウラ、ミワ、マリ、僕の4人は細い山の入り口で落ち合った。僕とミワは、久しぶりに2人で裸足で電車に乗り、危ない興奮を思い出した。マリも家から裸足で来てくれた。マウラもちゃんと裸足だ。服も来ている。


ねぇねぇ、マリちゃん。やっぱり裸足で電車に乗るってワクワクするよね!

人に見られることくらい大したことないよ。


さすがのポーカーフェイスは、自分の感情を隠すことまで覚えてしまったら、いったい何が本物の金沢真理なのか分からなくなってくるな。


グダグダ言ってないで早く登ろうよ!


マウラに先導されるように木々で覆われた薄暗い登山道を登っていく。びちゃびちゃで湿った泥が足を冷やし、木の枝が突き刺さる。


これ、結構きついよ。

おいおい、これくらいで音を上げるなよ。登山は最初が肝心なんだよ。


マウラに言われた通り、一歩一歩足を踏みしめる。なるべくケガをしないように、マウラの大きい足跡を踏むようにした。見上げれば急登で、これを登るんだと思うと気が引けたが、マウラはズンズン登っていくので、僕も遅れないように努めた。後ろの方も気になって振り返ると、マリがかなり後れを取っていた。


マウラ!いったんその平らなところで止まってくれよ!

あぁ分かったよ!


マリに大丈夫かと声をかけて励ましてやると、ポーカーフェイスながらもしっかりと足を地につけて、一歩一歩踏ん張っていた。無理に誘ったとはいえ、こういう側面もマリにあるのだなぁと感心した。僕も、息を切らしながらやっとのことで、マウラのいる平地についた。


やばいな!こんな山奥まで裸足で来ちゃったよ!

もしかして本当は獣になりたかったんじゃないか?

バカ言うなよ!


そうくだらないことを掛け合いながら、息を整えているうちに、ミワとマリが登ってきた。ミワはもちろんタフなので、マリの先導役となっていた。


マリちゃん大丈夫?

もちろん問題ないよ。


そう言いながらも、足をドロドロに汚して、息を切らすので、しばし休憩した後に、もう1セット、急登を、登り切った。そこにはベンチがあり、山登りのオアシスだった。しばし、ここでひと休みした。周りは木々に囲まれ、両側は緩やかな崖だった。そして。おが屑の香りが、僕たちを癒した。


ほら、足の裏、めっちゃ汚いよ。

フフフっ!


ミワもこうやって足跡を残していくのが楽しい様子だった。人間という獣が、まさに自然へと帰る瞬間のように思えた。


じゃあ続き行こう!


せっかちなマウラは、僕たちの体力のことなど気にせず、ズンズン先へ進む。ただ、さっきまでとはうってかわり、幾分か乾いた歩きやすい道だった。


落ち葉、気持ちいいね。

そうだな。


みんななんだかんだ裸足で過ごした仲間だから、こうやって裸足で色んなところを歩くのは楽しいのだ。ガサガサと藪を抜け、冷たい沢で足を洗ったり、大地を踏みしめ、足裏から自然の豊かさを感じ取った。しばらく歩いた後に、岩場へと来た。


ここ登れば頂上だよ!


僕たちは最後の試練に立ち向かった。なるべく、とがった部分を踏まないように、足を滑らせないようにと、一歩一歩足が岩を踏みしめていることを確かめながら慎重に登った。マウラはすでに頂上にいて、おーい!と呼んでいた。ふと後ろが気になったので振り返ってみると、マリが立ち往生しているように見えた。


一歩一歩でいいんだ!ゆっくり登ってくれよ!


僕のその掛け声に応えるようにマリは一生懸命、足を振り上げ、一歩ずつ登って来た。僕も、何とか頂上までつくと、目の前には小さな祠があった。振り返ってみると、地区全体を見渡せるほど高いところに登ったのだと気づいた。この達成感は、登ったものにしか味わえないものだ。


よーやっと来たか。本当に運動部だったの?

お前に獣の適性があるだけだよ。


ミワもなんとか踏ん張って登りその後ろに、マリもついてきた。マリが頂に手をかけると、僕はその手を引っ張って、引き上げてやった。


うわぁすごい景色だね!学校見えるよ!

・・・・・


マリは何も語らずポーカーフェイスを維持していたが、汗まみれで、すがすがしい表情をしていた。


じゃあ参拝だな!


それぞれが小銭を取り出し、小さい賽銭箱に入れ、皆、思い思いお願いをした。


帰り際、まざまざと見えるこの広大な平野の大部分が軍事基地になると思うと、むなしい気分になってくるが、この小さな祠にいる神様も、移ろいゆく景色を眺めていたのだろう。

僕たちは頂上の地面に足跡をたくさん残して帰った。

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