循環
夢を見ていた。
二人きりのソファで、一人の子が産まれる。しかし、この子は自分自身を育んだそのゆりかごであるソファを破壊し消えていった。その子がまた子を生み、またそれが永遠と繰り返されていく。残された者は、かつての若さを失い歳を取り、土へと帰る。でも、魂は肉体を変え、永遠に受け継がれていく。そこに始まりも終わりもない。ただ今という実感があるのみなのだ。
その止まった今という時のなか、何もない白いところを漂っていた。ただそこにいるだけで幸せだった。それなのに、いつの間にか穢れた血肉のなかに魂を押し込められて、生と戦わなければならない。でも、生の中にも死のぬくもりがあった。死とは祝福であった。ただ、無を漂うだけだからだ。そして、生とは罪を背負うことだ。この生と死の循環はとどまるところを知らない。ただ、今はどうなのだろうか。今は生と死の間をウロウロしているような気がする。目覚めてしまえば、また不機嫌で寒い日常が僕を襲う。でも、先へと進まなければならないのだ。
僕は目覚めた。マウラとともに反対向きに毛布にくるまっていた。その温もりの中でマウラの足が僕の顔に覆いかぶさって鬱陶しかった。それでもこの足はもともとは僕の憧れであったかと思うと、信じられないように思えた。人と親密になるっていうのは、人に纏うミステリアスとトレードオフなんだな。僕はなるべくかつての興奮を思い出すように努めた。この指にクッキリと浮かぶ指紋。一本一本伸びる長い指。分厚い皮。大きくて長いアーチ。臭そうに黄色くなったカカト。この足を堂々と晒しながら、裸足で学校を歩き回っている。ときどき、湿らせたまま、穢らわしい足跡を残すこともある。この淫乱な足の裏が大好きだ。ギュッと土踏まずを揉んでやると足で顎を蹴られてしまった。そしてムクリと起き出し、どんだけ足が好きなんだこの変態野郎と、白い息を吐きながら、軽蔑の眼差しを向けられてしまった。今日は機嫌の悪い朝だった。
その一蹴りで、完全に目覚めた僕は、裸のまま、スラックス、ワイシャツを着て、その上から防寒具を羽織った。今日はまたここに来ようと思ったので、ブレザーは置いていった。
そういえば、なんで最近下着着ないんだ?
今更すぎるな。露出狂が感染ったんだよ。
まぁ、そんなとこか。
僕はいつものごとく、先に寒空へ出て部活へ向かっていった。マウラはまた毛布にくるまって眠った。




