父と娘
自分の娘、男、知らない女の三人が、裸体で芸術作品を形成していたのをハッキリと見てしまい、入ってきた男は困惑した表情を浮かべていた。マウラはその様子に顔を真っ赤にして僕を押しのけて、僕を引き抜き、静かに座って俯いた。僕やミワも唖然としてマウラと同じようにかしこまって座った。横からミワが、目を泳がせているが見て取れた。
コンドームは、ちゃんとつけたのか、えらいな。
あ、あの。
名を語ることもないよ。これはモトコのことだからな。
このひと言で言えば無骨者の、体の大きく髭や眉毛などを伸ばしっぱなしにして、垂れ目でコケた顔の作業服で裸足のマウラの父親らしき人は、僕たちよりも汗臭く仕事人間の風貌だった。そして、自分たちのほうを見ることもなく、淡々と上着を脱ぎ、自分の荷物の整理をしていた。その後、風呂の方へ向かって大きな足音を立てて行った。マウラはただ俯くだけだから、動くことも話すこともできなかった。ただ、充満した汗の臭いとともに静かに時を過ごした。しばらくしてから、彼は髭を剃ったスッキリした顔で裸のままでてきて、飯食っていいか?とひと言だけ言ったので、俯いたままのマウラはうん、とだけ返事した。彼は衣類を探しだして、下着だけを着て、冷蔵庫にある適当なエナジードリンクを1本飲み干し、大きな手提げのカバンから取り出したパックの焼き鳥やら、唐揚げやら、ご飯を適当にレンジして、机のうえに準備して、さらに、カバンからビールを取り出し、一気に飲み干した。そして、黙々と目の前の料理を食べている。
好きにしてていいんだぞ。まだ酒を飲める年齢でもないだろ。
こちらを向きもせず、淡々とスマホを見ながら飯を食べ、空いたパックを、その辺に捨てられたビニール袋の中に捨て、縛って玄関前へ置いた後に、リビングへ戻ってきた。隣の寝室、寝ていいか?と聞くので、マウラはコクリと頷いた。彼は自分たちの様子を気にする素振りも見せず、奥にある暗い畳の部屋をに入っていき、襖を強めに閉めた。
パパ・・・ねぇ、パパのところに行っていい?
マウラは急に僕に語りかけたので、いいよ、とだけ返すと、裸のまま襖の中へと消えていった。僕とミワは父親の圧から解放されたと同時に、ポカンとした顔を浮かべ、それぞれ見つめ合った。間もなくして、奥の方から、モトコ、成長したんだな、とか、パパ、パパ、とお互いに言葉を掛け合いながら、ギシギシと音が聞こえた。僕は唖然としたが、ふと、ミワは何かを察したように、そっとしておこうと、小声で囁いた後、部活の時間だよと、僕にこの空間から出るように促された。僕たちはマウラに断りなく、静かに服を着て立ち去った。
思えば、僕が来るまでは、たった一人でこのマンションで生活してたから。定期的に来る家族は心のささえだったんだろうな。それが、僕が来て、知らぬ間に父親代わりをしてたということなのかな。そして、もしかしたら、ミワのことはお母さんのように感じていたのかもしれない。性的に奔放になる前は、こんなことをやってたとはにわかには信じがたいが、今はそれが抑えきれなくなってしまったんだな。




