再確認
結局今日はずっと裸足で過ごしてしまった。
部室までは裸足で直行。剣道は裸足でやるわけだし。部員には、修行でもしてるの?と茶化されたりしたが、特に顧問から何も言われることもなく、十分に足の裏を徹底的に痛めつけれるまで練習させられた。実は普段、剣道部の中に、靴下を履かない人など僕だけなのだ。僕は筋金入りの裸足好きだ。
いつもは部室から昇降口へまっすぐ行くのだが、今日だけは教室へ戻りたくなった。今日の余韻をまた思い出したくなったからだ。非常口の看板と外からのグラウンドの光のみが照らす薄暗い廊下。部室から昇降口までは普段から裸足で歩いてたわけだが、改めて裸足でいることを意識させられた。
歩くたびに、ヒリヒリする足裏。そのなかにひんやりと冷たく、またザラザラと砂のようなほこりが混じっている。ペタペタと一歩ずつ足の裏に意識を集中させながら歩く。足元は正真正銘何も身につけていない指先まで綺麗に露出した肌。これが人間の姿だというのに、なぜ上履きと靴下で覆い隠してしまうのだろうか。すべてから解放された気分だ。そもそも露出狂とはここから始まるのか?
それにしても改めて来てみると色々なことに気づくな。ロッカーの上においてある謎のぬいぐるみや、壁に刻まれたおそらく先輩であろう人の名前。人間の歴史はこうやって刻まれてくんだなぁとしみじみ感心した。そして、足の裏は常にザラザラしていた。あんまり掃除してないってことかな。でも普段感じられなかった構造物があることにも気づく。階段の縁にある滑り止めのゴム。教室の扉の金属のレールなど。そして教室の床は木でできてるんだなと改めて思わせる。廊下までは平坦なひんやりしたリノニウム。教室では足の裏からは若干の温かみを感じ取れる。ただ、でこぼことして、指先が突っかかる。
自分の席に座り、足の裏を見てみる。剣道部の練習ではここまで真っ黒くならないというほど、黒ずんで、砂のような埃もキラキラしてた。これはヤバいな。ローファ履く前に拭いときたいな。でも、これが一日中、裸足で歩いた証なんだよな。
自分の足の裏を改めて見てみると、やっぱりデカくて剣道部で培った厚い皮によって、まるで岩のようにゴツゴツと硬い。この歴戦の刻印を前に、急に、自分の中に血が騒いでしまった。
僕は誰もいないことを、物音一つないことに意識を集中させ、静かにやった。その瞬間には足がぴーんと伸び、指を思い切り広げた。そのティッシュをさっとポケットに仕舞い、さっさと帰宅した。
明日からもまた裸足か。いっそのこと上履きなんて見つからなくてもいいのかも。




