夏休み前のスリルゲーム その三
全裸で足を組んでニヤニヤとしているマウラの姿は、悪の象徴そのものに見えた。
はぁーラスボスはこのバカ女ってことか。
マウラさんはなぜそんなことを?
ん?なぜマウラを足立さんが?
それは一旦置いておけ
あのメッセージアプリの位置情報を利用するどころか逆に利用されたのだろう。使い方を弁えない最新技術を提供しても、とんでもなく悪意のある使い方をされるのは世の常なのだ。しかしなぜマウラは全裸?それにどうやって忍び込んで僕のバッグを盗んだ?
とりあえず服を着せてくれ。
あぁほらバッグ。あと着替え。これはいるの?
マウラは、昨日使用したコンドームをプランプランと持っていた。その時の、ミワの軽蔑の目はすさまじいものだった。その目は僕にも向けられた。完全に死んだ目をしていた。なぜこんなやつに僕が付き合ってるのか混乱極まりないだろう。ミワと僕はさっさと着替えて、裸足の制服姿になった。
これは私から聞いたほうがいいのかな?なんで2人は裸であの教室にいたんだ?
これこそマウラが解決したがっていた問題じゃないか?
??
??
ミワは何を話してるのか分からない様子だった。マウラもなぜ自分を盗撮したことと、2人が全裸で寝ていたのかの因果関係がつかめていなさそうだったので、僕がかわりに説明してやった。
つまり、マウラがなぜ今全裸でここに至るのかは不明だが、とにかくミワが送ったあの動画をなんとかしたい。それで僕を追跡したら僕とともにいるミワをなんとか説得できるだろう。こう考えたわけだな?
ま、そんなとこかな。
で、なんで全裸なの。
君たちこそ!
この話じゃんけんで勝った方から話すか?ミワはいいのか?
ミワはコクリと頷く。まぁさっきのスリルを味わったわけだし、さっきの軽蔑の目から打って変わって満足している。昨日の納得がさらに強まったと見てよさそうだな。
じゃあ行くよ!じゃんけん!ぽん!
ミワは手を出さなかったが、マウラはチョキ、僕はグーで勝った。
じゃあ僕から話すが、単刀直入に言えば・・・いや、ミワから話してほしいな。
ミワはゴクリと息を呑み話し始めた。
実はね、私はマウラさんが好きでもあったの。
!?
私、マウラさんがね。大人しくて、本を読んでるわけでもないのに、勉強もスポーツもできるし、なんかいいなぁって思っててね。それにそのミステリアスな感じと、男よりも男っぽい感じ。
いやぁそれほどでもあるのか?
マウラは素直に照れていた。
じゃあ、ミワの嫉妬心はむしろ僕に向けられた話なのか?
ほら、私って流されやすいから理由なんて一つだけじゃないよ。あとは事の成り行き。私にだって変態なところあるってだけなのかもねー。
ミワにしても、どこか気恥ずかしいようなにこやかな感じで可愛らしかった。
じゃあなんで、マウラは裸なんだ?
それはな、うちからここまで全裸で来た。部屋の鍵もここに隠してある。受け取れ。
ひぃぃ!とミワは気持ちの悪いものを見たというように小さく悲鳴を上げた。僕は、膣内からコンドームに包まれた鍵を渡された。それは糸を引いて白く粘ついていた。僕はそれをつまむように鍵を引き抜き、コンドームを捨て去った。
お前はもっと自分を大事にしろよ。
ふん。変なセリフ吐きやがって。
いやこれはマジで言ってるぞ?ミワも怯えている。それに、僕が最後に決着をつけたいことは2つだ。
ん?なんだ?
動画削除と、お前が服を着ること。
あぁあの動画さぁ、顔写ってないしネットにあげちゃったわ。
はぁとんだバカだ。ミワくんもだ。
え、あのマウラさんの可愛いとこだから、ずっと残しておきたいな・・・。
じゃあ、誰にもバラすなよ?なかには金沢さんみたいな凄い子もいるんだから。
え?私のこと?
ロッカーの隅から、金沢さんが出てきた。
なぜそんなところに?
お腹壊しててね。ずっとトイレにこもってたの。そしたら、あ、いや。
ん?何を言いかけたんだ?
ううん。何でもないよ。次の時間体育だし授業面倒だなぁって思って、更衣室へ来ちゃったんだけど。目の前に人の影がいて、ちょっと怖くてロッカーの裏に隠れたらこれだもんねぇ。
じゃあ、さっきの僕らの話全部聞いてたってことか。
もしかしたら、トイレに出たのは金沢さんで、そのことに気づいた教員がガラガラとドアを開けただけなのかもしれない。そして、マウラは寝てたりとかでもしてたんだろう。金沢さんがドアを開けて急に起き出したってところか?だとするとマヌケだな。
金沢に直接聞きたいんだけど、今回の問題は解決だって言っていいかな?
概ね、ね。でもあと一つだけだいじなこと忘れてるから後でね。
なんの話だ?
マウラが首を突っ込んできた。
お前はいいんだ。さっさと服着ろよ。
なんでお前に鍵渡したか分かるか?服を家から持ってきて欲しいってことなんだよ。
は?なんだと?今回の犯人マウラは禁固1日だ。絶対にロッカーから出るなよ。さもなくば、すべての罪はお前に着せられて、学校にいられなくなるんだからな。
うーん。仕方ないか。
私、見張っててもいいよ。それよりもヤキザトくんだけは早く外にでほうがいいかもね。
金沢の言葉にハッとして、恐る恐る、女子更衣室を出て、とりあえず目の前の男子トイレにこもって時が過ぎるのを待った。




