マウラの足の裏
お互い疲れ切って、頭と足、方向が対になる形で裸のまま寝転んだ。あのままイッてしまったら、もう本当に後戻りできない状態だった。やはりマウラという女子は、どこかズレてて、無鉄砲で、何を考えているのかも掴みづらい。話をそらす天才でもある。ついに上履きを盗んだ理由を聞き出せなかった。それとも今聞いてみるか。
お前ってなんで上履き取ったんだ。
今更聞くの?もう一線は超えてしまったでしょ?
はぐらかすんじゃいよー。
ふふ、しょうがないな。ごく単純な話だよ。君の足が見たかった。その剣道で鍛えた肉厚な足の裏がどうしても見たくなった。男子のなかでも素足で上履きを履いてるのは君だけだからだよ。
ただ、それだけの理由で、こんな大それたことをしたってわけか。
もういいじゃない?ユングさんみたいにいちいち人の心をいじくり回すんじゃなくて、アドラーみたいにさ、私は君の足の裏が見たいがために君の上履きを履いたんだ。それだけだよ。
マウラという人間の面倒さを改めて垣間見た。なんだか哲学的な話を聞くと眠くなる。それに普段使わない筋肉を使ってかなり疲れた。
もう寝るよ。また明日ね。
あ、その前に連絡先。
お互いにバッグからスマホを取り出して、お互い自分のスマホで顔を照らしつつ、メッセージアプリで友達を登録し、お互い適当なスタンプを送信して、疎通確認をした。
それじゃ。おやすみ。
うん。明日ね。
マウラの大きな足の裏が目の前にあり、僕に何とも言えぬ安らぎを与えてくれた。普段は絶対に見ることができない、シワシワでほんのりと漂うマウラの臭い。指の形まで。自然でかつ美しい足をほしいままにできる自分はなんともこの上ない幸せ者なのだ。この永遠の感覚を深いまどろみのなかで、静かに味わった。マウラはというと、僕の足を枕代わりにして、寝てしまっていたようだ。




