臭い
あ、僕の上履きやっと返してくれるのか。
いや?せっかく持って帰ってきたのにもったいないじゃん。
目を閉じて、僕の上履きをにスーっと臭いを嗅いでハァーっと大きく息を吐く。すると彼女の顔は赤らみ、恍惚として、酔ったようにダランとソファーに崩れ落ちた。そして、若干息づかいが荒くなっている。僕の上履きにまるで中毒作用があるかのようだ。
あぁ気持ちいい・・・あんたもほら、私の上履き。
え?あぁ。
僕も彼女に促されるようにスーッと臭いを嗅いだ。靴下を履いていたとはいえ、なかなか熟成した足らしい足の臭いだ。これがマウラの足の香りなんだ・・・。マウラがただ一人、この近くのマンションから学校まで行ったり来たりの毎日。授業は真面目に受けて、部活もやらずに、ときどき屋上でただむなしく一人で、夕日を眺め、適当にコンビニでご飯を買って、家に帰ってもお帰りという挨拶もない。静かに弁当を食べて、静かに寝るだけ。そんな彼女を支えた足なのだと思うと、この臭いってのは、日々の生活の証なんだな。
なぁなぁ!
え?
何ずぅっと私の上履き嗅いでんだよ。やっぱりあんたは犬かい?
いやぁマウラこそ、なんで俺の上履き嗅いだらそうなるんだ?
ま、そう身体が反応しちゃうから仕方ないんだよねぇ
僕を上目遣いで誘惑するように僕に迫ってくる。僕は反対に目をそらす。こいつ、本当に酔ってるのか?




