第4話① 魔王本部、初会議!(前半)
四月十三日。午前九時。
安土城高校地下。
昨日まで資材置き場だった地下室は、一夜にして巨大な会議室へと姿を変えていた。
正面には大きな黒板。壁一面には滋賀県地図、日本地図、世界地図。そして黒板の中央には大きく書かれている。
**第一回 魔王本部作戦会議**
上級悪魔以上の魔族たちが静かに席へ着いていた。昨日の入学式のおかげで、さすがに勝手に歩き回る者はいない。信長は壇上へ立ち、会議室を見渡した。
(少しは学校らしくなったのう。)
頭の中でルシフェルが答える。
<学校ではない。>
(魔王本部じゃったな。)
<其方。昨日から学校と本部を混同しておるぞ。>
(校長は学校、本部では議長じゃ。)
『都合よく使い分けるな。』
信長は咳払いを一つした。
「それでは、第一回魔王本部作戦会議を始める。」
全員が拍手した。
パチパチパチ……
信長は額を押さえた。
「拍手はいらん。」
ベリアルがおずおずと手を挙げる。
「議長、昨日、発表が終わったら拍手と教わりました。」
「今日は会議じゃ。」
「会議では拍手しないのですか。」
「基本せん。」
「なるほど。」
全員が一斉にメモを取る。
<真面目だな。>
(昨日までより成長しとる。)
信長は黒板へ三つの言葉を書いた。
**目的**
**目標**
**現状把握**
「今日は、この三つだけを決める。」
アモンが手を挙げる。
「議長。目的と目標は違うのですか。」
「違う。」
信長はチョークを置き、会議室を見渡した。
「例えば。今日は買い物へ行くとする。」
ベルゼブブが勢いよく立ち上がる。
「肉です!」
「まだ何も買うと言っとらん。」
「肉なら行きます!」
「座れ。」
会議室に笑いが起きる。
信長も笑いながら続けた。
「買う物が肉、米、味噌だとする。」
「これは目標じゃ。では目的は何じゃ。」
全員が考え込む。
ベルゼブブが再び手を挙げた。
「いっぱい食べること!」
「近い。」
「肉を食べること!」
「もっと近い。」
「肉を独り占めすること!」
「帰れ。」
笑いが起こる。
信長は黒板へ大きく丸を書く。
「腹を満たすこと。これが目的じゃ。買い物は手段。肉も手段。目的を忘れると、手段ばかり増える。」
全員が真剣な顔になった。
「世界征服も同じじゃ。滋賀を制圧する。日本を制圧する。世界を制圧する。これは目標。」
「では目的は何じゃ?」
会議室が静まり返る。誰も答えられない。信長は少し笑って、口に出した。
「ルシフェル。宿題じゃ。」
会議室が凍る。魔族たちは恐る恐る議長を見る。もちろん外から見れば、議長は一人である。頭の中。
<……我か。>
(そうじゃ。)
<皆の前で言うのか>』
(言う。)
<容赦ないな、お主は。>
(容赦しておる場合ではないのでな。)
<……分かった。次の会議までに考えてくる。>
信長は満足そうに頷いた。
「皆も覚えておけ。目的が曖昧では。どれだけ戦に勝っても迷う。まずは何のために戦うのか。そこを決めることじゃ。」
全員が一斉にメモを取った。
信長は黒板の二つ目へ丸を付ける。
**現状把握**
「次じゃ。今の味方を知らねば戦はできん。各階級の魔物・魔族の数。配置。隊長。食糧。武器。魔力。顕現可能期間。全部調べる。」
ダンタリオンが手を挙げた。
「議長。全部ですか?」
「全部じゃ。面倒ではありませんか?」
「面倒を嫌う者から負ける。」
会議室が静まり返る。
信長は黒板の最後へ丸を付けた。
**敵情把握**
「そして最後。敵を知る。敵を知らずして勝った戦など、一つもない。」
その一言で、会議室の空気が引き締まった。
信長はチョークを静かに置く。
「さて。ここからが本番じゃ。今から、それぞれの担当役職を決める。」
会議室のあちこちで、ごくりと唾を飲む音が響いた。
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