第4話② 魔王本部、初会議!(後半)
信長は黒板へ大きく書いた。
**担当役職決定**
会議室の空気が少し重くなる。
「ここからが本番じゃ。役職は一度決めたら終わりではない。今日決めた役職は、担当が変わっても組織に残る。戦で倒れようが。異動しようが。後任が必ず引き継ぐ。それが組織じゃ。」
魔族たちは真剣な顔でうなずいた。
ルシフェルが頭の中でつぶやく。
<組織をそこまで考えておったのか。>
(天下は人ではなく、組織で動く。)
<なるほど。>
(其方は全部一人でやろうとしすぎじゃ。)
<……否定できぬ。>
「では。兵站部長。やりたい者?」
…………。静かだった。誰も手を挙げない。俯く者。天井を見る者。隣の悪魔の手をこっそり持ち上げようとする者。
「こら。人の手を勝手に挙げるな。」
「す、すみません。」
ベルゼブブが勢いよく立った。
「食堂ならやります!」
「違う。」
「兵站じゃ。」
「兵糧担当ですよね?」
「そうじゃ。」
「毎日味見できます?」
「できん。」
「やめます。」
会議室が笑いに包まれた。
信長は頭を抱えた。
「兵站とは。飯を食う仕事ではない。飯を食わせる仕事じゃ。補給が止まれば、軍は負ける。一番地味で一番重要じゃ。」
全員が真剣にメモを取る。
ベルゼブブだけは小さくつぶやいた。
「味見くらい……。」
信長は聞き逃さなかった。
「味見係なら考えてやる。」
「やります!」
「現金な奴じゃ。」
再び笑いが起こる。
「では次。諜報部長。やりたい者。」
三人が同時に手を挙げた。
「一人ずつ理由を述べよ。」
一人目。
「昔から隠れるのが得意です。」
「よろしい。」
二人目。
「人の話を盗み聞きするのが趣味です。」
「趣味にするな。」
会議室から笑いが漏れる。
三人目。
「昔からコソコソしていると、よく怒られていました。」
信長は腕を組んだ。
「ほう。怒られても続けたのか?」
「はい。」
「才能じゃ。採用。」
三人とも目を丸くした。
「え?」
「隠れる技術は鍛えられる。じゃが、怒られても続ける根性は鍛えにくい。」
「諜報とは、諦めぬ仕事じゃ。そなたには、これより諜報部長を命ずる。」
「ありがとうございます!」
ルシフェルが感心したようにつぶやく。
<理由まで聞いて決めるのか。>
(適材適所じゃ。)
<力だけでは決めぬのだな。>
(力だけなら猿でも振るえる。)
<猿?>
(いや、何でもない。)
信長は慌てて話を変えた。
「教育部長。これは最初から決めておる。」
ベリアルが姿勢を正す。
「ベリアル。」
「はい!」
「其方じゃ。」
「え?」
「ゴブリン教室。昨日より今日。今日より明日。ちゃんと伸ばしておった。教師とは、教える者ではない。育てる者じゃ。その点、其方が一番向いておる。」
ベリアルは少し目を潤ませた。
「校長……。」
<昨日泣いておった教師とは思えんな。>
(人は褒めると伸びる。)
<悪魔でもか?>
(悪魔でもじゃ。)
「続いて。財務部長。」
マモンが勢いよく立ち上がる。
「はい!」
「理由。」
「金が好きです!」
「採用。」
「ありがとうございます!」
<早っ。>
(適材適所じゃ。)
<今のは雑ではないか?>
(金に一番執着しとる奴が一番向いとる。)
<……それもそうか。>
信長は黒板へ次々と名前を書き込んでいく。兵站部長。諜報部長。教育部長。財務部長。情報分析部長。結界管理部長。
まだ空欄もいくつか残っていた。
「空いておる役職は、今後ゆっくり決める。焦って決める必要はない。適任がおらねば空席でよい。」
魔族たちは安心したように息をついた。
信長は最後に全員を見渡す。
「今日決めた役職は、今後も引き継がれていく。担当は変わる。じゃが、役目は消えぬ。それが組織じゃ。」
会議室は静まり返っていた。誰もが、その言葉の重みを感じていた。
ルシフェルが静かに口を開く。
<信長。>
<お主はやはり天下人だったのだな。>
信長は少し照れくさそうに笑う。
(今さらか。)
<昨日はパフェで喜んでおったからな。>
(忘れろ。)
<忘れぬ。>
二人は同時に笑った。
外から見れば、議長が一人で笑っているだけだった。
ベリアルが小声で隣へささやく。
「議長……。最近よく一人で笑われますね。」
勝家は真顔で答えた。
「議長とは。そういうものなのだろう。」
「なるほど。」
全然なるほどではなかった。
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