第30話① 六大魔王降臨 前半
翌日。
ホテルびわ荘トレーニングルーム1。仮想戦モード。草原タイプ。
三人は汗だくになりながら最後の訓練を終えていた。雷太は肩へ槍を担ぐ。
「はぁ……。さすがに疲れたわ。」
姫乃も水弓を消しながら笑う。
「でも。昨日よりずっと撃てるようになったわ。」
タケルは神剣を鞘へ納めた。
「僕も。草薙と風脚。少しは使えるようになったかな。」
大型モニターが点灯する。
勇者本部。
月夜実たち四人が映し出された。
「皆さん。二日間の訓練、お疲れ様でした。」
三人は姿勢を正す。
思金子が静かに立ち上がる。
「本日の講評です。」
モニターへ三人の訓練映像が映し出される。
◇
「まず。タケさん。」
草薙が映る。
五十メートル先まで一直線に抉れた地面。
「範囲攻撃として十分な威力です。ですが魔力消費が大きすぎます。このままでは乱発できません。」
タケルが頷く。
「はい。」
「草薙剣。」
映像が切り替わる。風が一点へ収束する。
「まだ未完成です。ですが魔王級攻略の切り札になります。完成まで頑張ってください。」
タケルは神剣を見つめた。
「必ず完成させます。」
「期待しています。」
続いて風脚。木へ激突する映像。
依絵が吹き出す。
「これ三回見ても笑っちゃいます。」
雷太も腹を抱える。
「木の方がびっくりしとるわ!」
タケルは苦笑した。
「もうぶつからないから。これ本当に難しいんだからね?」
思金子も珍しく小さく笑った。
「制御だけです。完成すれば皆さんの中で、最も使い勝手がよくなります。空まで飛べちゃいます。」
「おお。それはいいね。」
目を大きく輝かせるタケル。
◇
「姫さん。」
映像。連射。
「九本。十分です。十本まであと一歩。」
姫乃は少し悔しそうだった。
「あと少しだったのに。」
「焦る必要はありません。実戦では九本でも十分脅威です。」
続いて水流矢。障害物を避けて命中する映像。
雷太が感心する。
「これ。俺もう避けられへんな。」
姫乃が得意そうに笑う。
「最初から狙ってるもの。」
思金子も頷いた。
「前衛は、これで射線を気にせず戦えます。」
最後は豪弓。巨大な水矢が岩山を砕く。
ドォォォン!
依絵が拍手する。
「すごーい!」
雷太。
「山、ごめんな。」
姫乃が笑う。
「勝手に謝らないでよ。」
◇
「雷太さん。」
最後に映像が切り替わる。雷脚。一瞬で移動する雷太。
「機動力、非常に優秀です。」
続いて落雷。二百メートル先の標的へ雷が落ちる。
そして雷槍。雷を纏った槍が一瞬で標的を貫いた。
思金子が静かに言う。
「雷太さん。」
「皆さんの中で、最大火力ではありません。ですが最も戦場を動かせる存在です。」
雷太は少し照れくさそうに笑う。
「そう言われると悪い気せぇへんな。」
月夜実が微笑む。
「皆さん。三日前とは別人です。勝家のおかげで強くなれました。」
三人は顔を見合わせた。苦い経験だった。しかしその経験があったからこそ、三人は新たな力を手に入れた。
誰もが次会う時は勝てる。そう信じ始めていた。
――この時は、まだ。
次回夜19時更新です。
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