第29話② 新たなる力 後半
「次は、姫さんです。」
思金子がモニターを操作する。
訓練場の上空へ、木の的が十個浮かび上がった。
「姫さんは火力だけではありません。弓の技術を極めてください。」
姫乃は水弓を構える。
「まずは?」
「連射です。とりあえずは一秒間に十本。それを目標にしてください。」
姫乃は苦笑した。
「十本?そんなに撃てるの?」
「今は無理です。ですが、できます。」
姫乃は弦を引く。一本。二本。三本。水矢が連続して放たれる。だが四本目で魔力が乱れた。
ボンッ。水が弾け飛ぶ。
雷太が笑う。
「連射は三本までかいな?」
「笑わない!」
姫乃は頬を膨らませる。
「もう一回!」
十分後。一秒に五本。
さらに十分後。一秒に七本。
依絵が嬉しそうに拍手する。
「すごい!もう七本です!」
思金子も頷いた。
「十分です。今日のところは七本で終了。連射、完成まであと一歩です。」
◇
「次。水流矢。」
訓練場の木々の向こうへ木人君1号が設置される。
「普通なら当たりません。ですが、水には流れる性質があります。」
姫乃は目を閉じた。
「曲がれ……。」
放たれた水矢が木を避ける。右へ。左へ。最後に大きく曲がり――
ドンッ!
木人君1号へ命中した。
「やった!」
姫乃が飛び跳ねる。依絵も大喜びする。
「成功です!」
思金子は静かに言った。
「これで前衛は、射線を気にする必要がありません。」
タケルが感心する。
「すごい。どこからでも撃てる。」
姫乃は嬉しそうに微笑んだ。
◇
「最後。豪弓です。」
思金子が説明する。
「溜めた時間だけ威力が上がります。五秒で約十倍です。」
姫乃はゆっくり弦を引く。一秒。二秒。三秒。水弓が巨大化していく。四秒。五秒。
「いっけぇーーー!」
巨大な水矢が岩山へ突き刺さる。
ドォォォン!!
岩肌が大きく砕け飛んだ。三人が言葉を失う。
雷太だけが笑う。
「勝家どころか、山までやっつけてしもたやんか!」
姫乃も思わず笑ってしまう。
◇
「最後は。雷太さんです。」
思金子が言う。
「雷霊術を。移動へ使う雷走ですが、これも雷脚にします。雷走の上位版です。」
「上位版やと、どうなるんや?」
「今雷走は直線的な動きしか出来ませんよね?それでは使い方が限定されてしまいます。ですから、体中に雷をまとい、雷脚として高速移動しつつ自由に方向転換できるようになってください。」
雷太は槍を構える。
「なんやそんなことくらい。任せとき!」
体中に雷を纏う。
バチバチバチッ!
一瞬。姿が消えた。
次の瞬間。
二十メートル先のタケルの後ろへ立っていた。
タケルが目を丸くする。
「速っ!」
依絵も興奮する。
「成功!」
「雷脚です!」
雷太は満足そうに笑う。
「これ、おもろいやん!まさか雷脚で自由に曲がることが出来るなんて思ってなかったわ。」
◇
「続いて。落雷。雷撃の上位版です。」
思金子の合図。
二百メートル先の木人君1号から木人君10号まで。雷太が槍を天へ掲げる。
「落雷!」
ドゴォォォン!!
雷鳴が響き。一筋の雷が木人へ直撃した。木人君1号は真っ黒になって倒れる。周りの木人君10号まで全て倒れる。
「最後。雷槍。これはやり投げですが、投げ終わった後手元に即戻ってきてくれます。姫さんほどではありませんが、極めれば1秒に2発くらいは撃てるようになるはずです。」
「マジか。すごいやん。」
雷太は槍へ雷を纏わせる。
「うおおおっ!」
全力で投げる。
ズガァァァン!!
槍は雷を引き連れ、一瞬で標的を貫いた。次の瞬間手元に槍が戻る。
依絵が歓声を上げる。
「とりあえず全部成功です!」
雷太は得意げに胸を張る。
「どうや!」
思金子は静かに微笑んだ。
「皆さん。昨日より、確実に強くなりました。後は練習あるのみです。この仮想戦モードには皆さんのレベルに合わせて強敵を用意していますから、対戦練習を繰り返してどんどん強くなってください。」
三人は互いの顔を見合わせる。
勝家にはまだ届かない。だが昨日の三人では、もうなかった。
勇者たちは、新たな力とともに、次の戦いへの第一歩を踏み出した。
3人のステータス。
タケル
HP600 RP4000 攻撃600 防御550 速度750 器用750
姫乃
HP550 RP3600 攻撃550 防御500 速度700 器用800
雷太
HP800 RP3000 攻撃600 防御600 速度600 器用500
次回はお昼12時更新です。
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