第29話① 新たなる力 前半
翌朝。
ホテルびわ荘トレーニングルーム1。仮想戦モード。草原タイプ。
広い草原の向こうには岩山が並び、訓練用に設置された木人君1号や岩壁がいくつも並んでいた。
三人はバトルスーツ姿で整列する。
ナビ子さんが持つモニターには勇者本部。思金子、月夜実、鴨依絵、菊理加奈の四人が映っていた。
「皆さん。」
思金子が静かに口を開く。
「昨日までで敵の分析は終わりました。今日からは。」
一呼吸置く。
「勝つための技の開発と強化をします。」
三人の表情が引き締まった。
◇
「まず。タケさんです。」
思金子がモニターを操作すると、神剣の立体映像が表示される。
「神剣は。斬るためだけの武器ではありません。」
タケルが神剣を見つめる。
「もっと力を引き出せるってことですか?」
「はい。神剣へ風霊力を流してください。」
タケルは目を閉じる。風が神剣へ集まり始めた。
「風を広げず、一点へ圧縮してみてください。」
神剣へ風が集まる。風が刃へまとわりついた。
「そのまま前へ振ってください。」
タケルは思い切り振り抜く。
「はぁっ!」
ゴォォォォォッ!!
巨大な風の斬撃が前方へ走る。
三十メートル先まで草がなぎ倒され、地面が一直線に抉れた。
雷太が目を丸くする。
「うおぉ!威力あがっとるやんけ。一面焼け野原……いや、刈り野原や!」
依絵が嬉しそうに拍手した。
「成功です!」
思金子も頷く。
「範囲攻撃。草薙でしたね。この技はまだまだ伸びます。今の要領で練習してみてください。」
タケルは驚いた顔で前方を見つめた。
「こんな威力が……。」
「ですが。」
思金子は続ける。
「本命はこちらです。」
モニターへ一点だけ光る映像が映る。
「草薙剣。今度は風を一点へ極限まで圧縮します。これは範囲攻撃ではありません。一点突破です。」
タケルは真剣な表情になる。
「勝家さんに使えば……。」
「ええ。きっとそれなりにダメージが入ることでしょう。」
思金子は首を横へ振る。
「勝家だけではありません。魔王級に通用する技です。結合を断ち切る。皆さんが道を切り開き。最後にタケさんが放つ。それが草薙剣です。」
タケルは神剣を強く握った。
「分かりました。必ずものにしてみせます。」
◇
「最後に。風脚です。風走の上位版だと思ってください。」
思金子が言った。
「まず風を。身体全体へまとわせます。」
「風走は足だけだったもんなあ。」
タケルは恐る恐る試す。その瞬間。
「うわっ!」
ドンッ!
ものすごい勢いで飛び出し、そのまま木へ激突した。
ゴンッ!
雷太が腹を抱えて笑う。
「速い!速いけど止まらへん!」
姫乃も肩を震わせる。
「タケル。木に勝負挑まなくても……。」
木の根元で倒れていたタケルがゆっくり起き上がる。
「痛たたた……。」
依絵も笑いをこらえながら言う。
「速度は合格です!制御は不合格です!」
思金子は静かにメモを取った。
「風脚。改良工夫の余地ありですが、方向性は正しいです。」
タケルは照れ笑いを浮かべながら立ち上がる。
「次はちゃんと止まってみせます。」
次回夜19時更新です。
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