第28話② 勝利と敗北 後半
思金子は映像を切り替えた。勝家の身体に重なるように、黒い人影が浮かび上がる。三人は息を呑んだ。
「第二。勝家と魔王級魔族との関係です。」
タケルが画面を見つめる。
「憑依……ですか?」
「いいえ。」
思金子は静かに首を横へ振った。
「昨日までは。私も憑依だと考えていました。ですが。三日間観察と分析をした結果、結論が変わりました。」
画面が拡大される。勝家と黒い魔族の魔力が完全に重なり、一つの存在として動いている。
「これは憑依ではありません。結合です。」
三人は顔を見合わせた。
「結合?」
姫乃が聞き返す。
「はい。魔王級魔族が、勝家という強い魂を器として利用することで、魔力の乏しい地球でも、完全な姿で顕現できています。」
タケルが小さく呟く。
「だから戦国武将だったんだ……。」
「その可能性が極めて高いでしょう。」
思金子は頷いた。
「魔王級魔族には、勝家ほどの強い魂。つまり強い器が必要です。だから織田信長にも、大魔王EXが結合できた。私はそう考えています。」
団欒室が静まり返る。
◇
思金子はさらに映像を切り替えた。勝家へ命中した姫乃の水矢。そして神剣を持つタケル。二つの映像が並ぶ。
「第三。魔王攻略法です。」
雷太が身を乗り出す。
「攻略法?」
「はい。」
「勝家との戦いで、もう一つ分かったことがあります。」
画面に「結合」の文字が表示される。
「魔王級魔族と、戦国武将との結合は、想像以上に深く進んでいます。もはや融合と言っても差し支えありません。」
姫乃が小さく息を呑む。
「そんなに……。」
「はい。」
「そのため、通常の神器では魔王級魔族と器を正しく分離できません。」
依絵が補足する。
「つまり雷ちゃんさんの槍でも、姫の水弓でも、HPをゼロにはできません。」
雷太が驚く。
「えっ?じゃあどうやって倒すん?」
思金子はゆっくりタケルを見る。
「唯一可能なのは、タケさんの神剣です。」
タケルは驚いて自分の神剣を見つめた。
「僕の……?」
「はい。タケさんの神剣だけが結合を正しく断ち切り魔王級魔族と器を分離できます。」
静かな沈黙。思金子は続ける。
「つまり今後、魔王級との戦いでは、皆さんが道を切り開き、最後にタケさんがとどめをさす。これが基本戦術になります。」
「魔王級の倒し方がわかったのは、一昨日今日の大きな収穫でした。なにしろ、今後彼らがこんなに観察させてくれるチャンスをくれるかわからないのですから。最悪、最後まで魔王級の倒し方がわからないまま、信長と戦わなければならなかったかもしれません。そうなれば、それはかなり絶望的な戦いになったかもしれません。」
「倒し方もわからずに、いくらやっても倒せないなんて、悪夢以外の何者でもないわね。」
雷太は笑ってタケルの肩を叩いた。
「タケ、責任重大やな。」
姫乃も微笑む。
「最後はタケに託せばいいわけね。」
タケルは少し困ったように笑った。
「みんなが繋いでくれるチャンスを僕が最後に掴んでみせればいいんだよね。」
月夜実は満足そうに頷いた。
「これで魔王軍と戦うための第一歩が見えてきました。」
思金子はモニターを消す。
「まだ勝家一人です。しかし、その一人から、私たちは多くを学びました。」
「一昨日戦わなかったからこそ、今日ここまで分析できたのです。ですから、情報戦では、我々の圧倒的な勝利です。」
三人は静かに頷いた。
「僕らは負けたわけではないんですね?」
「確かに武力では圧倒されました。でも、何度も言うように、生きてさえいれば、それは負けではないのです。勝つ方法を私と一緒に考えればよいだけです。そして情報戦での圧勝。どちらが勝ったのか一目瞭然でしょう?」
思金子は少し笑って見せた。
三人が勝家に圧倒されたのは、決して無駄ではなかった。
その苦い経験は、やがて魔王軍を打ち破るための、大きな一歩となるのだった。
次回はお昼12時更新です。
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