第27話① 柴田勝家の一撃 前半(★イラスト有)
翌々日。午後三時半。
ホテルびわ荘。
三人は学校を終え、団欒室で宿題を広げていた。雷太だけはソファへ寝転び、退屈そうに天井を眺めている。
「暇やなあ。今日は戦わへんかったから、身体が鈍るわ。」
姫乃は教科書から目を離さず答える。
「ちょっとくらい我慢しなさいよ。学校もきちんとやらないといけないんだから。」
「せやけどなあ……。」
その時だった。
三人の腕時計型情報端末が一斉に激しく鳴り響く。
ピーピーピーッ!
大型モニターが自動で起動する。
勇者本部。全員の表情が険しかった。依絵が慌ただしく報告する。
「緊急です!柴田勝家が移動を開始しました!」
地図へ映像が切り替わる。勝家は一昨日とは違う。真っ直ぐ市街地へ向かっていた。
菊理が続ける。
「進路予測。このままでは住宅地へ到達します。」
雷太が立ち上がる。
「一昨日と違う!」
思金子は静かに頷いた。
「一昨日こちらが出撃しなかったことで、信長は次の一手を打ってきました。」
タケルも理解した。
「放っておけない場所へ来た……。」
「そのとおりです。」
月夜実が静かに告げる。
「今回は、出撃します。ただし、威力偵察が本命です。こちらはなるべく能力を見せないようにしましょう。たぶん勝てないでしょうから、少しだけ戦って、余裕のある間に退却します。」
「はい!」
三人の返事が重なった。
◇
「モードチェンジ!」
三人の声が響く。
ピッ。
キュィィィィィン……
光が全身を包み、一瞬で戦闘スーツへ変わる。
モノアイ起動。
イヤホン型通信機接続。
勇者モード、完了。
依絵が笑顔で報告する。
「装備確認!通信正常!」
菊理も続ける。
「各神機、異常ありません。」
思金子が静かに作戦を告げる。
「相手は柴田勝家。真正面から力勝負をして勝てる相手ではありません。第二パターンを基本としてください。」
三人は頷いた。
「了解!」
◇
一方。
安土城高校。
勝家は信長の前へ立っていた。
「一昨日勇者は現れませなんだ。」
信長は扇子を閉じる。
「ならば今日は、向こうから来る。」
勝家は静かに頷く。
「だから住宅地なのですな?」
「そうじゃ。勇者は人を見捨てられぬ。」
ルシフェルが微笑む。
『なるほど。こちらも学習したということか。』
「戦とは学び合いじゃ。」
信長は楽しそうに笑った。
「行って参れ勝家。」
「はっ。」
勝家が魔馬に跨ると、魔馬が大きくいななき、勝家は静かに安土城高校を後にした。
◇
三十分後。
人気のない河川敷。住宅地まであと数百メートル。
勝家は3人の勇者らしき人物を目視した。3人はまっすぐこちらに向かって歩いてくる。
「来たな。」
タケル。姫乃。雷太。
なかなか元気の良さそうな3人に見える。勝家は魔馬に乗ったまま出迎える。
「ほう。今度は来たか。」
(ボソッ)「鑑定。」とタケル。
柴田勝家
HP100,000 MP50,000 攻撃30,000 防御20,000 速度15,000 器用10,000
(うん。勝てるわけないよね。どうやって撤退するかだね。)
雷太が槍を構える。
「待たせたな。」
勝家は静かに笑う。
「よい。では。始めようか。」
ゆっくりと魔馬から降りる。大槍を肩へ担ぎ。
ズドォン!
槍を地面へ突き立てた。地面が大きく揺れる。
タケルが叫ぶ。
「2番!」
雷太が三歩前へ。タケルがその横へ。姫乃は三歩後ろへ下がり、水弓を構える。
勇者本部。
思金子が静かに呟く。
「始まります。」
夕暮れの河川敷。
魔王軍最強の武将と三人の勇者がぶつかり合った。
次回夜19時更新です。
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