第3話① 大魔王校長、爆誕! 前半(★イラスト有)
四月十二日午前九時。
安土城高校体育館。
昨日まで入学式が行われるはずだった体育館には、数百体の魔物と魔族が集められていた。
……いや。
集められてはいた。整列はしていなかった。
ゴブリンは鬼ごっこ。
オークは腕相撲。
コボルトは椅子をかじっている。
スライムは何故かバスケットゴールに入ろうとしていた。
信長は壇上からその光景を見下ろす。
(……。)
頭の中でルシフェルが話しかける。
<どうした?>
(思っていた以上じゃ。)
<何がだ>。』
(アホさがじゃ。)
少し沈黙。
<否定できぬ。>
(世界征服。これでは無理じゃな。)
<昨日の我なら怒っておった。今日は反省しておる。>
(素直でよろしい。)
信長は満足そうに頷いた。
(では頼む。)
<何をだ。>
(いつものやつ。)
ルシフェルは深いため息をついた。
<毎回使う気か。>
(便利じゃからな。そのうちいらんようになるじゃろ。)
<……。!!!>
その瞬間。
体育館を圧倒的な殺気が包んだ。
ズンッ……
ゴブリンが固まる。
オークが直立不動になる。
スライムまで震えている。
一秒前まで大騒ぎだった体育館が、水を打ったように静まり返った。
(便利じゃのう。)
<毎朝は嫌だぞ。>
(朝礼だけでええ。)
<毎日ではないか。>
(校長とはそういうもんじゃ。)
その時、体育館の扉が開いた。
急きょ教頭へ任命された柴田勝家が、両手で大切そうに紙を抱えて入ってくる。
「校長。」
「えーと……。」
「この台本通り読み上げればよろしいので?」
「そうじゃ。」
「一文字も変えるな。」
「承知いたしました。」
勝家は紙を持ち直す。
姿勢を正す。
深呼吸。
「おほん。」「それでは、これより安土城魔王学園入学式を挙行いたします。」
一瞬静まり返る。
「えーーーーーー!」「ギャギャギャ!」「もおおおおおおお!」「ウウウウウウウ」
「学校ぁ?」「魔物なのに?」「入学式?」「勉強?」
再び体育館がざわついた。
(もう一回頼む。)
<校長という仕事は面倒だな。><……。!!!>
再び殺気。
シーーーーン。
勝家は満足そうに続きを読む。
「一同、ご起立ください。」
誰も立たない。
勝家は紙を見る。
もう一度読む。
「一同、ご起立ください。」
やっぱり誰も立たない。
勝家は信長を見た。
「校長。」「立ちません。」
「そこは臨機応変にせい!」
「台本には書いてございません。」
「少しは考えろ!」
「考えてもよろしいので?」
「よろしい!」
勝家は魔族へ向き直った。
「皆様。」「立てい!!!」
ゴブリンが全員立った。
「よし。」「他の者も!!!」
五分後。
ようやく全員が立った。
勝家は紙を確認する。
「続けます。」「それでは校長先生よりお言葉を頂戴いたします。」
信長は壇上へ出た。
「校長となった信長じゃ。」「よろしく頼む。」
魔族たちは拍手していいのか分からず、お互いの顔を見合わせている。
「昨日一日。そなたらに色々聞いて回った。その結果。」
信長は大きく頷いた。
「そなたら。ちーーっとも分からんことが、よう分かった。」
体育館が静まり返る。
ベリアルがおずおずと手を挙げた。
「校長、褒められておりますか。」
「全然じゃ。」
「やっぱり。」
信長は続ける。
「このままでは世界を制覇しても。まともに支配できん。そもそも戦線すら維持できん。幹部ですら戦略を理解しておらん。兵站も知らん。情報戦も知らん。交渉も知らん。契約も読めん。これでは勝てん。」
少し間を置く。
「そして。ルシフェルに至っては、単なる思いつきじゃ。」
体育館が凍った。魔族たちは全員ゆっくりと校長を見た。もちろん、外から見れば校長は一人である。頭の中。ルシフェル。
(ボソッ)「マジかよ。ルシフェル様、自信たっぷりに『地球に逆転生を仕掛ける!』とか言うから、もっとちゃんと考えてると思ったのに」「シーーーーーーー」
<……。>
さらに沈黙。
<……。>
<否定できぬ。>
信長は満足そうに頷いた。
(反省したならよろしい。)
<しておる。が、皆の前で言わんでもよかろう。>
(教育じゃ。)
<厳しい校長だ。>
信長は黒板へ大きく書いた。
**魔王学園**
「ここでは。能力ごとにクラスを分ける。人間語。礼儀。読み書き。戦術。戦略。人間社会。」
「支配者として必要なことを全部学ぶ。」
続いてもう一つ。
**魔王本部**
「地下に作る。ここは軍議を行う場所じゃ。学校で学んだことを実際の戦へ生かす。」
「学校は頭を鍛える。本部は戦をする。役目が違う。」
魔族たちは真剣に聞いていた。
信長は満足そうに頷く。
「教室分けは後で掲示する。しっかり勉強するように。」
勝家は紙を一枚めくった。
「続いて。入学生式辞。入学生代表、ミノタウロス君前へ。」
大きなミノタウロスが緊張しながら壇上へ歩き出した――。
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