第26話① 初任務報告 前半
夕暮れ。
ホテルびわ荘団欒室。
三人が戻ると、腕時計型情報端末が軽く振動した。
ピッ。
『初任務終了。作戦会議を開始します。』
大型モニターに勇者本部が映し出される。月夜実。思金子。鴨依絵。菊理加奈。
いつもの四人が待っていた。
「皆さん。」
月夜実が柔らかく微笑む。
「初任務、お疲れ様でした。」
三人はようやく肩の力を抜いた。
「ありがとうございます。」
タケルが代表して頭を下げる。
依絵は嬉しそうに拍手する。
「初任務成功でーす!おめでとうございます!」
雷太が思わずガッツポーズをする。
「よっしゃ!初勝利や!」
その隣で思金子が静かに立ち上がった。
「それでは。講評を始めます。」
雷太の笑顔が一瞬で消える。
「げっ……。」
姫乃が小さく笑った。
「先生に呼び出された生徒みたい。」
◇
思金子が戦闘映像を映し出す。林での戦闘が立体映像で再生された。
「まず良かった点です。」
映像が止まる。タケルがゴブリンの動きを観察している場面。
「タケさん。敵の突出を見抜きました。第一パターンの判断。お見事でした。」
タケルは少し照れくさそうに笑う。
「ありがとうございます。」
次の映像。姫乃の水矢。
「姫さん。初実戦、初射撃、初命中。非常に落ち着いていました。」
姫乃もほっと胸を撫で下ろした。
「よかったぁ。外したらどうしようって、ずっと思ってました。」
「十分でした。」
思金子は頷く。さらに映像が切り替わる。雷太が二体を足止めしている場面。
「雷太さん。壁役として。二体を引き付けました。十分役目を果たしています。」
雷太は胸を張る。
「やろ?俺、頑張ったやろ?」
依絵も笑顔で頷いた。
「はい!すごく頼もしかったです。」
雷太は満足そうに腕を組んだ。
◇
しかし、映像が止まる。ゴブリンが雷太の横をすり抜ける場面だった。部屋の空気が少しだけ変わる。
思金子は静かに言う。
「改善点です。」
雷太が姿勢を正す。
「はい。」
「壁役は敵を倒す役ではありません。敵を止める役です。」
映像には雷太が一瞬前へ出過ぎた場面。その横をゴブリンが抜けていく。
「この一歩。不要でした。ここで前へ出たため、姫さんが危険にさらされました。」
雷太は映像を見つめたまま黙っていた。
「……。」
少しして、頭を下げる。
「すまん。もっと止めることだけ考える。」
思金子は静かに頷いた。
「初めてにしては、よくできていたと思いますよ。次はもっと良くなります。」
「次に、姫乃さん。慌てなくて良いですが、相手の動きが止まった時にうまく矢を放てるように練習していきましょう」
「それと今回は前衛の2人とも矢の射線に入らないようにうまく動けていましたが、これから敵が増えたり強くなった時に射線に入らないことを忘れないようにしてくださいね。」
◇
タケルが手を挙げた。
「思さん。質問があります。」
「どうぞ。」
「今日は。第一パターンと第三パターンでした。他の作戦の時もあるんですか?」
思金子は少しだけ微笑んだ。
「あります。ですが、まだ皆さんには早いでしょう。」
三人は思わず身を乗り出す。
「今後、修行を重ね、新しい戦術を少しずつ習得していきます。」
依絵が口元を押さえて笑う。
「楽しみにしててくださいね。」
雷太は首を傾げた。
「なんや、嫌な予感しかしぃひんな。」
菊理も苦笑する。
「その予感、案外当たるかもしれません。」
団欒室に笑い声が広がった。
しかし、その時だった。三人の腕時計型情報端末が同時に激しく鳴り響いた。
ピーピーピーッ!
今まで聞いたことのない警報音だった。月夜実の表情が一変する。
「緊急事態です。」
部屋の空気が、一瞬で張り詰めた。
次回夜19時更新です。
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