第25話① 初陣 前半
夕暮れの林。
三人は静かに木々の間を進んでいた。右目のモノアイ型パッドには三つの赤い光点。少しずつこちらへ近付いてくる。
『こちら勇者本部。』
依絵の明るい声が通信機から響く。
『通信良好!敵三体。距離二百二十五メートル。近くに他の魔物いません。』
菊理が続ける。
『一般人の避難完了。周囲に民間人はいません。戦闘可能です。』
三人は小さく頷いた。
その時。
思金子が静かに口を開く。
『第一パターンが基本ですが、三体なので臨機応変にお願いします。開始してください。』
それだけだった。
三人は同時に前を見据える。
ちなみに、フォーメーションには
第一 たこ殴り
第二 前衛二人、姫乃弓矢
第三 雷太盾、タケル護衛、姫乃弓矢
第四 二人護衛、姫乃弓矢
があり、敵の状況、数などに応じて使い分ける。
◇
ガサッ。
茂みが大きく揺れた。
一体。二体。三体。緑色のゴブリンが姿を現す。棍棒を振り回しながら奇声を上げる。
「ギギャアア!」
雷太が槍を構えた。
「よっしゃ!正面から行くで!」
飛び出そうとした、その時だった。
「待って。」
タケルが小さく声を掛ける。
「左の一体。他の二体より2歩突出してる。」
二人もよく見る。確かに三体同時に走っているように見えて、左の一体だけ少しだけ先行していた。
「今なら。一体だけ囲める。」
「1番!」
一瞬の沈黙。そして思金子の声が通信機から返ってきた。
『その判断で結構です。』
『よし、1番続行。』
依絵も興奮気味に叫ぶ。
『敵一体孤立!今です!』
「行くよ!」
タケルが飛び出した。
「おう!」
雷太も槍を構えて続く。姫乃も薙刀を構え、一歩遅れて走る。三人は孤立した一体を一気に取り囲んだ。
ガキィン!タケルの剣。
ドゴッ!雷太の槍。
バシィッ!姫乃の薙刀。
三方向から同時攻撃。ゴブリンは吹き飛ばされ、地面を何度も転がった。
『HP91%減少!』
依絵が報告する。
「トドメや!」
『HP 0。連携成功です!』
ゴブリンは倒れたまま動かない。傷はない。血も流れていない。しかしモノアイにはHP0と表示されている。と同時にゴブリンが粒子となってどこかへ飛んでいく。
「本当に傷付いてない。」
姫乃が驚く。
「でもちゃんと効いてる。」
タケルも頷いた。
「思さんの説明どおりだ。」
◇
三人は一度距離を取る。雷太が感心したようにタケルを見る。
「お前、敵の動き、よう見とるなあ。」
タケルは照れくさそうに笑った。
「たまたまだよ。」
姫乃は首を横に振る。
「たまたまで、あんな細かい違いは分からないわよ。」
その時だった。
残る二体のゴブリンが左右へ散開する。
『敵分散!』
依絵が叫ぶ。
『左右へ展開!』
菊理も続ける。
『第三パターンを推奨します。』
思金子の短い指示が飛んだ。
『3番!』
三人は同時に動き出した。
次回夜19時更新です。
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