第24話① 初任務・ゴブリン討伐 前半
翌日の放課後。
膳所城高校。
ホテルびわ荘へ戻った三人は制服から私服へ着替え、いつもの団欒室へ集まっていた。腕時計型情報端末が同時に振動する。
ピッ。
**『緊急作戦会議』**
三人は顔を見合わせた。
「来たね。」
タケルが小さく呟く。大型モニターが自動で起動する。
勇者本部。月夜実。思金子。鴨依絵。菊理加奈。猿田彦助。いつもの顔ぶれが映し出された。
「皆さん。」
月夜実が静かに口を開く。
「本日。初任務を開始します。」
三人の表情が引き締まる。
思金子が前へ出た。
「その前に。一つ重要な確認があります。」
モニターが切り替わる。一体のゴブリンが立体映像で映し出された。さらに体の横へ二本のゲージが表示される。
**HP** **MP**のバー。
その下に、攻撃 防御 速度 器用の数字が並んでいる。
姫乃が首を傾げた。
「まるでゲームみたいよね。」
「その認識で構いません。」
思金子は頷いた。
「皆さんは現代日本で育ちました。人を傷付けること、まして命を奪うことには抵抗があると思います。」
部屋が静かになる。タケルがゆっくり口を開いた。
「……あります。」
姫乃も頷く。
「私も。」
雷太も真剣な表情になった。
「俺もや。」
思金子は少しだけ表情を和らげた。
「安心してください。勇者武器は、相手の肉体へ直接損傷を与えません。」
三人は顔を見合わせた。
「え?」
タケルが驚く。
「切っても。突いても。撃っても。相手のHPを減少させるだけです。」
立体映像が切り替わる。剣で斬られたゴブリン。しかし血は一滴も流れない。傷も付かない。代わりにHPの数字だけが減っていく。
姫乃が目を丸くした。
「本当に傷付いてない。」
「はい。」
「HPが0になると活動を停止し意識を失います。ゴブリンの肉体は召喚者の元へ送還されます。」
画面の中でゴブリンの身体が黒い粒子となって空へ吸い込まれていく。
「召喚者。つまり真魔王EXの元です。そこで睡眠状態になります。」
雷太が腕を組む。
「ほな、また復活するん?」
思金子は首を横へ振った。
「いいえ。送還された時点で、睡眠の呪いが掛かります。異世界へ帰還するか神級の存在が解呪しない限り、二度と目を覚ましません。」
タケルは静かに整理する。
「つまり倒しても死なない。傷付かない。でも二度と戦えなくなる。」
「そのとおりです。」
思金子は頷いた。
「勇者とは、命を奪う者ではありません。人々を守る者です。皆さんは、安心して戦ってください。」
三人の表情から、少しだけ緊張が消えた。
姫乃がほっと息を吐く。
「良かった……。正直怖かった。」
タケルも小さく笑う。
「僕も。もし本当に命を奪うなら、剣を振れる自信はなかった。」
雷太も照れくさそうに頭をかく。
「俺も。勢いで行けると思っとったけど、そう言われると、ちょっとビビっとったわ。」
依絵が画面の端から笑顔で顔を出す。
「だから最初に説明したかったんです。皆さんには、迷いなく人を守ってほしいから。」
月夜実も静かに頷いた。
「なお、皆さんもモノアイにHPRP他のパラメーターが表示されていますね。気をつけてほしいのは、皆さんが攻撃されるとHPが減っていきHP 0になると皆さんを守っている加護のバリアが壊れます。その後の攻撃は生身の体を傷つけ、最悪死にます。なのでHP表示が赤くなる10%以下の時は迷わず撤退してください。いいですね?」
「こっちは死ぬんかい。こりゃ気いつけて戦わんとな。」
「そうだね。ナビ子さんがサラッと言ってたことが今やっと分かったよ。言われた通り死なないことを最優先にしよう。」
「ええ、それしかないわね。」
「それでは改めて、初任務を開始します。」
次回夜19時更新です。
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