第23話② 初トレと初登校 後半
二年二組。
チャイムが鳴る。担任が教壇へ立った。
「今日は転校生を紹介する。」
教室がざわつく。
「入ってきてください。」
ガラッ。
雷太が元気よく教室へ入ってきた。教室を見渡す。
(タケルは……おらんやんけ!)
小さく舌打ちした。
「ちっ。」
思わず漏れた一言に、教室中が静まり返る。担任が慌てて咳払いをする。
「え、えー、それでは自己紹介を。」
雷太は元気よく一歩前へ出た。
「武見雷太や!趣味は筋トレ!ジョギング!武道!そして!勝負や!」
教室が静まり返る。誰一人拍手をしない。全員が「危ない人来たーーーー!」と言う顔で雷太と目を合わせようとしない。先生も目を合わせてくれない。
雷太も、その空気に気付いた。
(あれ、引かれてる?)
しばらく考えた後、にかっと笑う。
「大丈夫や!安心してや!」
クラスメイトが少しだけほっとしたのも束の間。
「このクラスに勝負したくなるほど強い奴はおらん。」
シーーーーーン。
今度はさっき以上に静まり返った。みんなドン引き。女子は顔を引きつらせる。男子は目を逸らす。担任は天井を見上げた。
(今年は一年も体が持たないかもしれない……。)
◇
休み時間。
教室中の生徒が、雷太を避けるように席を立っていく。目を合わせない。近寄らない。話しかけない。
「なんや?みんな忙しいんか?」
雷太は首を傾げた。
その時。
隣の席の男子生徒が、そっと教室を出ようとした。雷太は素早く腕をつかむ。
「よう!あんさん、モブ田言うんか。よろしくな!」
「ひぃっ!」
逃げようとするが、雷太の腕はびくともしない。完全に、まな板の上の鯉だった。
「早速で悪いんやけど、この学校で強そうな奴は誰や?」
「え?いや、その……。よ、よく分からないけど……。」
「隣のクラスの大和なんかどうなんや?強そうやろ?」
「え?あ、生徒会長?会長はそんな野蛮なこと、ひいい、ごめんなさい!と、とっても紳士的な人だと思うけど。頭もいいし。よく潰れかけのバスケ部とかサッカー部に助っ人頼まれてるけど、断れないみたい。いい人だよ。」
「そやなあ。タケルはええやっちゃ。でも、あっちも強いやろ?」
「え?あっち?あっちって、あっちのあっち?えーと、ほら、うちの学校は進学校だし、腕っぷしを自慢してる人なんて、ひいいごめんなさいごめんなさい!」
「そうか。やっぱりタケルしかおらんか。よう分かったわ。ありがとうな。」
雷太が手を離す。
「し、失礼します!」
モブ田は全力で教室を飛び出していった。
雷太は腕を組む。
「まあ。念のため。校内ぶらっと見て回るか。」
◇
昼休み。
二年一組。
タケルが席を立とうとしたところへ。
「よう!」
聞き慣れた声が廊下から響く。
「タケル!」
「あ、雷太。どう?この学校、ちょっとは慣れた?」
「まあ、見て回ったけど、今のところおもろそうな獲物……。」
一瞬止まる。
「……やなくて、生徒はおらんな。」
(獲物って言った!)
一組の生徒たちが一斉に心の中でツッコむ。
タケルは苦笑した。
「そうだ。一緒にご飯食べようよ。学食に行くついでに校内案内するよ。」
雷太は満面の笑みになる。
「タケルー!お前ほんまええやっちゃなあ!」
そう言って肩を組む。
教室の後ろ。
その様子を見ていた姫乃は、小さく頬を膨らませた。
(もう。また男二人でくっついてる。離れなさいよ、もう!)
しかし教室ではまだ清楚で凛とした転校生を演じている。なので小声で一人突っ込んだ。小さくため息をつきながら、笑顔を崩さず二人を見送るのだった。
「市島さん、何か言った?」と周りのクラスメイト。
「ううん、独り言。」
「あ、そう。早く学食行きましょ。案内してあげる。」
「あ、行く行く、ありがとう」
早速仲良くなったクラスメイトたちと学食へ向かうのだった。
次回はお昼12時更新です。
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