第23話① 初トレと初登校 前半
会議後。
3人はトレーニングルームに来ていた。トレーニングルームに入ると、受付にAIロボットのナビ子さんが配置されていた。ロボットといっても言われなければ、人間にしか見えない完璧な姿。髪は後ろでまとめ上げられ、CAかと見まがうばかりの姿である。
「いらっしゃいませ。お待ちしておりました。勇者のお三方ですね?私はトレーニングルームの管理を任されております、ナビ子と申します。よろしくお願いいたします。」
「よろしくお願いします。」とタケル。
「それではトレーニングルームのご利用方法をご説明いたします。トレーニングルームの利用方法としては、1自主トレモード、2仮想戦モード、3模擬戦モードがございます。」
「1自主トレモードは、トレーニングジムと同様、器具を利用しながら主に攻撃力やHPをあげることを目指します。」
「2仮想戦モードは、今まで遭遇した敵や仮想の敵を作り上げ、その対戦を通じて全てのパラメーター及び実戦の勘や経験を積むことを目指します。」
「3模擬戦モードは勇者様同士やその他の方々との模擬戦を行うことが出来るモードです。」
「HPシステムの説明はすでにお済みでしょうか?敵がHP0となると睡眠の呪いがかかり、再起不能になることはご存じですね?自分がHP0になると、そこで自分を守っていたバリアが壊れ、それ以降、生身の体で敵の攻撃を受けることになります。」
「ん?今情報量多いこと言わんかったか?」
「模擬戦モードはこの機能を利用し、HPが10%を切ると強制的に戦闘終了となります。トレーニングルームを出れば、HPは元通りですので、ご安心ください。」
「トレーニングルームは全部で6つ、それぞれとなりにトイレとバスルームが用意してありますので、ご利用ください。飲み物などご休憩はトレーニングルームを出ればすぐに団らん室兼ラウンジですので、そちらでご休憩ください。」
「では、タケル様、本日はどのモードでのご利用をご希望ですか?」
「じゃ、じゃあ仮想戦モー」「タケルー、ちょうどええやんけ、模擬戦モード行ってみようや」
「ええーー?仮想戦モード面白そうなのになあ。まあいいや、約束だしね。でも一回だけだよ?」
「分かった分かった。俺も仮想戦モードには興味あるさかい、模擬戦終わったら一緒に仮想戦やってみようや。」
「まーた男2人でくっついちゃって。レディほったらかしで何なの?全く!」
「はて?レディなんて、どっかにおったかいなあ?」
「ムキイイイイイイ」
「ガルウウウウウウ」
「もう、すぐにケンカするんだから!さあ、早くやろう!」
トレーニングルーム1。模擬戦モード。サッカー場タイプ。タケル対雷太。
「うわあ。広いね。なんかサッカー場くらいあるよ?どうなってんの?」
「今はサッカー場タイプに設定されています。他にも体育館タイプ、市街地タイプ、草原タイプ、砂漠タイプ、沼地タイプ、ジャングルタイプ等など、お好きなタイプに設定可能ですよ。」
「まあ、今はこれでええやろ。で、ここで本気で戦っても、お互い全くケガせえへんのやな?」
「そのとおりです。ただしHPが10%以下になると、強制的に模擬戦終了となります。」
「よっしゃ。ほな思いっきりやれるで。タケル、手え抜いたらあかんで?」
「雷太相手に手を抜いたりしないよ。久しぶりに本気で行かせてもらうよ?」
「お?タケルもやる気やな。ほなナビ子はん、開始の合図頼むわ。」
「分かりました。それでは、はじめ!」
いきなりタケルの姿が消える。と思ったら、雷太の後ろに現れ、背後を突き刺そうとしたところで雷太が防ぐ。
カキーン。そのまま横にないでタケルをなぎ払う。雷太が雷走を使う。突然タケルの目の前に雷太。石突きでタケルの顎を狙う。が、間一髪タケルがバック転をしてかわす。タケルも風走を使い縦横無尽の素早い走りを見せる。
やはり早さと移動の巧みさではタケルの方が上手。雷太はタケルの自由ですばやい動きについて行けない。
その時、雷太が雷纏を発動。全身を雷で覆い、攻撃した側へのカウンター攻撃を与える。タケルはこれを見て草薙を発動。前方一〇メートル四方を焼き払ってしまう。これが雷太にヒット。
「ぐああああ、って痛くない?」。HPシステムのため痛みがない。雷太はすぐさまカウンターに雷纏のまま雷走。タケルを吹っ飛ばす。
「うわああああ、ってホントに痛くないんだね。」風走で距離を取りつつ、立ち止まらなくなったタケル。雷走で突撃できない雷太。お互い遠距離攻撃に出る。
「雷撃!」「なんたら拳!」終始動き回ったぶん、タケルの回避が多く、ぎりぎりでタケルの勝利となった。
「はあ。また負けたかあ。タケルにはかなわんなあ。」
「いや、ぎりぎりだったよ。雷攻撃早すぎて避けられないや。」
「よう言うわ。風の動きであんなに目まぐるしい動き、よう出来るわ。」
「まあ、秘密の特訓してきたからね。あ、すっごいパラメーター上がってる。」
タケル
HP300 RP2000 攻撃300 防御250 速度350 器用350
雷太
HP400 RP1500 攻撃300 防御300 速度300 器用250
「ほんまチートやな。上がりすぎなんちゃう?」
「いいえ、やはり実戦に勝る訓練はありません。お二人とも今の模擬戦で確実に強くなってらっしゃいますよ。」
「うん。いい試合だったわね。じゃあ、タケル、次は私とかな?」
「え?」「え?」
「あ、いや、今の模擬戦めちゃくちゃ疲れたから、今連戦すると、たぶん、その、」
「私はいいわよ?準備万端よ?さあ、早くやろ?」
「ちょ、雷太、助けてよおおおおおおおおお」
「南無南無」
そのあと、姫乃にこてんぱんにやられたタケルだった。
◇
翌朝。
瑠璃温泉 ホテルびわ荘団欒室。
朝食を終えた三人は、いつものようにソファへ腰掛けていた。
窓の外には穏やかな琵琶湖。
ジョギングを終えた雷太は朝風呂まで済ませ、上機嫌だった。
「やっぱ朝風呂は最高やな!」
「一日に三回も温泉入る人、普通いないわよ。」
姫乃が苦笑する。
「朝走って。朝風呂入って。朝ご飯三杯食べて。午前中だけで一日分動いてるじゃない。」
「健康やろ?」
「健康すぎるのよ。」
タケルは笑いながらお茶を飲んだ。
「でも確かにここの温泉、気持ちいいよね。」
その時。
三人の腕時計型情報端末が同時に震えた。
ピッ。
**『団欒室 八時 集合』**
「もう集まってるけどね。」
タケルが苦笑する。大型モニターが自動で起動した。画面には勇者本部。
月夜実、思金子、鴨依絵、菊理加奈、猿田彦助が映し出される。
「皆さんおはようございます。」
「おはようございます!」
三人も元気よく挨拶した。
依絵が画面の端から勢いよく手を振る。
「今日も元気そうですねー!」
「雷ちゃんなんて朝だけで二回温泉入ってますよ!」
「ちょっ!なんで知っとるん!」
依絵は得意そうに腕時計を指差した。
「健康データです!全部見えてます!」
雷太は青ざめる。
「うそやろ……。」
姫乃が吹き出した。
「ちゃんと監視されてるのね。」
「健康管理です。」
思金子が静かに訂正する。
「監視ではありません。健康管理です。」
「同じやん!」
雷太のツッコミで団欒室が笑いに包まれた。
◇
思金子が資料を開く。
「それでは本日の予定を説明します。」
モニターが切り替わる。
**本日の予定**
一、転校手続き
二、登下校確認
三、初任務
「姫さん。雷ちゃん。本日付で膳所城高校へ転校していただきます。」
タケルが首を傾げた。
「僕は?」
「タケさんは在籍中です。」
「ですよね。」
雷太が苦笑する。
「俺らだけか。」
姫乃も静かに頷いた。昨日まで通っていた学校。クラスメイト。先生。部活動。何気ない毎日。それが終わるのだと思うと、二人は少しだけ寂しくなった。
月夜実が優しく続ける。
「表向きは国の特別教育プログラムへの参加、という扱いになります。学校側への手続きは全て終了しています。」
姫乃は小さく息を吐いた。
「……まあでも、またタケルと同じ学校に通うのも悪くないわね。」
雷太はニヤリと笑う。
「おいおい。顔がニヤついてるで?ほんまは嬉しいくせに。」
姫乃も負けじと笑い返す。
「そう言う雷ちゃんもニヤついてるわよ?」
「雷ちゃん言うな!」
「あらあ。コードネームらしいから仕方ないのよ。」
「分かった?」
「雷ちゃん。」
「ほんま腹立つわあー!」
依絵は画面の向こうで笑い転げていた。
「雷ちゃん。定着しそうですねぇ。」
「依絵さんまで!」
◇
午前八時半。
三人は神具送迎車で膳所城高校へ到着した。校長室で必要書類へ署名を済ませる。
「生徒会長のタケル君の仲間ということですね。三人とも、一年よろしくね。」
校長が笑う。
「はい。引き続きよろしくお願いします。」
「よろしくお願いします。」
姫乃と雷太も頭を下げた。
◇
チャイムが鳴る。
二年一組。
担任が教壇へ立った。
「今日は転校生を紹介する。」
教室がざわつく。
「入ってきてください。」
ガラッ。
姫乃が教室へ入る。そして、一番最初にタケルを見つけた。
(やった!同じクラス!)
後ろ手にしてみんなに見えないように小さくガッツポーズ。しかし表情は変わらない。清楚で凛とした笑顔を浮かべ、一礼する。
「初めまして。市島姫乃です。趣味は百人一首です。皆さんよろしくお願いします。」
教室がどよめいた。
「かわいい……。」「美人じゃん。」「すげぇ。」
質問攻めが始まる。姫乃は終始にこやかに受け答えを続ける。その様子を見ながら。タケルだけが静かに頭を抱えていた。
(猫かぶってるよおおおおお……。)
次回夜19時更新です。
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