第22話② 初作戦会議 後半
団欒室。
大型モニターには滋賀県全域の地図が映し出されていた。思金子は静かに三人を見渡す。
「さて、それでは初任務の説明を行います。」
モニターが切り替わる。赤い印が数か所点滅して消えた。
「今赤く点滅して消えましたね。以前確認された野良魔物です。今現在は野良魔物は発見されておりません。」
雷太が身を乗り出す。
「発見次第出動っちゅうわけやな?」
思金子は頷く。
「はい。ですが皆さんの最初の任務は、敵を倒すことではありません。」
三人は顔を見合わせた。姫乃が尋ねる。
「え?違うんですか?」
「はい。最優先は、三人で連携して帰ってくることです。」
雷太が首を傾げる。
「倒せるなら倒した方がええやん。」
「いいえ。」
思金子は即座に否定した。
「敵を倒しても、皆さんが帰れなければ失敗です。」
「勇者本部の考え方は一つ。生きて帰ること。これが最優先です。」
団欒室が静まり返る。
◇
思金子は画面を切り替えた。
『勇者行動原則』
一、単独行動禁止。
二、必ず三人で行動。
三、迷ったら本部へ相談。
四、無理をしない。
五、生きて帰る。
依絵が画面の横から笑顔で顔を出した。
「通信は私たちが見てます。困ったらすぐ呼んでくださいねぇ?」
菊理も優しく頷く。
「どんな小さなことでも構いません。遠慮しないでください。」
雷太が笑う。
「そこまで面倒見てもらえるん?」
依絵は胸を張る。
「もちろんです!皆さんだけで戦わせません!」
◇
思金子は再び説明を続けた。
「野良魔物と遭遇した場合。基本は討伐。ただし危険と判断した場合は撤退してください。」
タケルが尋ねる。
「撤退してもいいんですか。」
「はい。勇者は代わりがいません。無理をして失う方が人類にとって損失です。」
姫乃も真剣な表情で頷いた。
「分かりました。」
◇
思金子は最後にモニターを切り替える。画面いっぱいに一匹のゴブリンが映った。
「これは先日の野良ゴブリンです。そして初任務の相手です。野良ゴブリンの討伐。目的は戦闘訓練。連携確認。通信確認。装備確認。見つけ次第出動していただくことになります。以上です。」
雷太は拳を握った。
「待ってました!暴れたる!」
思金子は少しだけ微笑む。
「雷太さん。」
「はい?」
「暴れるのではありません。連携です。」
「あ……。」
姫乃が笑う。
「最初から怒られてる。」
「うるさいわ。」
◇
月夜実が画面の中央へ歩み出た。
「皆さん。昨日まで皆さんは普通の高校生でした。今日からは勇者です。だからと言って全部を一人で背負う必要はありません。勇者本部は皆さんを支えるためにあります。困った時は必ず私たちを頼ってください。」
三人は静かに頷いた。
◇
画面の端から依絵がひょこっと顔を出す。
「応援してます!」
反対側から菊理も手を振る。
「頑張ってくださいね!」
その後ろから猿田さんまで顔を出した。
「帰ってきたら温泉と晩ご飯が待ってますよー!」
雷太は満面の笑みになった。
「よっしゃ!絶対帰ってくる!」
タケルも笑う。
「帰る場所があるっていいね。」
姫乃も静かに微笑んだ。
「うん。だから頑張れる。」
モニターがゆっくり暗くなる。団欒室には静かな空気が流れていた。初めての任務まであとわずか。
三人はそれぞれの決意を胸に、新しい一歩を踏み出そうとしていた。
「本日の作戦会議は以上です。このままゴブリンが現れなければ今日はトレーニングしながら過ごしてください。トレーニングの後は必ず温泉につかってくださいね。」
次回はお昼12時更新です。
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