第21話① 勇者たちの新しい家 前半
勇者本部を後にした三人は、猿田さんの運転する送迎車へ乗り込んだ。
「それでは新しい住まいへご案内します。」
車は静かに発進する。窓の外には、穏やかな琵琶湖が広がっていた。
「めっちゃ景色ええなぁ。」
雷太は窓へ張り付く。
「この辺よう走りに来るん?」
猿田さんが笑う。
「ホテルの前にジョギングコースがありますよ。しかも結界の中ですから安心して走れます。」
「マジで!」
雷太の目が輝いた。
「毎朝走れるやん!」
タケルは湖を眺めながら呟く。
「なんだか修学旅行みたいだね。」
姫乃も微笑む。
「そうね。こんな状況じゃなかったら旅行って思えたかも。」
◇
二十分ほど走ると、一軒のホテルが見えてきた。湖畔に建つ、大きな温泉ホテル。
正面には、
**瑠璃温泉 ホテルびわ荘**
と書かれた看板が掲げられている。
「今日からこちらが皆さんのお住まいになります。」
三人は同時にホテルを見上げた。
「でっか……。」
雷太が思わず声を漏らす。ホテルの目の前には琵琶湖。その間には整備されたジョギングコース。遠くには、びわ湖大花火大会の打ち上げ場所も見えている。
「ここ花火めっちゃ近いやん!」
猿田さんが頷く。
「真正面です。毎年特等席ですよ。」
「うおお!最高や!」
◇
三人はフロントで受付を済ませる。名前を書くだけで、手続きは終わった。
「お荷物はお預かりします。」
ホテルスタッフが手際よく荷物を運んでいく。タケルは少し不思議そうだった。
「チェックインこれだけ?」
猿田さんは笑う。
「長期滞在のお客様ですから。細かい手続きは済んでおります。」
「そうなんだ。」
◇
エレベーターで最上階へ。廊下には個室用の扉がいくつかと、エグゼグティ部ラウンジ兼団らん室用の大きい扉。
「こちらです。」
一人一部屋。しかも全てスイートルームだった。
「えっ?一人で?」
姫乃が目を丸くする。
雷太は自分の部屋へ飛び込む。
「広っ!これ一人で使うん!?」
タケルも部屋を見回した。
大きなベッド。リビング。デスク。そして、窓いっぱいに広がる琵琶湖。
「……。すごい。」
姫乃はカーテンを開ける。
「景色まで。最高じゃない。」
◇
三人は荷物を置き、一息つく。しばらくすると団欒室へ自然と集まってきた。
大きなソファ。テレビ。冷蔵庫。お菓子。果物。飲み物。そして、大きな窓の向こうには琵琶湖。雷太はソファへ勢いよく飛び込んだ。
「ここ最高やん。」
タケルも笑う。
「うん。居心地いいね。」
姫乃はソファへ腰掛けながら、小さく伸びをした。
「なんだか落ち着くわね。」
外では琵琶湖の波が静かに揺れていた。勇者となった三人。その新しい生活が、ここから始まろうとしていた。
次回夜19時更新です。
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