第19話② 勇者招集 後半
午前九時過ぎ。
草津市。大和家。
ピンポーン。
インターホンが鳴る。
「はーい。」
タケルが玄関を開けると、黒いワンボックスカーの前に月夜実が立っていた。
「大和タケルさんですね。」
「はい。」
「勇者本部の月夜です。本日、お迎えに参りました。」
タケルは一瞬だけ驚いたが、すぐに微笑んだ。
「よろしくお願いします。」
母が玄関まで見送りに出てくる。
「息子をよろしくお願いいたします。」
月夜実は深く一礼した。
「責任を持ってお預かりします。」
タケルは軽く手を振った。
「行ってきます。」
「行ってらっしゃい。」
黒いワンボックスカーは静かに走り出した。
◇
同じ頃。
彦根。市島家。
ピンポーン。
玄関を開けると、鴨依絵が笑顔で立っていた。
「市島姫乃さんですね。」
「はい。」
「勇者本部の猿田です。お迎えに参りました。」
姫乃は少し緊張しながらも頭を下げる。
「よろしくお願いします。」
母が優しく肩へ手を置く。
「気を付けてね。」
「うん。行ってきます。」
猿田は車の後部ドアを開ける。
「どうぞ。」
姫乃は小さく深呼吸し、車へ乗り込んだ。
◇
さらに。
草津市。武見家。
ピンポーン。
「はい!」
勢いよく玄関を開けた雷太は、菊理加奈を見るなり満面の笑みになった。
「今日はおっちゃんちゃうんか!」
菊理は少し首を傾げる。
「……おっちゃん?」
「いや。何でもない。お願いします!」
父が後ろから笑う。
「ちゃんと挨拶せえよ。」
「しとるやん!ほな、行ってきます!」
雷太は元気よく車へ飛び乗った。菊理は思わず笑ってしまう。
「本当に元気ですね。」
「それだけが取り柄や!」
車は静かに走り出した。
◇
三台の送迎車は、それぞれ別の道を走る。
タケルは車窓から流れる景色を眺めていた。
「月夜さん。勇者本部って、どんなところなんですか。」
月夜実は前を向いたまま答える。
「着いたらご説明します。」
「そうですよね。」
それ以上は聞かなかった。
◇
猿田の車。
姫乃は少し緊張していた。
「猿田さん。」
「私以外にも。」
「来られる方がいるんですか。」
猿田はにっこり笑う。
「それも着いたらのお楽しみです。」
「え?」
「まだ秘密です。」
姫乃は首を傾げながらも、小さく笑った。
◇
菊理の車。
雷太は落ち着きなく周囲を見回していた。
「なあ。勇者本部って強い人いっぱいおる?」
「はい。きっと。雷太さんが会いたかった人もいますよ。」
「えっ!おっちゃん!?」
菊理は笑いをこらえながら答える。
「どうでしょう。早よ着かへんかなぁ!」
雷太は子どものように目を輝かせた。
◇
やがて三台は、それぞれ別の地下入口から時間をずらして勇者本部へ到着する。
三人は別々の通路。別々のエレベーター。別々の待機室へ案内される徹底ぶり。途中追跡探知の類いがないか何度か確認され、ここで最終の確認。いずれも何ら探知追尾を受けている痕跡なし。
互いの存在を知る者は、3人の中には誰もいない。
月夜実は時計を見る。
「予定どおりです。最終確認完了。」
依絵と菊理は作戦室の扉の左右へ立った。月夜実は静かに頷く。
「それでは、勇者の皆さんをお迎えしましょう。」
ゆっくりと作戦室の扉が開かれた。
**次回 勇者集結**
次回はお昼12時更新です。
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