第19話① 勇者招集 前半
五月某日。午前八時。
膳所城高校。地下十五階。勇者本部司令室。
月夜実は静かに全員を見渡した。
「本日勇者三名を招集します。」
その一言で、司令室の空気が引き締まる。
思金子が立ち上がった。
「最終確認です。」
「神具送迎車。」
「三台異常ありません。」
「通信。」
「正常。」
「Lin Lin。」
「正常。」
「温泉旅館。」
「受け入れ準備完了。」
猿田が笑顔で親指を立てる。
「女将さんにも伝えてあります。いつでも泊まれます。」
月夜実は頷いた。
「ありがとうございます。」
依絵は少し緊張した様子で手帳を見つめる。
「何か私まで緊張してきましたねぇ。」
菊理加奈が微笑んだ。
「私もです。どんな子たちなんでしょうね。」
思金子は静かに資料を閉じる。
「三人とも普通の高校生です。だからこそ、私たちが支えます。」
◇
月夜実は三人へ視線を向けた。
「確認します。勇者同士は、勇者本部到着まで接触禁止。」
「はい。」
「迎えは別々。案内経路も別々。待機室も別々。初顔合わせは作戦室。」
「了解。」
三人同時に返事をした。
◇
思金子が最後の資料を開く。
「もう一点。勇者本人には、必要最低限しか説明しません。」
依絵が頷く。
「理由は?」
「知らない情報は漏れません。」
「そのとおりです。」
月夜実も続ける。
「勇者の皆さんには安心して戦っていただきます。情報管理は私たちの仕事です。」
猿田さんは帽子を被り直した。
「ほな、迎えに行きましょうか。」
月夜実は時計を見る。
「予定どおり。午前八時三十分。出発します。」
◇
地下格納庫。
三台の黒いワンボックスカーが静かに並んでいた。見た目はどこにでもある送迎車。会社の営業車と言われても違和感はない。猿田は運転席へ乗り込み、小さく呟く。
「姫さんは私が迎えに行かせてもらいます。」
菊理加奈もシートベルトを締める。
「私はライちゃんか。元気な子なんだよね?」
月夜実は静かにハンドルを握った。
「タケ。今から迎えに行きますね。」
三人は同時にエンジンを掛ける。
静かに、ゆっくりと、三台の送迎車は地下格納庫を出発した。それぞれ。人の高校生を迎えるために。そして三人の運命が交わる、その場所へ向かって。
次回夜19時更新です。
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