第18話① 知恵の神の一手 前半
膳所城高校。地下十五階。勇者本部。司令室。
大型モニターには滋賀県全域の地図が映し出されていた。
月夜実、本部長。
思金子、作戦参謀。
鴨依絵、オペレーター。
菊理加奈、オペレーター兼本部職員。
猿田彦助、運搬送迎担当職員。
全員が円卓を囲んでいた。
思金子が静かに立ち上がる。
「本日の議題です。勇者招集前の最終防衛計画について。」
ホワイトボードへ、大きく一つの名前を書く。
**織田信長**
依絵が少し緊張した表情になる。
「相手はやっぱり信長なんですね。」
思金子は頷いた。
「はい。戦国時代最高峰の天下人です。つまり私たちが考え付くことは相手も考え付くと思いましょう。」
室内が静まり返る。月夜実が静かに尋ねた。
「具体的には?」
思金子はホワイトボードへ番号を書き始めた。
① 勇者本人
② 勇者本部
③ 勇者の家族
④ 通信
⑤ 補給
「この五つです。」
依絵が首を傾げる。
「家族まで狙いますか。」
「当然です。」
即答だった。
「天下人は勝つための方法を全て考えます。人質もその一つです。」
誰も反論しなかった。
月夜実も静かに頷く。
「確かに信長なら考えますね。」
思金子はホワイトボードへ赤い丸を付けた。
**家族**
「だからこちらは最初から対策します。」
◇
ホワイトボードが次々と書き換えられていく。
**対策一**
『霊力隠蔽』
依絵が手を挙げた。
「勇者の皆さんですね。」
「はい。」「三人とも加護を授かった日から、霊力隠蔽の加護が掛かっています。」
「現在、魔王軍は、本物の勇者を一人も観測できていません。」
菊理加奈が驚いたように目を丸くした。
「では、敵の諜報部が見ている勇者候補は?」
「全員偽物です。」
依絵が思わず吹き出した。
「信長様、完全に騙されてますね。」
思金子は首を横へ振った。
「いいえ、信長は、偽物だと気付いています。ですが本物が分かりません。だから意味があります。」
◇
思金子は次の項目を書く。
**対策二**
『勇者家族』
「勇者本人が見えないなら、次に狙われるのは家族です。」
猿田が腕を組む。
「どう守るんです?」
「神聖結界です。ただし勇者の家族だけではありません。」
地図が切り替わる。滋賀県中に、無数の青い点が表示された。住宅街。神社。学校。商店街。山の中。数え切れない。
依絵が思わず立ち上がる。
「こんなに!?」
「現在、百二十七か所。まだ増やします。」
月夜実が資料を見ながら呟く。
「本物は、三軒だけですね?」
「はい。」
「しかし私たち以外、誰も知りません。」
依絵が感心したように笑う。
「これじゃ信長でも分かりませんね。」
思金子は静かに頷いた。
「それが目的です。敵には考える時間を使わせます。それだけでも十分な戦果になります。」
次回夜19時更新です。
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