第17話① 知略戦開幕 前半
勇者本部最深部。作戦会議室。
中央には巨大な立体映像が映し出されていた。結界に包まれた安土城高校。その黒い結界が、幾重にも分解され、複雑な術式となって空間へ浮かび上がる。
アマテラス。
建部大神。
市杵島姫命。
武甕槌神。
そして。
月夜実、思金子、鴨依絵、菊理加奈、猿田さん。全員が静かに映像を見つめていた。
思金子が資料を閉じる。
「結界解析終了しました。」
室内の空気が張り詰める。アマテラスが静かに頷いた。
「報告してください。」
「はい。」
思金子は映像を切り替える。黒い結界の内部構造が次々と表示されていく。
「まず結論です。この結界は、人間や魔族には構築不可能です。」
建部大神が頷く。
「予想どおりですね。」
「さらに、地球神界の術式とも一致しません。」
市杵島姫命が少し驚いたように目を見開く。
「私たちの術式ではないのですか。」
「一致率〇%です。」
武甕槌神が腕を組んだ。
「異世界の神か。」
思金子は静かに首を横へ振る。
「断定できません。そこで、アマテラス様にも直接ご確認いただきました。」
全員の視線がアマテラスへ集まる。
長い沈黙。
やがてアマテラスが静かに口を開いた。
「……いいえ。神ではありません。」
誰も言葉を発しなかった。
建部大神が尋ねる。
「では、何者なのでしょう?」
アマテラスは結界を見つめたまま答える。
「神ではありません。しかし神に匹敵するほど強大な存在です。」
室内が静まり返る。思金子が確認する。
「正体は分かりません。少なくとも地球神界の存在ではありません。それ以上は私にも分かりません。」
武甕槌神がゆっくり息を吐く。
「相当厄介じゃの。」
「はい。」
思金子は資料へ書き込む。
『敵戦力』
**神格級に匹敵する存在 正体不明**
月夜実は静かに資料を見つめていた。
「思さん。」
「はい。」
「こちらも最悪を前提に動きましょう。」
「もちろんです。」
思金子は迷いなく答えた。
「相手は織田信長です。天下人です。必ず最も勝率の高い方法を考えます。」
依絵が首を傾げる。
「最も勝率の高い方法?」
思金子は地図を表示した。
滋賀県内。三つの光点。
「勇者本人を倒す。」「勇者本部を探す。」「家族を人質に取る。」「天下人なら全て考えます。」
室内が静まり返る。誰も否定しなかった。
「だから考えられる前に全て対策します。」
依絵は小さく息を呑む。
「そこまで……。」
思金子は静かに頷いた。
「優秀な敵ほど最悪を前提に考えます。なら、こちらも同じです。」
月夜実は静かに立ち上がる。
「対策を考えましょう。」
誰も笑わなかった。ここから始まるのは剣ではなく知恵で戦う、見えない戦いだった。
次回夜19時更新です。
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