第15話② 魔王学園・初めての試験 後半
午後。
体育館。
試験を終えた全校生徒が再び集められていた。
壇上には信長。
その隣には勝家とベリアル。
「それでは。」
「試験結果を発表する。」
一同。
「ギャ……。」
緊張が走る。ベリアルが答案用紙を抱えて前へ出た。
「まず。一年一組。」
ゴブリン教室。
「全員。」
一瞬、体育館の空気が止まる。
「赤点です。」
「ギャアアアアアア!」
体育館中へ悲鳴が響き渡る。ルシフェルは吹き出した。
《全滅か。》
信長は笑いを堪えている。
「静まれ。」
一瞬で静かになった。
「確かに、全員赤点じゃ。」
ゴブリンたちは一斉に肩を落とした。
「じゃが。」
信長は一枚の答案を掲げる。
「これは誰じゃ。」
ゴブタが恐る恐る手を挙げた。
「ギャ。」
答案には大きく書かれていた。
**ゴブタ**
信長は微笑む。
「入学式の日、そなたは自分の名前すら書けなんだ。」
「今日は書けた。」
「立派な進歩じゃ。」
体育館が静かになる。
「ゴブオ。」
「前へ。」
ゴブオが歩いてくる。
「文字を読んでみよ。」
信長は黒板へ書く。
**あ い う え お**
ゴブオは少し緊張しながら読んだ。
「あ。」
「い。」
「う。」
「え。」
「お。」
信長は満足そうに頷いた。
「よし。」
「これも百点じゃ。」
ルシフェルが不思議そうに尋ねる。
《赤点なのではなかったか。》
(試験は。)
(点数だけではない。)
◇
信長は全校生徒を見渡した。
「そなたら。」
「よく聞け。」
「世の中には。」
「一回でできる者もおる。」
「十回やってできる者もおる。」
「百回やってできる者もおる。」
「それでええ。」
「大事なのは。」
「昨日より。」
「今日。」
「今日より。」
「明日。」
「少しでも成長することじゃ。」
体育館は静まり返っていた。
「零点を取った者。」
「恥じる必要はない。」
「勉強せず零点なら恥じゃ。」
「じゃが。」
「努力して零点なら。」
「次は一点になる。」
「一歩進んだ者を。」
「わしは褒める。」
ゴブリンたちは真剣な顔で信長を見つめていた。
◇
信長はニヤリと笑う。
「……とは言え。」
一同。
「?」
「赤点は赤点じゃ。」
「補習じゃ。」
「ギャアアアア!」
再び体育館が大騒ぎになる。
ベリアルは苦笑した。
「放課後。」
「一年一組。」
「あいうえお。」
「もう一回です。」
「ギャーー!」
ルシフェルは腹を抱えて笑っていた。
《結局補習か!》
「教育とは。」
「愛情じゃ。」
「甘やかすことではない。」
◇
その夜。
校長室。
ベリアルが今日の結果を報告する。
「校長。」
「平均点は低かったですが。」
「全員。」
「入学当初より成長しております。」
信長は静かに頷く。
「十分じゃ。」
「木も。」
「一日では大木にならぬ。」
「人も。」
「魔物も同じじゃ。」
ルシフェルは静かに笑った。
《其方は本当に校長になったのだな。》
信長は湯飲みを置く。
「天下人も。」
「校長も。」
「人を育てることに変わりはない。」
その頃。
校舎のどこかから。
「ギャーー!」
「先生!」
「九九難しい!」
補習中のゴブリンたちの悲鳴が響いていた。
信長は苦笑する。
「さて。」
「明日も忙しくなりそうじゃの。」
日本中が結界事件で揺れている、その頃――
安土城魔王学園では、大魔王校長が赤点のゴブリンたちへ九九を教えていた。
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