第13話① 野良魔物事件 前半
四月二十八日。午前七時三十分。
滋賀県警察本部。安土城高校結界事件対策本部。
大型モニターには、県内地図が映し出されていた。
赤い印が、昨日よりさらに増えている。
「野良ゴブリン出没。」「野良オーク出没。」「農作物被害発生。」「家畜被害発生。」「人的被害一件。」
会議室の空気は重かった。県警本部長が静かに口を開く。
「状況は悪化しています。」「昨日午後四時東近江市において、野良オーク一体を確認。」
「警察官が拳銃を発砲。命中。しかし全く効果無し。行動停止には至りませんでした。」
会議室がざわつく。
「拳銃でも駄目ですか……。」
機動隊長が立ち上がる。
「ゴブリン程度であれば拳銃でも脅すことは可能です。拳銃の銃弾が当たるとびっくりしていました。」
「しかし。オークはまったく無理です。ライフルでもかすり傷一つ与えられません。」
沈黙。
◇
県庁。知事室。
知事は難しい表情で資料を見つめていた。
「猟友会は?」
職員が頭を下げる。
「検討の余地すらないかと。なにしろ、ライフルが全く通用しないことが判明しています。」
知事は小さく息を吐いた。
「仕方ありません。」
「陸上自衛隊へ災害派遣を要請します。」
◇
その日の午後。
県内某所。住宅地郊外。
野良オークが道路の真ん中を歩いていた。
住民は避難。
パトカー。消防。救急車。そして自衛隊。隊長が双眼鏡を下ろす。装備はとりあえず重機関銃を試す模様。
「距離百五十。射線。……駄目だ。」
オークのすぐ後ろには民家。左には避難が遅れた高齢者。右には泣き叫ぶ子供。
「撃てません。」
隊員が苦しそうに言う。
「しかし。このままでは……。」
隊長は唇を噛んだ。
「住民に当たってしまう。射撃は待て。」
その一瞬だった。オークが突然走り出した。
「まずい!」
ドォォォン!車が吹き飛ぶ。悲鳴。救急隊員が駆け寄る。
「負傷者!二名!救急車!」
現場は一気に騒然となった。
◇
夕方。
ニュース速報。
『本日午後、県内で再び野良オークによる人的被害が発生しました。』
『現在、自衛隊・警察が対応を続けています。』
テレビの前では、多くの県民が固唾を飲んで見守っていた。
一方。
インターネットでは。
『オークかわいそう。』
『殺さないで。』
『魔王に返してあげて。』
『オークって食べたら美味しいの?』
『ジビエになる?』
様々な書き込みが次々と投稿されていた。
◇
その頃。
安土城魔王学園校長室。
諜報部長が最新の報告書を信長へ差し出す。
「校長。人間側の反応です。」
信長は静かにページをめくる。
県警。自衛隊。知事。世論。一通り目を通し、報告書を閉じた。
「なるほど。」
ルシフェルが興味深そうに尋ねる。
《どう見る?》
信長は湯飲みを口へ運ぶ。
「人間の武器は、魔族・魔物には一切効かんかもしれん。おぬし、何かわかるかの?」
《地球には魔力がほとんどない。魔力の塊のような我らには、人間の通常武器は効かないのかもしれないな。》
「もしそうだとすると、人類征服など、案外簡単にできてしまうかも知れんぞ。なにしろ、向こうから攻撃手段が一切ない。怖いのは神と勇者の出現だけとなってしまう。」
《その勇者の出現がやっかいなんだがな。》
「これまでのところ、勇者らしき存在の出現は感知できておらんのじゃろ?」
《ああ。しかし、油断するな。神々のことだ。必ず勇者を用意するはずだ。》
「まあ、そうだとしても、政府や軍隊は役立たず、と言うことになれば、魔族による世界支配、と言う目標は簡単じゃぞ。」
《他に何かわかることはあるか?》
「人は単に敵というだけでは動かぬ。しかし、恐怖でも、正義でも、感情でも動く。世論もまた、人を動かす大きな要因の一つじゃ。」
ルシフェルは小さく笑った。
《だから諜報部へ世論まで集めさせておるのか。》
「当然じゃ。」
信長は窓の外を見る。グラウンドでは。
「ギャーー!」「イカの足ぃ!」
今日もゴブリンたちが元気に走り回っていた。信長は苦笑する。
「まずは、ひらがなを覚えてからじゃの。」
次回はお昼の12時更新です。
お読みいただきありがとうございますm(_ _)m
皆様に大切なお願いがございます。
読んでみて少しでもいいと思っていただけましたら、、ブックマークと評価を★★★★★にしていただけるととっっっっても嬉しいです。(*´ω`*)
執筆を続ける励みとなりますので是非ともお願いいたします。m(_ _)m




