第12話① 秘密の特訓 前半
放課後。
タケルは建部大社近くのため池に来ていた。周りは全て木で覆われており、よほどのことがない限り誰にも見られる心配はない。
タケルは付近に誰もいないことを確認すると、溜池への入り口に「立入禁止」の札を掛けた。
「これでよし。」
誰が掛けたのか分からない札を見て、多分誰も入ってこない。
「便利便利。」
右手を前へ出す。
「火。」ボッ。
小さな炎が掌に灯る。
「よし。風。」ふわっ。
優しい風が吹いた。
「ここまでは簡単。」
タケルは腕を組む。
「問題はここから。」
右手の炎へ左手の風を少しだけ当てる。
ボォッ。
「お。」
炎が少し大きくなる。
「やっぱり、風は火を強くする。」
ノートを取り出す。
『実験その一』
**風を弱くすると火が大きくなる。**メモ。
「よし。」
もう一回、今度は強め。
「風。」ゴォォッ!
炎が一気に暴れた。
「うわっ!」
慌てて風を止める。炎も消える。
「失敗。」
ノートへ書く。
**風が強すぎると制御不能。**
タケルは満足そうに頷く。
「ゲームと一緒だ。まず仕様を知らないとね。」
◇
「じゃあ。次。」
屋上へ落ちていた小石を拾う。
「風だけ。」ふわっ。
石が少し浮く。
「お。浮いた。」
もう少し風を強くする。石はゆっくり前へ飛んだ。
「なるほど。飛ばせる。」
「じゃあ、いよいよ。なんとなんたら拳!」
スパっ。枝が落ちる。
「あ、著作権がやばいからウィンドカッター!3発!」
スパスパスパッ。
「フ、漫画を超えたな。」
またメモ。
**風だけでも攻撃可能。**
「じゃあ。」
「火を風に乗せたら?ファイアボール!」
小さな炎が浮かび、
ヒュッ!
火の塊は勢いよく飛び――
ため池の真ん中へ。
ボン!大きな音を出しながら湖面がはじける。
「おお!すごいかも。」
またノート。
**火と風の合体技は強力、かも。**
「じゃあ、次はお待ちかねの空中浮揚だね。」
とその時だった。頭の中へ、建部大神の声が響く。
《面白い。》
タケルは笑う。
「建部大神。見てたんですか。」
《ずっとな。普通は火を大きくする練習から始める。お主は飛ばそうと考えたか。》
「ゲームだと、遠距離攻撃の方が便利ですから。」
建部大神は少し笑う。
《やはり、お主は発想が面白い。》
「褒められた。」
《しかし、一つだけ教えておこう。》
「はい。」
《神剣を使った練習をせよ》
「……。神剣?」
《うむ。神剣!と唱えてみよ》
タケルは少し考える。
「神剣!」
すると、まばゆい輝きとともに、神剣らしき神具が顕現した。
「驚いた。こんな剣まで授かってたんですね。こりゃ練習あるのみですね。特にコンボ。」
《こんぼ?》
「合わせ技です。」
《うむ。コンボを極めると良いぞ。》
タケルは目を輝かせた。
「よし。」
「コンボをもっと作ろう。」
ノートの一番上へ大きく書く。
**究極コンボ研究ノート**
「何かオリジナルのカッコいい名前も付けたいな。」
建部大神は苦笑した。
《お主は本当にオタクじゃの。》
次回はお昼の12時更新です。
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