第11話② それぞれの秘密 後半
その日の放課後。
膳所城高校屋上。
タケルは再び誰もいないことを確認すると、両手を前へ突き出した。
「火。」ボッ。
「風。」ふわっ。
「よし。今度は同時。」
右手の炎を、左手の風で包み込むように動かす。
ボォッ!炎が一回り大きくなった。
「できた!」
思わずガッツポーズ。しかし次の瞬間。
ボワッ!
炎が予想以上に大きくなり、屋上の掃除用モップへ燃え移る。
「うわっ!」
タケルは慌てて風を起こす。
「違う違う!」
炎はさらに勢いを増した。
「しまった!」
今度は火を消そうとして右手を振る。すると炎はふっと消えた。焦げたモップだけが残る。
「……危なかった。どんどん威力が上がってる。コントロールしないとね。ここまででわかることは、訓練すれば威力が伸びるということ。だから経験値型じゃなくて訓練型だね。そこそこ威力出てきたから、ゲームのように火と風を使ったスキルが身につかないかも試してみよう。フフフフ。」
オタクの血が騒ぐタケルであった。
その時、校内放送。
『大和くーん。担任の先生がお呼びです。』
タケルは焦げたモップを見つめる。
「……。呼び出し?バレてないよね?あはははは・・・。あーあ」
急いで屋上を後にした。
◇
一方。
彦根。
姫乃は自室で真剣な表情をしていた。
机の上には、コップが十個。
「今日は。全部同時。」
右手を前へ。
「水。」ぽちゃん。ぽちゃん。ぽちゃん。
十個の水玉が宙へ浮かぶ。
「できた!」
姫乃は目を輝かせた。
「じゃあ。一列!」水玉が横一列に並ぶ。
「次。円!」くるくる回る。
「次。星!」あと少しで最後の一つが崩れた。
パシャッ!
「きゃっ!」
またびしょ濡れ。鏡を見る。
「……。何やってるんだろ。部屋中水浸し。」
そう言いながら笑ってしまう。
「でも。面白い。いろいろやってみよう。あ、風呂場でやった方がいいかも。と、その前に、と。」
机へ向かい、ノートを開く。
**水玉一個成功。****十個成功。****次は二十個。**
姫乃は真面目に記録を付け始めた。
◇
その頃。
草津川跡地。
雷太は全力疾走していた。
「雷!」パチッ!
「遅い!」「もう一回!」パチパチッ!
「もっと!」
何度も繰り返す。汗だく。息が上がる。それでも止まらない。
「武甕槌のおっちゃん。次会う時には絶対、一本取ったる。」
その時。
バチィィィッ!
今までで一番大きな雷が右手から走った。
「おぉ!」
雷太は飛び上がる。
「凄いの出た!やった!」
しかし、勢い余って街灯へ命中。
パァン!
街灯の電球が消えた。
「……。え?」
雷太は固まる。
「これ。弁償?」
周囲を見回す。誰もいない。
「……。逃げよ。」
一目散に走り去った。
◇
その夜。
三人はそれぞれ、自室の天井を見つめていた。
タケル。
「んー、ゲームの主人公みたいになれる?凄いな。でも練習場所が難しいな。学校の屋上なんてすぐご近所からクレーム来そうだし。どっかいい練習場ないかなあ。特に火は危ないからなあ。うーん。」
姫乃。
「何のために選ばれたんだろう?タケルに相談したいけど、誰にも内緒って言われたし。このまま練習し続けてていいのかなあ。」
雷太。
「雷使えるようになったら鬼に金棒やな。タケルの奴に見せたらビックリするやろなあ。ヒヒヒヒ。あ、でも誰にも内緒なんだっけ?ちっ。自慢もでけんやんけ。」
三人ともまだ知らない。同じ日に同じように神から加護を受けた仲間がいることを。そして幼なじみが、マブダチがその仲間であることを。
そして同じ空の下。
安土城魔王学園では――
「ギャーー!」「イカの足!」
「返事は一回です!」
今日もベリアル先生の声が校舎中へ響いていた。
校長室。
信長は静かに微笑む。
「平和じゃのう。」
ルシフェルは呆れたようにため息をつく。
《其方の言う平和は、少し世間と違う気がするぞ。》
信長は笑いながらお茶を飲んだ。
「学校は今日も平和じゃ。」
**次回 野良オーク討伐作戦**
次回夜19時更新です。
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