第10話② 立木神社 後半(★イラスト有)
雷太は地面を蹴った。
「おりゃあああぁぁぁ!」
一気に間合いを詰める。拳が唸る。
しかし。
武甕槌神は動かなかった。軽く人差し指を一本。前へ出しただけだった。
コツン。
「え?」
次の瞬間。雷太の体が宙を舞った。
「うわぁぁぁぁぁ!」
十メートルほど後ろへ転がる。ゴロゴロゴロ……。ようやく止まった。
「いったぁ……。」
立ち上がる。
武甕槌神は腕を組んだまま笑っていた。
「終わりじゃ。」
「終わりちゃう!」
雷太は土を払いながら立ち上がる。
「もう一回!まだ一発しか殴っとらん!」
「殴られてすらおらん。指一本じゃ。それで終わり。」
雷太は悔しそうに頭を掻いた。
「くっそぉ……。全然見えへんかった。」
武甕槌神は静かに頷く。
「武とは、力ではない。見極めることじゃ。まだまだじゃの。」
雷太は悔しそうに笑った。
「負けた。完敗や。約束どおり何でも言うこと聞く。」
武甕槌神は満足そうに頷いた。
「よろしい。」「では加護を授けよう。」
右手を差し出す。
黄金色の雷が走る。
バチッ。バチバチバチッ!
雷はゆっくりと雷太の胸へ吸い込まれていく。
ドクン。
心臓が大きく鳴る。全身へ力が巡る。熱い。しかし苦しくない。むしろ体が軽い。
「おぉ……。」
武甕槌神は静かに告げた。
「今日より、お主は雷霊術を扱える。試してみよ。」
雷太は右手を前へ突き出した。
「雷!」
シーン……
「……。出ぇへん。」
もう一度。
「雷ぃ!」
パチッ。静電気くらいの火花が飛んだ。
「痛っ!」
指先へ自分で感電した。
「弱っ!」
武甕槌神は大笑いする。
「まだ体へ馴染んでおらん。焦るでない。」
雷太は何度も挑戦する。
「雷!」パチッ。
「雷!」パチッ。
「雷!」パチパチッ!
「おっ!」少しずつ火花が大きくなってきた。
武甕槌神は嬉しそうに頷く。
「筋が良い。鍛えれば必ず強くなる。」
雷太は目を輝かせた。
「ほんまか!ほなもう一回勝負や!」
武甕槌神は苦笑する。
「はっはっは。ほんとにおまえは脳筋よの。まだ早い。加護が体へ定着しておらぬ。まずは鍛えよ。その後ならまた相手になってやらんでもない。」
雷太は満面の笑みになった。
「約束やで!」
「約束じゃ。」
二人は力強く拳を合わせた。
「ああ、ついでにおまけの加護を少しつけておいた。これは、まあ気にせんでよい。」
「?」
◇
帰り道。
草津川跡地。
雷太は嬉しそうに走っていた。
「雷!」パチッ。
「もう一回!」パチパチッ。
「おぉ!さっきより強なっとる!」
走りながら止まって。また撃つ。
「雷!」パチッ!
「おもしろ!」
誰も見ていないことを確認すると、今度はジャンプ。
「雷!」パチッ!
「跳びながらでも出るやん!」
完全に夢中だった。
「よっしゃ!毎日鍛えたる!」
夕日に照らされた草津川跡地を、雷太は子どものような笑顔で走り続ける。
その姿を、遠く空の上から武甕槌神が見守っていた。
「ふふ。本当に武が好きな男じゃ。次に会う時を楽しみにしておるぞ。」
春風が吹く。雷太はもう一度だけ右手を突き出した。
「雷!」バチッ!
今度は今までで一番大きな火花が弾けた。
「よっしゃぁぁぁ!」
草津川へ、雷太の元気な声が響き渡った。
**次回 それぞれの勇者**
次回夜19時更新です。
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