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第8話② 建部大社 後半(★イラスト有)

 建部大神は静かに微笑んだ。


「では。加護を授けよう。」


 ゆっくりと右手を差し出す。その掌から、黄金色の光が溢れ始めた。境内全体が優しい光に包まれる。タケルは思わず息を呑んだ。


「きれい……。」


 建部大神は一歩近付く。


「目を閉じよ。」


「はい。」


 素直に目を閉じる。次の瞬間。建部大神の手が、そっとタケルの胸へ触れた。


 ドクン。心臓が大きく鳴る。黄金の光は、一気にタケルの体へ流れ込んだ。


「うわぁぁぁ!」


 体中が熱い。しかし不思議と苦しくない。むしろ懐かしい。遠い昔。どこかで感じたような温もりだった。光は胸の奥へ吸い込まれていく。その瞬間。景色が変わった。


◇


 燃え盛る野原。空を覆う黒煙。無数の兵。剣戟。叫び声。その中心を、一人の若者が駆け抜けていた。白馬。燃えるような眼差し。神々しい剣。


 その姿を見た瞬間、タケルの胸が締め付けられる。


「……誰?」


 若者は振り返る。笑った。そして静かに頷く。


 次の瞬間、全ての景色が光へ変わった。


◇


 タケルは目を開けた。息が荒い。汗が流れている。


「今のは……。」


 建部大神が穏やかに答える。


「お主の中に眠る。英雄の記憶じゃ。」


「英雄?」


「今はまだ。全て思い出す必要はない。」


「必要になれば。自然と思い出す。」


 タケルは胸へ手を当てる。まだ熱い。しかしどこか安心する温もりだった。


 建部大神は続ける。


「今日より。お主は。火と風の加護を受ける。試してみるがよい。あとちょっとしたお守りの加護もつけておく。」


「え?ここで?後お守りの加護って?」


「そちらは気にせんでええ。それより火と風じゃ。試してみい。」


 タケルは恐る恐る右手を前へ出した。


「えーっと。どうすれば。」


「出ろ、火。」


「そんな適当で?」


 ボッ。


「うわぁぁ!」


 掌に小さな炎が灯った。


「出たぁぁ!」


 驚いて手を振る。炎も一緒に振り回される。


「危ない危ない危ない!」


 建部大神は大笑いしている。


「初めてにしては上出来じゃ。」


「笑ってる場合じゃない!」


 今度は左手を慌てて出した。ブワッ。


 突然。突風が吹いた。桜の花びらが境内いっぱいに舞い上がる。その風で右手の炎も消えた。


「消えた。便利!」


 建部大神は満足そうに頷く。


「火霊術。風霊術。これがお主の第一歩じゃ。」


「……。」


 タケルは自分の手を見つめる。


「ボク。本当に何か始まっちゃったんだ。」


 建部大神は空を見上げた。


「近いうち、お主には仲間が現れる。その時まで、誰にも話すな。」


「はい。」


「約束だぞ。」


「わかりました。」


「ではまた会おう。」


 建部大神の姿が光へ変わる。無数の光の粒となり夕空へ溶けていった。境内には再び静かな風が吹く。鳥のさえずりも戻ってきた。まるで何事もなかったかのように。


 タケルは一人しばらく立ち尽くしていた。


「……夢?」


 右手を見る。何もない。


「だよね。あはは」


 苦笑しながら石段を降り始める。その時だった。足元の小石が転がる。タケルは反射的に右手を伸ばした。


「危ない。」


 ボッ。小石の手前で、小さな炎が灯った。


「…………。」


 タケルは固まる。


「夢じゃ、夢じゃないぃぃぃ!」


 建部大社に、少年の叫び声が響き渡った。


**第9話 都久夫須麻神社**


挿絵(By みてみん)


次回は夜19時更新です。


お読みいただきありがとうございますm(_ _)m


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