第7話② 野良魔物捕獲作戦(後半)
野良ゴブリンは、大根を抱えたまま一目散に逃げ出した。
「ギャーーーー!」
その正面には、柴田勝家。
ゴブリンは急ブレーキをかけた。
「ギャ?」
後ろ。ベリアル。
右。中級悪魔。
左。上級悪魔。
完全包囲である。
勝家は槍を地面へ突き立てた。
「逃げ場はない。大人しく戻れ。」
ゴブリンは周囲を見回す。
「ギャ。」
ベリアルが荷車から一本取り出した。
「ほら。イカの足。」
ゴブリンの耳がピクリと動く。
「ギャ?」
「帰ったらもっとありますよ。」
ゴブリンは一歩前へ。
「ギャ。」
さらに一本。
「二本。」
「ギャ!」
さらにもう一本。
「三本。」
ゴブリンはあっさりベリアルの後ろへ並んだ。
勝家は思わず槍を見た。
「……。」
「戦とは何だったのだ。」
頭の中でルシフェルが笑う。
《勝ったな。》
信長は校長室で報告書を見ながら苦笑した。
(教育とは、時に武力より強い。)
◇
しかし。
別の地区では巨大な野良オークが暴れていた。畑は踏み荒らされ、柵は壊れ、農家が遠くから震えながら見ている。
「ブオオオォ!」
勝家が前へ出る。
「ベリアル。下がれ。」
「はい。」
勝家は槍を静かに構えた。
「一度だけ言う。戻れ。」
オークは答えない。雄叫びを上げながら突進した。勝家は動かない。ギリギリまで引き付ける。そして。
ドンッ!
槍の石突きを地面へ叩き付けた。
「喝!」
衝撃波。オークの巨体が一瞬止まる。次の瞬間。勝家の槍が喉元へ止まっていた。
「終わりじゃ。」
オークは震えながら膝をつく。勝家は静かに槍を下ろした。
「連れて帰れ。」
ベリアルが驚く。
「討たないのですか?」
「まだ理性が残っておる。」
「教育できる。」
ベリアルは嬉しそうに笑った。
「はい!」
◇
昼。
校長室。
諜報部長が再び報告へ来る。
「校長、本日の保護状況です。順調です。大きな混乱はありません。県警、自衛隊とも、野良魔物への対応に追われています。」
信長は頷いた。
「よい。こちらから人間へ手を出すな。引き続き監視。」
「はっ。」
ルシフェルが静かに尋ねる。
《勝家を行かせた理由は?》
(あやつは、強いだけではない。民を守れる。)
《だからか。》
(だからじゃ。)
◇
その日の夕方。
建部大社。
一人の高校生が石段をゆっくり登っていた。
制服姿。大和タケル。
「……何でだろ。今日、無性にここへ来たくなった。」
理由は分からない。ただ胸がざわつく。社殿の前へ立つ。二礼二拍手一礼。目を閉じた。その瞬間風が吹いた。桜の花びらが舞う。
誰もいないはずの境内で――優しい女性の声が響いた。
「ようやく来ましたね。」
タケルはゆっくり目を開ける。
「……誰?」
夕日に照らされた本殿が、淡く金色に輝いていた。
**第8話 建部大神**
へ続く。
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