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蒼空のレガリア  作者:
1章 蒼空の継承者編
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7/31

第六話 古代文字の少女

「読めるんですか!?」


 セレスはまだ興奮していた。


 ⸻


「だから少しだけだって」


 ⸻


「少しでも十分です!」


 ⸻


「いや、そんなこと言われても……」


 ⸻


 アークは困惑する。


 ⸻


 周囲の人々がちらちら見ていた。


 ⸻


 完全に目立っている。


 ⸻


「とりあえず落ち着け」


 ⸻


 グレンが言う。


 ⸻


「はっ」


 ⸻


 ようやくセレスも我に返ったらしい。


 顔が真っ赤になる。


 ⸻


「す、すみません……」


 ⸻


 今度は妙に大人しい。


 ⸻


 忙しい人だった。


 ⸻


 フィンが小声で呟く。


 ⸻


「変な奴だな」


 ⸻


「お前が言うな」


 ⸻


 グレンのツッコミが飛ぶ。


 ⸻


 アイリスは少しだけ笑っていた。


 ⸻


 そんなやり取りの後。


 ⸻


 結局。


 ⸻


 アークたちは近くの喫茶店へ移動することになった。


 ⸻


 理由は簡単。


 ⸻


 セレスがどうしても話したいからだ。


 ⸻


 窓際の席。


 ⸻


 セレスは鞄から何冊もの本を取り出した。


 ⸻


「多いな」


 ⸻


 アークが思わず言う。


 ⸻


「研究者ですから」


 ⸻


 当然という顔だった。


 ⸻


 グレンは頭を抱えた。


 ⸻


「嫌な予感しかしない」


 ⸻


「失礼ですね」


 ⸻


 否定できていない。


 ⸻


 セレスは一冊の古い本を開いた。


 ⸻


 そこには奇妙な文字が並んでいる。


 ⸻


 アークは目を細めた。


 ⸻


 見覚えがあった。


 ⸻


「これ……」


 ⸻


 自然と口から言葉が出る。


 ⸻


「空の門が開く時、七つの星は再び巡る」


 ⸻


 セレスが固まった。


 ⸻


 フィンも固まった。


 ⸻


 グレンも固まった。


 ⸻


「え?」


 ⸻


「読めた」


 ⸻


「いやいやいや!」


 ⸻


 セレスが机を叩く。


 ⸻


 周囲の客が驚いて振り向く。


 ⸻


「今の文字ですよね!?」


 ⸻


「たぶん」


 ⸻


「たぶんじゃありません!」


 ⸻


 興奮が再発した。


 ⸻


 アークは助けを求めるようにグレンを見る。


 ⸻


 グレンは視線を逸らした。


 ⸻


 助ける気はないらしい。


 ⸻


「いつから読めるんですか!?」


 ⸻


「昔から」


 ⸻


「どうやって!?」


 ⸻


「分からない」


 ⸻


 実際そうだった。


 ⸻


 子供の頃。


 ⸻


 村の遺跡で見つけた石碑。


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 誰も読めなかった文字。


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 だがアークには読めた。


 ⸻


 理由は分からない。


 ⸻


 父親にも聞いた。


 ⸻


 しかし。


 ⸻


『誰にも言うな』


 ⸻


 そう言われただけだった。


 ⸻


 それ以来。


 ⸻


 あまり人には話していない。


 ⸻


 セレスは腕を組む。


 ⸻


 真剣な顔だった。


 ⸻


「おかしいです」


 ⸻


「何が?」


 ⸻


「古代文字は現在ほとんど解読されていません」


 ⸻


 そして。


 ⸻


「読める人間なんて存在しないはずなんです」


 ⸻


 その言葉に。


 ⸻


 アイリスだけが静かに反応した。


 ⸻


 ほんの僅かに。


 ⸻


 表情が曇る。


 ⸻


 アークは気付かなかった。


 ⸻


 だが。


 ⸻


 グレンは見ていた。


 ⸻


 アイリスの変化を。


 ⸻


 そして何かを考えているようだった。


 ⸻


 その時だった。


 ⸻


 店の扉が開く。


 ⸻


 カラン。


 ⸻


 小さな音。


 ⸻


 だが。


 ⸻


 なぜか店の空気が変わった。


 ⸻


 アークは振り返る。


 ⸻


 ひとりの青年が入ってきた。


 ⸻


 白銀の髪。


 ⸻


 黒いコート。


 ⸻


 整った顔立ち。


 ⸻


 そして。


 ⸻


 金色の瞳。


 ⸻


 青年は店内を見回す。


 ⸻


 そして。


 ⸻


 アークと目が合った。


 ⸻


 一瞬だった。


 ⸻


 しかし。


 ⸻


 アークの胸がざわつく。


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 初対面のはずだった。


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 なのに。


 ⸻


 なぜか。


 ⸻


 会ったことがある気がした。


 ⸻


 青年も同じだった。


 ⸻


 数秒。


 ⸻


 視線が交差する。


 ⸻


 やがて。


 ⸻


 青年は小さく呟いた。


 ⸻


「やはり」


 ⸻


 アークには聞こえないほど小さな声だった。


 ⸻


 しかし。


 ⸻


 アイリスは聞いていた。


 ⸻


 そして。


 ⸻


 その青年の名前も知っていた。


 ⸻


 ヴァイス。


 ⸻


 エクリプスの継承者。


 ⸻


 運命が再び動き出す。

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