第六話 古代文字の少女
「読めるんですか!?」
セレスはまだ興奮していた。
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「だから少しだけだって」
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「少しでも十分です!」
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「いや、そんなこと言われても……」
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アークは困惑する。
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周囲の人々がちらちら見ていた。
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完全に目立っている。
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「とりあえず落ち着け」
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グレンが言う。
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「はっ」
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ようやくセレスも我に返ったらしい。
顔が真っ赤になる。
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「す、すみません……」
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今度は妙に大人しい。
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忙しい人だった。
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フィンが小声で呟く。
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「変な奴だな」
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「お前が言うな」
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グレンのツッコミが飛ぶ。
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アイリスは少しだけ笑っていた。
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そんなやり取りの後。
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結局。
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アークたちは近くの喫茶店へ移動することになった。
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理由は簡単。
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セレスがどうしても話したいからだ。
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窓際の席。
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セレスは鞄から何冊もの本を取り出した。
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「多いな」
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アークが思わず言う。
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「研究者ですから」
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当然という顔だった。
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グレンは頭を抱えた。
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「嫌な予感しかしない」
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「失礼ですね」
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否定できていない。
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セレスは一冊の古い本を開いた。
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そこには奇妙な文字が並んでいる。
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アークは目を細めた。
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見覚えがあった。
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「これ……」
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自然と口から言葉が出る。
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「空の門が開く時、七つの星は再び巡る」
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セレスが固まった。
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フィンも固まった。
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グレンも固まった。
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「え?」
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「読めた」
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「いやいやいや!」
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セレスが机を叩く。
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周囲の客が驚いて振り向く。
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「今の文字ですよね!?」
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「たぶん」
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「たぶんじゃありません!」
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興奮が再発した。
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アークは助けを求めるようにグレンを見る。
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グレンは視線を逸らした。
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助ける気はないらしい。
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「いつから読めるんですか!?」
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「昔から」
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「どうやって!?」
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「分からない」
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実際そうだった。
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子供の頃。
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村の遺跡で見つけた石碑。
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誰も読めなかった文字。
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だがアークには読めた。
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理由は分からない。
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父親にも聞いた。
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しかし。
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『誰にも言うな』
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そう言われただけだった。
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それ以来。
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あまり人には話していない。
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セレスは腕を組む。
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真剣な顔だった。
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「おかしいです」
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「何が?」
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「古代文字は現在ほとんど解読されていません」
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そして。
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「読める人間なんて存在しないはずなんです」
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その言葉に。
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アイリスだけが静かに反応した。
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ほんの僅かに。
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表情が曇る。
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アークは気付かなかった。
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だが。
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グレンは見ていた。
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アイリスの変化を。
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そして何かを考えているようだった。
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その時だった。
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店の扉が開く。
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カラン。
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小さな音。
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だが。
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なぜか店の空気が変わった。
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アークは振り返る。
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ひとりの青年が入ってきた。
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白銀の髪。
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黒いコート。
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整った顔立ち。
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そして。
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金色の瞳。
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青年は店内を見回す。
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そして。
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アークと目が合った。
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一瞬だった。
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しかし。
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アークの胸がざわつく。
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初対面のはずだった。
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なのに。
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なぜか。
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会ったことがある気がした。
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青年も同じだった。
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数秒。
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視線が交差する。
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やがて。
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青年は小さく呟いた。
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「やはり」
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アークには聞こえないほど小さな声だった。
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しかし。
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アイリスは聞いていた。
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そして。
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その青年の名前も知っていた。
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ヴァイス。
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エクリプスの継承者。
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運命が再び動き出す。




