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蒼空のレガリア  作者:
1章 蒼空の継承者編
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6/31

第五話 リベルタ

 翌日の昼。


 空船は目的地へ到着した。


 ⸻


「着いたぞ」


 ⸻


 グレンの声でアークは目を覚ます。


 どうやら寝ていたらしい。


 ⸻


 甲板へ出る。


 そして。


 ⸻


 言葉を失った。


 ⸻


 巨大だった。


 ⸻


 フィオラ島とは比べものにならない。


 雲海の上に広がる巨大な浮遊都市。


 無数の空船。


 何本もの橋。


 高くそびえる時計塔。


 空中を行き交う荷物運搬艇。


 ⸻


 人。


 人。


 人。


 ⸻


 とにかく人が多い。


 ⸻


「これが……」


 ⸻


 アークは呟く。


 ⸻


「リベルタ」


 ⸻


 空の港町。


 交易都市。


 冒険者の街。


 アルカディア有数の大都市。


 ⸻


「口閉じろ」


 ⸻


 グレンが言う。


 ⸻


「田舎者に見える」


 ⸻


「いや田舎者だし」


 ⸻


「開き直るな」


 ⸻


 アイリスが小さく笑う。


 ⸻


 フィンは得意げだった。


 ⸻


「どうだ」


 ⸻


「すげぇ」


 ⸻


「だろ?」


 ⸻


 なぜかフィンまで誇らしそうだった。


 ⸻


 空船が港へ接岸する。


 ⸻


 乗客たちが次々に降りていく。


 ⸻


 アークたちも街へ足を踏み入れた。


 ⸻


 活気がすごい。


 ⸻


 商人の呼び声。


 露店の匂い。


 旅人たちの会話。


 ⸻


 何もかもが新鮮だった。


 ⸻


「まずはギルドだ」


 ⸻


 グレンが言う。


 ⸻


「ギルド?」


 ⸻


「情報収集ならそこが早い」


 ⸻


 なるほど。


 ⸻


 確かに理にかなっている。


 ⸻


 アイリスのこと。


 魔獣のこと。


 レガリアのこと。


 ⸻


 何か分かるかもしれない。


 ⸻


 そう思った時だった。


 ⸻


 ドンッ。


 ⸻


 誰かと肩がぶつかった。


 ⸻


「っと」


 ⸻


 振り返る。


 ⸻


 栗色の長い髪。


 緑色の瞳。


 眼鏡をかけた少女だった。


 ⸻


 年齢はアークと同じくらい。


 ⸻


 大量の本を抱えている。


 ⸻


 そして。


 ⸻


 その本を全部落とした。


 ⸻


「きゃっ!」


 ⸻


 盛大に。


 ⸻


 地面へ。


 ⸻


「ご、ごめん!」


 ⸻


 アークは慌てて本を拾う。


 ⸻


 少女も慌てて拾う。


 ⸻


 二人の手が同じ本へ伸びる。


 ⸻


「あ」


 ⸻


「あ」


 ⸻


 微妙な空気。


 ⸻


「すみません!」


 ⸻


 少女が先に頭を下げた。


 ⸻


「こちらこそ!」


 ⸻


 アークも下げた。


 ⸻


 なぜか二人とも謝っている。


 ⸻


 グレンが頭を抱えた。


 ⸻


 フィンは笑いを堪えていた。


 ⸻


「お前ら何やってんだ」


 ⸻


 少女は顔を赤くしながら本を抱える。


 ⸻


 その時。


 ⸻


 一冊が開いた。


 ⸻


 古びた紙。


 奇妙な文字。


 ⸻


 アークは思わず目を止める。


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「それ……」


 ⸻


 少女も気付いた。


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「読めるんですか?」


 ⸻


「え?」


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「この文字です!」


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 食いつきが凄かった。


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 一歩近付いてくる。


 ⸻


 二歩近付いてくる。


 ⸻


 近い。


 ⸻


「ち、近い」


 ⸻


「あっ」


 ⸻


 少女は慌てて離れた。


 ⸻


 だが目は輝いている。


 ⸻


「読めるんですか!?」


 ⸻


「少しだけ」


 ⸻


 その瞬間。


 ⸻


 少女は信じられない顔をした。


 ⸻


「本当に!?」


 ⸻


「え?」


 ⸻


「本当に!?」


 ⸻


「な、なんで二回言った」


 ⸻


 少女は本を抱きしめる。


 ⸻


 興奮していた。


 ⸻


「私以外に読める人がいたなんて……!」


 ⸻


 グレンがため息を吐く。


 ⸻


 嫌な予感しかしない。


 ⸻


 案の定。


 ⸻


 少女は勢いよく名乗った。


 ⸻


「私はセレス!」


 ⸻


 そして。


 ⸻


「考古学者です!」


 ⸻


 リベルタで出会うはずだった。


 ⸻


 新たな仲間。


 ⸻


 セレスとの出会いだった。


 ⸻


 しかし。


 ⸻


 その頃。


 ⸻


 リベルタの地下。


 ⸻


 誰も知らない場所。


 ⸻


 暗い神殿の中。


 ⸻


 ひとりの老人が目を開く。


 ⸻


 長い白髪。


 痩せた身体。


 ⸻


 しかしその瞳だけは異様な光を宿していた。


 ⸻


 老人は静かに笑う。


 ⸻


「目覚めましたか」


 ⸻


 手元には黒い紋章。


 ⸻


 ネフィリム教団。


 ⸻


 その印だった。


 ⸻


「蒼空のレガリア」


 ⸻


 老人――マルクトは立ち上がる。


 ⸻


「ようやく始まりましたね」


 ⸻


 長い長い計画が。


 ⸻


 再び動き出そうとしていた。

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