第五話 リベルタ
翌日の昼。
空船は目的地へ到着した。
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「着いたぞ」
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グレンの声でアークは目を覚ます。
どうやら寝ていたらしい。
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甲板へ出る。
そして。
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言葉を失った。
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巨大だった。
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フィオラ島とは比べものにならない。
雲海の上に広がる巨大な浮遊都市。
無数の空船。
何本もの橋。
高くそびえる時計塔。
空中を行き交う荷物運搬艇。
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人。
人。
人。
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とにかく人が多い。
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「これが……」
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アークは呟く。
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「リベルタ」
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空の港町。
交易都市。
冒険者の街。
アルカディア有数の大都市。
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「口閉じろ」
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グレンが言う。
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「田舎者に見える」
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「いや田舎者だし」
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「開き直るな」
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アイリスが小さく笑う。
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フィンは得意げだった。
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「どうだ」
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「すげぇ」
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「だろ?」
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なぜかフィンまで誇らしそうだった。
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空船が港へ接岸する。
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乗客たちが次々に降りていく。
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アークたちも街へ足を踏み入れた。
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活気がすごい。
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商人の呼び声。
露店の匂い。
旅人たちの会話。
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何もかもが新鮮だった。
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「まずはギルドだ」
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グレンが言う。
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「ギルド?」
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「情報収集ならそこが早い」
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なるほど。
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確かに理にかなっている。
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アイリスのこと。
魔獣のこと。
レガリアのこと。
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何か分かるかもしれない。
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そう思った時だった。
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ドンッ。
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誰かと肩がぶつかった。
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「っと」
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振り返る。
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栗色の長い髪。
緑色の瞳。
眼鏡をかけた少女だった。
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年齢はアークと同じくらい。
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大量の本を抱えている。
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そして。
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その本を全部落とした。
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「きゃっ!」
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盛大に。
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地面へ。
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「ご、ごめん!」
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アークは慌てて本を拾う。
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少女も慌てて拾う。
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二人の手が同じ本へ伸びる。
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「あ」
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「あ」
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微妙な空気。
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「すみません!」
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少女が先に頭を下げた。
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「こちらこそ!」
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アークも下げた。
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なぜか二人とも謝っている。
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グレンが頭を抱えた。
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フィンは笑いを堪えていた。
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「お前ら何やってんだ」
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少女は顔を赤くしながら本を抱える。
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その時。
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一冊が開いた。
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古びた紙。
奇妙な文字。
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アークは思わず目を止める。
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「それ……」
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少女も気付いた。
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「読めるんですか?」
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「え?」
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「この文字です!」
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食いつきが凄かった。
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一歩近付いてくる。
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二歩近付いてくる。
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近い。
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「ち、近い」
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「あっ」
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少女は慌てて離れた。
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だが目は輝いている。
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「読めるんですか!?」
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「少しだけ」
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その瞬間。
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少女は信じられない顔をした。
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「本当に!?」
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「え?」
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「本当に!?」
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「な、なんで二回言った」
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少女は本を抱きしめる。
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興奮していた。
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「私以外に読める人がいたなんて……!」
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グレンがため息を吐く。
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嫌な予感しかしない。
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案の定。
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少女は勢いよく名乗った。
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「私はセレス!」
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そして。
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「考古学者です!」
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リベルタで出会うはずだった。
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新たな仲間。
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セレスとの出会いだった。
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しかし。
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その頃。
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リベルタの地下。
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誰も知らない場所。
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暗い神殿の中。
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ひとりの老人が目を開く。
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長い白髪。
痩せた身体。
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しかしその瞳だけは異様な光を宿していた。
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老人は静かに笑う。
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「目覚めましたか」
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手元には黒い紋章。
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ネフィリム教団。
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その印だった。
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「蒼空のレガリア」
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老人――マルクトは立ち上がる。
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「ようやく始まりましたね」
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長い長い計画が。
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再び動き出そうとしていた。




