第二十七話 黒竜襲撃
空港全体に警報が鳴り響く。
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「敵襲!」
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「防衛部隊は配置につけ!」
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兵士たちが慌ただしく動き始める。
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だが。
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誰の目にも分かった。
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間に合わない。
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黒い群れの数が多すぎる。
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空が埋まっていた。
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魔獣。
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飛竜。
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黒翼獣。
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そして。
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中央にいる巨大な黒竜。
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明らかに別格だった。
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「マルクトの本気か……」
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ヴァイスが低く呟く。
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アークは蒼空のレガリアを握る。
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嫌な予感がしていた。
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いや。
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嫌な予感ではない。
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確信だった。
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ここで何かが起きる。
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大きな何かが。
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その時だった。
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黒竜が咆哮する。
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空気が震える。
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雲が裂ける。
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衝撃波だけで空港の窓ガラスが砕け散った。
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「うわっ!?」
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フィンが耳を塞ぐ。
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セレスも顔をしかめる。
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強い。
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今までの敵とは比較にならない。
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その時。
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アイリスが小さく呟いた。
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「グラドス……」
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アークが振り向く。
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「知ってるのか?」
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アイリスの顔色が悪い。
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まるで悪夢を見ているようだった。
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「千年前……」
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「ネフィリム軍の将だった」
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沈黙。
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全員が黒竜を見る。
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つまり。
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ただの魔獣ではない。
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千年前から存在する怪物。
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ありえない。
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だが。
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もう今さらだった。
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レガリアも。
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創世の巫女も。
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全部ありえない。
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今さら否定しても意味はない。
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その時。
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黒竜が降下を始める。
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一直線。
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狙いは空港。
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正確には。
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アークたちだった。
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「来るぞ!」
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グレンが叫ぶ。
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全員が動く。
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黒竜が着地する。
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轟音。
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石畳が砕ける。
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衝撃波で周囲の建物が揺れる。
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そして。
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金色の瞳が開いた。
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巨大な竜。
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漆黒の鱗。
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無数の傷跡。
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その姿はまるで災害だった。
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「人間」
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低い声が響く。
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アークたちは固まる。
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喋った。
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竜が。
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グラドスはアークを見る。
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そして。
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蒼空のレガリアを見る。
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「アルト」
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アークは眉をひそめる。
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まただ。
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誰も彼も。
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アルト。
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アルト。
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アルト。
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胸の奥が少しだけ苛立つ。
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だから。
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アークははっきりと言った。
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「違う」
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グラドスが目を細める。
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「ほう」
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「俺はアークだ」
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静寂。
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数秒。
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やがて。
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黒竜は笑った。
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まるで面白いものを見たように。
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「なるほど」
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その言葉に。
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ヴァイスが少しだけ口元を緩めた。
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リリアも笑っている。
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アイリスの表情も柔らかくなった。
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アーク本人だけが理由を分かっていない。
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グラドスは翼を広げる。
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巨大な影が落ちる。
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そして。
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「ならば試してやろう」
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黄金の瞳が光る。
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「アーク」
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名前を呼ばれた。
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初めて。
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アルトではなく。
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アークとして。
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その瞬間。
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黒竜の口元へ膨大な魔力が集まる。
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黒い炎。
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圧縮された破壊。
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空気が震える。
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フィンが叫ぶ。
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「絶対ヤバい!」
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誰が見てもヤバかった。
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次の瞬間。
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黒炎のブレスが放たれる。
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空港そのものを飲み込むほどの規模で。
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アークは剣を構える。
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蒼空のレガリアが輝く。
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そして。
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第三のレガリア争奪戦は。
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予想を遥かに超える強敵との戦いから始まった。




